捜索犬 普段の訓練いろいろ 10
高い場所・不安定な場所での告知
普通の状態(とくに高くもなく、足場も安定)の場合、見えないBOX等の擬似瓦礫内に潜んでいる人の臭いを特定したとき告知(吠える)できる犬でも、その場所がかなり高かったり、不安定な場所であったりすると「吠えられない」場面が出てきます。
臭いを捉え、臭いの出ているところまで行き、特定できるのに「吠えられない」場合、前にも記しましたが、そこに「褒美をくれるヘルパー」がいること、欲しいためには「吠えて」もらうことなどを意識させます。
なんとか「騙し吠え」ができたら、励まし、十分に褒めてあげますが、これだけではまだまだ不充分です。
そこで、高所や不安定な場所で「本来の作業ができない」のであれば、「探す」作業を抜いて、単純に「高所や不安定な場所で吠える」訓練を行ないます。
作業全体として完結できないとき、うまく行かないとき… 作業を「因数分解」して、不安な因数(断片・単純作業)を強化すること。そして再びつなぎ合わせることが近道です。
作業で弱い部分を取り出して強化。上の写真(右)は、高所、不安材料のある場所で、単順に「吠えること」ができるように訓練しているところです。
写真左は、だいぶ慣れて、高い位置でも躊躇しないで吠えられるようになってきた場面です。
高い場所・不安定な場所で吠えられないときは
①捜索、告知という動作の前に「高い場所」「不安定な場所」に慣れさせること。
②「高い場所」が苦手な犬には、ごく低い場所、少し高い場所…と徐々に高さに慣れさせていくこと。
③「不安定な場所」が苦手な犬にはに、少し不安定な場所から徐々に強めて、慣れさせていくこと。
④高い場所、不安定な場所に慣れてきたら、その場所で「吠えさせる」練習を繰り返すこと。
⑤高所・不安定な場所慣れ訓練も、そこで吠えさせることも、「楽しく」「面白」く、そして各段階で犬に「自信を持たせていく」こと。
「自信をもたせる」キッカケをつくるのには、ちょっとしたコツが必要になるときもあります。
それは…
自分(犬)だけでできないとき… ハンドラーやヘルパー的立場の人が補助するのですが、
やらされた犬が「自分でできた!」と思わせるような… コツです。
そして、最終的には「出来て当たり前」を目指します。そういう意味でも「熱いうち」が一番なのですが、「冷めた」犬にも「目覚めさせる」可能性は十分にあります。
しかし… 「犬」以前に… ハンドラー自身の高所・不安定足場訓練が必要とされる場合の方が多いかもしれません。
捜索犬 普段の訓練いろいろ 9
高い位置から流れてくる「人の臭い」
高い位置から流れてくる人の臭いを感じ取る訓練を何度かご紹介しましたが、瓦礫的に「閉じ込められ漏れ出す臭い」以外に「露出した人の臭い」を捉えさせる訓練もあります。
この場合、臭いの発散は「広域捜索」と同様「山間部遭難者捜索」に通じるものになり、鼻を高く上げて臭いを捉えようとする「高鼻」使いの訓練にもなります。
そして、上部の「閉じ込められ漏れ出す臭い」を特定させる訓練の前に、このような設定の訓練を行なっておくと、上方から浮遊してくる臭いを捉え「上の方にも人がいる」意識を犬に与え、その後の「閉じ込められた」条件の捜索訓練に役立ちます。
「目で探す」人の場合、このような設定を見ると、「すぐに見つかる」「簡単なもの」と思えてしまうのですが… 「鼻で探す」犬の場合、意外と簡単には行きません。
その理由は、 ①犬は鼻を使って探し回っているとき、視覚的な捜索がほとんどできないこと。
②露出「ヘルパー」からの臭い物質の量は多いが、瓦礫等周辺の障害物の影響を受けて気
流が複雑に流れ、それに応じて臭いも分散し、発臭源を見出し難いこと。
それ故、臭いの元(露出ヘルパー)を犬が特定するまで時間が掛かることが多々あります。
これらの設定でも、経験を深めていけば、「発見告知」までの時間は短縮されていきます。そして、露出設定ではない「高い場所に閉じ込められた(潜んだ)人」を探す場合の「高所から漏れ出す臭い」を捉える意識も、自然と強化されていきます。
捜索犬 普段の訓練いろいろ 8
少し!捜索犬らしくなった「熱い鉄」
育ちつつある「熱い鉄」のゴールデン姫も、普段の訓練や捜索犬キャンプの中で「探す面白さ」が少しずつわかってきたようです。
人が思っている以上に、犬は「鼻の動物」。生後7ヵ月ですが、目で見て探すことから自然と鼻で探すことを覚えてきました。
