夏本番、今日から7月。
また暑い夏になりそうです。
犬に嵌る(はまる)前、この時期各地へ撮影のために出かけていました。
北海道東部(道東といいます)にも何度か行きました。
女満別を経て、北見、津別、紋別、丸瀬布あたりまで…。
撮影の相手は、

オオイチモンジという大きな蝶。 吸水中のオオイチモンジ♂ 丸瀬布武利川 1993.7.17

枯れ草に付いた水分を吸う♂。 津別 1995.7.11
翅の表と裏の違いが顕著です。

吸水に降り立った♀。 津別 1995.7.12
オスに比較してさらに大きく優雅なメスに出会うことはなかなか叶わず、何日も何時間もそのチャンスを待ち続け…
ようやく目の前(といっても数m以上先)に現れたメスに、気づかれないように、ピントを手動で合わせながら(Autoは使いません)、できるだけ速やかに接近…
ドキドキ、ハラハラしながら…
「お願いだから!」「飛ばないでくれ!」と心の中で叫び…
シャッターを切って行きました。
しかし、2mと近づかないうちに飛び立ってしまいました…。
そのときの悔しさ、腹立たしさは 言わずもがな。

比較的たくさんいるオスは、驚かさない限り、私たちの汗の臭いと塩分に誘われてやってくることが多々あります。
写真は、地上に置いたカメラのストラップのところに降りてきたところです。
当時は今のようなデジタル一眼でないフィルムカメラ。
写しても、よく取れたかどうかもチェックできず、可能な限りたくさん撮るようにしていましたが
36枚ごとのフィルム交換。
チャンスを逃さないためにカメラを2~3台首からぶら下げ、交換フィルムもたくさん持って、あちこちウロウロ…。
今は、何を撮るにも、チャンスを逃さないためにも、
便利な時代になりました。

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舞うときと舞わないとき
高山蝶の多くは日の出ているときに活発に飛び回り、日が陰ったり、気温が低くなると飛ばずにどこかに潜んでいることが一般的です。
夏山でも、朝の気温は低く、ミヤマモンキチョウが飛び回るようになるのは太陽が大分高く上がってきてからです。
朝日は当たっているのにまだ気温が低いとき・・・

こんな姿を目にする機会を得ました。 朝日の当たる岩場に黄色いミヤマモンキチョウが・・・
そ~と 近づいてみると

岩にとりつき、翅を斜めにして日差しを浴びています。 Photo.1996.7.28 蝶ヶ岳
活動できるまで、体温を暖めているといわれています。
そして、活動できるようになると

蜜を求めて飛び回り、花に止ります。 Photo.1996.7.27 蝶ヶ岳

もちろんメスも、蜜を求めて・・・。 Photo.1996.7.28 蝶ヶ岳
そしてまた

オスとメスが飛び交う求愛活動も見られるようになります。 Photo.1999.8.9 蝶ヶ岳
そして再び蜜を求めて・・・

Photo.1994.7.17 常念岳
日が傾き夕刻が近づくと、飛ぶことをやめて休むことが多くなります。

這松帯は彼ら彼女らにとっては良い休息場、ねぐらになるようです。 Photo.1994.7.17 常念岳
日中でも、ガスが出て日が陰るとやはり飛ぶのを止めて、休む姿が見られます。

Photo.1994.7.17 常念岳
休んでいるときも撮影のチャンスですが、実はそこに近づくことが容易ではありません。
止まっている枝に振動を与えず、這松帯の中をそ~と移動することの難しさ・・・。
さらに、アプローチしている間に陽が出てきて飛び立ってしまう・・・ ということも。
自然の生き物に、こちらが希望するモデルを演じてもらうことは不可能です。
生きている姿、生きている行動、それぞれの自然そのままの姿をいかにカッコよく捉えるか・・・
体力と気力と意気込みと・・・
そしてそれに「運」が加わって成し遂げられる、ほんの「一瞬」の出来事、自然の中の生態切り抜き模様でした。
今夏のアルプスは・・・ 天気も安定して夏空が広がり・・・
あ~ たまには行きたい!
記録を調べてみると、夏の北アルプスの頂に立ったのは11年前の蝶ヶ岳が最後でした。
捜索犬に関わるようになってからは・・・
雪崩捜索のときと雪崩講習会を除いてアルプスに足を踏み入れていませんでした。
11年前までの数年間は、高山蝶の撮影を目的に何度か訪れていました。
さらにそれ以前は、純粋に岩や雪を楽しむ登山として・・・。
ところで、高山蝶とよばれるいくつかの代表は

こんなアルプスの天上の世界に棲んでいます。
そして、その代表一つがミヤマモンキチョウと呼ばれるシロチョウの仲間です。
日本各地にいるモンキチョウに少し似ていますが、それよりも小柄で洗練された清楚な雰囲気を感じます。

