雪崩遭難捜索 シュミレーション (3)
16日の午後に行った3つ目の捜索救助シュミレーションは、雪崩事故に遭ったパーティーでの自力捜索救助が不可能、という設定で、外部救助隊への要請をし、その隊員の協力で捜索救助活動をするというものです。
そして、1人を発見救出、収容、梱包という救助活動を進めるも、もう1人の埋没行方不明者発見ができない状況下、到着した雪崩救助犬に捜索を依頼、発見させて救出… といったシュミレーション訓練が行なわれました。

救助隊パーティー役と雪崩事故状況設定内容を確認し、捜索シュミレーションへ。
雪崩事故による2名の埋没者捜索及び救出活動が行なわれます。
救出した埋没者を収容、シート梱包、搬送へ必要な処置を進めていきます。
手前はシート梱包、搬送するための処置を済ませたダミー人形。右斜面下方で待機するチャンス。
雪崩捜索犬として現場到着したチャンスとハンドラー。埋没者捜索を始める前に、遭難状況や埋没範囲などについて確認。
救出隊員(スコップ隊)を後方につけて、捜索エリアへ向います。
埋没者がいると思われる捜索エリアに向って捜索開始。昨日の訓練で、チャンスの意識もより高まっていたようです。しかし、風向きは斜面下方と上方で異なり、複雑な状況を呈していただけでなく、雪中から上がってくる僅かな生体臭以上に、午前中から雪面、雪中と広範囲にたくさんの人の付着臭、残留臭いがたっぷり残っているはずです。
いかに、漏れ出す新鮮な臭いを察知し、嗅ぎ取ることができるか… チャンスにそれを経験させ会得させるしかありません。
このような状況は、臭いの乏しい瓦礫のポイント捜索、綿密捜索のように、「サガセ」ではなく、指示した周辺を「チェック!」とコマンドして、鼻を雪面につけさせ、嗅ぎ取らせるように意識させます。
前半は広範囲に動き回っていたチャンスも、次第に「捕るべき臭い」をより強く意識するようになり、新鮮な臭いを見出してくれたようです。
何度か気になる雪面を行き来したあと、雪面に鼻をつけて確かめ、スクラッチ動作を始めました。
確信がもてるようになったか、深く掘り起し、吠え始めました。
写真には収められていませんいませんが、私は吠えて掘り起こしているチャンスの脇に行き、一緒に掘り起こす動作を交えて褒めてやりました。
近くに待機していた掘り出し隊員役に、埋没者救出をお願いし、チャンスを移動、待機させました。
埋没者役、掘り起こされて無事救出、シュミレーション(3)を終了しました。
雪崩遭難初動捜索(セルフレスキュー)シュミレーション (2)
次ぎに行なった捜索救助シュミレーションは、雪崩事故に遭ってパーティーの1人が流され埋没して姿を消してしまい、残された者がどうしてよいかわからず呆然としているところへ、現場近くを通りかかった別パーティーが状況を把握し、捜索救助の指揮をとって、レスキュー活動をするというもの。

再び、埋没者役のビーコン装着人形が使われます。今度は、足をケガ(骨折)しているという想定の埋没者救出、搬送、収容という内容が加わり、人形の足にケガを示す「×」印をつけました。

結構深い穴の中に埋没者役として入ってもらいます。このあと、雪がかけられ、完全に埋められてしまいます。
埋没役(ビーコン装着人形)が埋められ、ふたたび雪崩現場がイメージ、再現されます。事故に遭ったパーティー(3人)が雪崩れた現場の脇に避難して、呆然としている状態を演じます。そこへ、雪崩には遭っていないが現場付近にいた別パーティーが遭難状況を知って、初動捜索救助活動を行なうというものです。
以下、その流れを写真で追います。
別パーティー(役)が雪崩跡の脇にたたずんでいる事故に遭ったパーティーのところへ行きます。
何があったのか、雪崩は何時発生し、どんな状況で何人の仲間を見失ったのか…等々、必要な情報を収集し、捜索救助活動は可能か、二次雪崩の危険性は? ケガ人は? 装備は? 状況を把握した上、役割分担を決めて、できるだけ早い埋没者発見救出へとつなげていきます。
消失点から最大傾斜に続くデブリに向って、遺留品なども参考に埋没範囲を大まかに絞り、ビーコンを使って埋没者の埋まっている箇所を絞りこみ、プローブ捜索に切替えます。
プローブによる特定、発見への捜索も、操作を的確に丁寧に行なう必要があります。
プローブにより発見と見なせる感触に至ったら、その部位を急いで掘り起していきます。深く埋まっているときは、スコップによる人的パワーが大きく影響し、雪の中から救出するためには、埋没者の脇を含めて十分大きな穴を掘り起こす必要があります。交代を含めて効率的に進めなければ、非情な時間がどんどん経っていきます。
身体の一部が確認されたら、丁寧にかつ迅速に、顔面部分を第一に掘り出し、気道の確保を行ない、呼吸していれば呼吸空間をつくり、掘り出しの雪がかからないように配慮して、身体回りをできるだけ早く掘り出して行きますが、シートなどて覆うことができるまでは雪を安易に取り除かず、外気に直接触れさせないようにします。
低体温症となっている埋没者をシートに載せ、シートで保温する段取りを進めていきます。
今回は骨折の手当てが必要という設定があり、途中から人形を生体に替えて、必要な処置を施していきました。添え木に何が使えるか、現場にある一番適したものを選び、クッション等を当てて固定します。
骨折処置のあとにうつ伏せ状態から仰向け状態にしましたが、骨折の痛みなどで出来ない場合を除いて救出時に仰向けにするべきとの見解が出ました。うつ伏せ状態から持ち上げて移動することが、要救助者にとっては苦痛を伴う可能性が高いためです。
ツエルトを利用したシート梱包。実際の梱包と搬送への段取りは午後のシュミレーションで行うことにしました。
シュミレーションを一通り終えたあと、このような骨折の場合の足の動かし方、固定の仕方について、「なるほど」と思うような的確で応用力に満ちた講義を講師から受けました。
以上、午前中の雪崩事故初動捜索シュミレーションを終えました。