それとは別に「吠えろ」で吠えることを、ちょっとしたキッカケからできるよになりましたが、それをすぐに「見つけて吠える」ことにはなりません。ヘルパー役のところにくると、「無我夢中」状態でご褒美を欲しがり、身体に潜りこむようにして「吠えろ」ができなくなってしまいます。
そこで一案。
見えているが「来れない」状態をつくってじらせたら… 吠えられるようになりました。
そうなると、事は早いもので、あとは上手に吠えさせるヘルパーの役割。
というわけで、7ヵ月のゴールデン姫は「捜索犬」らしい姿で、「見つけたら吠える」ことができるようになりました。
良く見える状態なら、確実に吠えてくれます。
少し見えるような条件でも、しっかり吠えられるようになりました。完全に隠れた状態のBOXはまだですが、これから、徐々に見えなくしていけば… ほどなくBOXの基本は身につくことでしょう。
そして、探すことも、障害物も、楽しく、面白く… それが「ごく当たり前に」できていけば…。
これからが楽しみな「若き熱い鉄」、ゴールデン姫に期待しています。
捜索犬 普段の訓練いろいろ 7
鼻をつけて「嗅ぎ取る」動作の強化
鼻をつけて嗅ぎ取る「クセ」を捜索犬に教えておくことは大切です。漠然と感じた臭いよりも明確な臭い、さらには「乏しくても」確かな臭い… それらを求めるように…。
誰でも見つけられる臭いは、普段の訓練施設や試験条件の臭い。それらの臭いは、犬にとってみれば「濃くて」「確かな」臭いのはず。どんなに「工夫」して隠れてみても、臭いの発散や流出を考えてみると、犬の鼻をごまかしたり、見逃したりするには「強過ぎる」臭いです。
深雪捜索に似たような、鼻を雪面(地面)や瓦礫に付ける様にしっかり探し求める意識を犬に普段から意識づけさせておけば、弱い臭いにも反応できるようにするポイント捜索の「形」はつくれます。
普段の訓練で難しいのは「弱い臭い」しか出ない装置(隠れ家)をいかにつくるかですが、人の頭で「こうすれば弱くなる」と考えて(例えばシートで2重にしたりして)やってみても、実際にはそれほど弱くはなっていないと言えます。1m以上の深雪にしっかり埋めるような、深部埋没瓦礫設定は現実的にはなかなか難しいことです。
とはいえ、まずは「丁寧に嗅ぎ取る」意識づくりが瓦礫(土砂、雪中含めて)訓練では大切だと思いながら訓練を行なうようにしています。
どんな場合、設定であっても、臭いの出ている壁や隙間にできるだけ「鼻をつけて」「嗅ぎ取る」動作をさせていきます。そして、一番強く感じる「近くで」告知(アラート)させるようにします。
離れるクセがある犬には、ヘルパーによる適切な措置が必要ですが、それには犬の動作がヘルパーから見える状態をつくる必要があります。
咆哮する犬とそれを「良い状態に」導くヘルパーとの駆け引きは、警戒競技の「禁足咆哮」のやりかたに通じるものがあります。 捜索犬の成長は、ヘルパーの腕が大きく影響します。
BOXは全体で感じるのではなく丁寧に嗅ぎ取る
BOX捜索は瓦礫捜索の基本です。しかし、複数あるBOXを全体としてとらえて臭いをとらせようとすると、実際の捜索で弱い臭いを取り逃がす危険性があります。
「全ての訓練は実践のために」という教えがあるように、「見逃し」を防ぐために「鼻をつけて嗅ぎ取る」意識を普段の訓練の中で育てていきます。
臭いの出ない(ヘルパーのいない)BOXをチェックさせていきます。犬はチェックしていく中で、ヘルパーのいる(臭いの出ている)BOXを特定することになります。
初期の意識付けは、前に書いた「ポイント」指示と「鼻をつけさせる」動作から始めますが、写真のミニチュア・プードルは訓練を重ねて「チェック」意識が安定してきました。
チェックしていく中で、有人BOXで「反応」を示したら、ハンドラーは犬の動作を邪魔しないように少し離れて様子を見ます。
ハンドラーや周囲の人に意識が逸れないで、臭いの出ている箇所に向い、できるだけ近い位置で咆哮(告知)してくれれば good!です。最後は大いに褒めて、犬と共に喜び合う… ような気持ちに。
スピードや集中力はかないませんが、麻薬探知犬が次々に個々の臭い(この場合はケース類)を嗅ぎ取りながら、移動して行くイメージを瓦礫捜索犬の動作にも重ねて行ければと思っています。
何重にも包み込んで、ケースのごく僅かな隙間から、ほんの僅かに漏れ出す「非常に薄い」麻薬類の臭いでさえ、麻薬探知犬は瞬時とも言える嗅ぎ取りで「反応」できるのですから、もっと明確で強い「人の臭い」を特定することは、犬の能力としてはかなり「余裕」ある作業だと信じています。
捜索犬 普段の訓練いろいろ 6
あらゆる「場」で探せるように