7月中旬から8月上旬にかけて、高山植物の花に蜜を求めて飛び回ります。 Photo. 1996.7.28 蝶ヶ岳
写真はコイワカガミというピンク色の花で吸蜜するミヤマモンチョウの♂です。
時々飛んでやってくる場所を見定めて、その付近でカメラを構えて待ち続け、蝶が花にとまりそうな仕草を見たら急いで近づき、
手動でピントを合わせ続けながらそっと近づき、可能な限り構図も気にしつつ、必死にシャッターを切る・・・
の繰り返しでした。
なにしろ、フィルムの枚数は36枚限り・・・
待機しているときに残数が10枚を切っている場合は、余計な撮影をして終わらせ、 新しいフィルムを入れ替える・・・
といったこともやっていました。
そしてこの頃は、望遠マクロ付カメラと接写のできる広角をつけたカメラの2台を持ち歩きながら、斜面を走り、登り、下り、跳んで、横切って・・・
かなりハードな撮影行をやっていました。

何しろ相手は、飛んで移動する身軽な存在・・・ Photo. 1996.7.28 蝶ヶ岳
それでも、運良く、見栄えのする構図に収まってシャッターを切ることができれば・・・

キバナシャクナゲで吸蜜するミヤマモンキチョウ♂ Photo. 1996.7.28 蝶ヶ岳
「ヤッター」と心の中で叫んでいました。
しかし、うまく撮れたかどうか・・・ 現在のようにすぐ確認することはできません。
下界に降りてラボで現像してもらうまでわからないのです。
期待と楽しみと不安は 後に・・・ の時代でした。

ミヤマダイコンソウの花で吸蜜するミヤマモンキチョウの♀。 メスは白地です。 Photo. 1994.7.17 常念岳
さんざん走り回って、いいカットが撮れた感触をいくつか得ることができれば・・・
まずは大成功でした。
※ アップされている写真は、リバーサルフィルムで撮影されたものをダイレクトプリントし、さらにそれをスキャナーで取り込んだもので、原版より画質がかなり落ちています。
蝶たちの写真を真面目に撮っていたといっても、フィルム撮影の時代。
どんなに根を詰めて撮ろうと頑張っても、36枚でフィルムを入れ替えなければなりません。
いい場面に遭遇したときに限って、残り数枚ということも多々あり、貴重なチャンスを逃してして悔しい思いをしたこともあります。
フィルムを交換しながら、移動する蝶に目をやり、また装着する手元に目をやり・・・
その間に遠くへ行ってしまったり、見失ったりすることもありました。
しかし今はデジカメの時代、チャンスを掴むか逃すかは撮影者の注意力次第と言えそうです。
とはいえ、アゲハ類の吸水は同じ場所付近で長く留まってくれるので、フィルム時代でも撮影しやすい場面でした。

プリントした写真からのものなので、ストレートなデジタル写真よりやや甘いですが、
夏の山間地でよく見られるミヤマカラスアゲハの吸水場面です。 Photo. 1992.8.14 糸魚川市
時にはたくさんの集団で吸水していることもあります。もちろん、全てオスばかり。

カラスと名づけられていますが、カラスよりずっときれいな翅をしています。 Photo. 1992.8.12 富山県立山町

モンキアゲハの吸水。 Photo. 1993.6.13 奄美大島小湊
このアングル、ファインダーでしか見れないカメラの時代、地面にへばりつかなければ撮れません。
結構気合を入れて撮っていました。
東京の桜も開花が始まり・・・
とはいえなかなか「暖かい」日が続かない今日この頃。
しかし、桜が咲けば・・・
カンブリア爆発ではありませんが、たくさんの生物が活発に活動を始めることも確かです。
残雪の具合や天候による気温の変移、日照時間などで多くの生き物の活動は左右されますが、
「くるべき時」が来れば「待ってました!」とばかりに目覚め、全身で春を謳歌しはじめます。

北陸地方でも、目覚める時の早い「富山のギフチョウ」。 日差しを受けて温まり・・・ 吸蜜源を求めて飛び回ります。
しかし、落ち葉ばかりの枯野のような環境で、花はあるのでしょうか・・・。
この辺りにはカタクリが見られませが・・・ ありました!

目立たない小さな紫系の花(スミレ)ですが、人の目よりも目ざとく見つけてくれました。
紫外線領域まで見える蝶にとっては、人間が見る世界よりも「花の輝き」をしっかりと感じることができるのでしょう・・・ きっと。

栄養をとって・・・ 休んで・・・。
さて・・・ 雌の羽化は、まだかいな。
Photo. 富山県大山町 1993.4.1