連休の捜索訓練キャンプのあとは、再び「普段の訓練」が続きます。
高い位置に潜んだヘルパーの臭いを移動中に感じとり、上に登ってその臭いを特定、告知(アラート)するチャンス。 探すのが楽しくて、嬉しくてたまらない… 「それがとりえ」の一つです。
高い場所の臭いを特定させる
前に高い場所に隠れたヘルパーを探すために、いろいろ経験を積ませながら、上からの臭いを感じ、それを特定させるような訓練をすることを書きました。
何度か経験した犬は上手に臭いをとるようになり、意識を上に向けて、それに近づこうといろいろ考えるようになります。
登攀能力のある犬は、臭いを感じたところを求めてその身体的能力を発揮して発臭源近くに辿りつき、特定することができます。
しかし、障害物を乗り越える能力や急な斜面を這いあがる登攀能力は、犬によって差が出てきます。訓練を通じてそれぞれの犬の弱い部分が見出されれば、それをなくしていくことが捜索犬に不可欠です。
弱い部分を持ちつづければ、捜索現場でその「弱さ」が捜索能力を弱めるだけでなく、犬にストレスを与え続け、結果的に「満足に捜索できない犬」を連れて行くことになってしまうかも知れないからです。
経験を積重ねて自信をもたせる
上のゴールデンは、チャンスと違って静かで慎重、真面目なタイプ。
臭いの源が上にあること、そこに人(ヘルパー)がいることを 経験させ、そこに至るいくつかのアプローチを体験させ、成功させることによって「捜索に幅をもたせる」訓練を重ねています。
小型犬は大型犬よりも高いところの臭いをとるには不利ですが、経験を積んできたミニチュア・シュナウザーは、上からの臭いをしっかりとらえることができます。
直ぐに近付けない設定のため、アプローチの足場をある程度フォローする必要があります。
しかし、災害現場では、「全て犬に任せる」ということよりも、「犬が感じて行きたがっている」ところを読み取り、そこへ行かせてあげる手段があるならば、ハンドラーが積極的にそれを補助すべきで、より明確な反応を見ることにつながります。
以前、スイス救助犬の訓練を見学したとき、指示だけで犬に無理やり登り降りさせることをせず、より積極的にハンドラーが犬に手を貸す場面を見て、「なるほど」と思ったことがありました。それは、大型犬であっても、段差のある瓦礫上の犬を、抱かかえ降ろすことなど、ごく普通にやる行為として現れていました。
現場は、見世物でも、カッコをつける場でもありません。いかに、犬と一緒に効率よく活動し、結果を出すための作業をするか… です。
渓谷に舞う可憐な妖精 Ⅰ
クモマツマキチョウ 《モデルⅠ》
中部山岳地帯、北アルプスや南アルプスの谷間が新緑で萌える頃、「春の妖精」「高山の妖精」「渓谷の妖精」「アルプスの妖精」「谷間の妖精」などと呼ばれる可憐な蝶「クモマツマキチョウ」が姿を現します。
「春の妖精」と呼ばれるには遅すぎる春も、「高山の春」は私たちの初夏~夏にあたり、そう呼ばれるのかも知れません。
高山地帯にのみ生息する「高山蝶」と呼ばれる蝶の仲間がいくつかありますが、クモマツマキチョウはその中で「高山蝶の女王」と言われるほど魅力に満ちた存在です。たしかに、美しく清楚で可憐な姿は、見る者を強く引きつける不思議な魅力に満ちています。
しかし、妖精と呼ばれるほどのその蝶に出会うためには、足場の悪い河原や沢の中を身軽に移動しながら歩き回わらなければなりません。
そして運良く出会うことができたら… 必死になって飛ぶ後を追い… しかも妖精に気づかれないように自然の一部のような気持ちでそっと近づき、そしてその姿をクローズアップ… そんな、執念と体力がないとうまくいきません。
今から14年前の1994年、この難関をクリアして、妖精がモデルを演じてくれたことがありました。そこは、前ブログで紹介した新緑の渓流沿い、南アルプス三峰川(みぶがわ)上流でのことでした。
出会えたという感動とともに、写真に収めるべく夢中になって追いかけ、ファインダーを覗いてピントを瞬時に合わせ(慌ただしく瞬時に動き回る被写体にAFは使えません)、念じるようにシャッターを切り、36枚しかないフィルムが終わってしまえば入れ直し、しかし肝心なモデルがどこかに行ってしまわないように視線を交互に動かしながら、再び追いついて撮影を続ける… というような、とてもハードな撮影を行ないました。
その甲斐あって、1994年、1995年と、美しい妖精の姿を写真に収めることができました。
そんなこんなで撮れた妖精「クモマツマキチョウ」の姿を紹介します。
ハタザオの花を求めてオレンジ色の妖精が羽ばたきます。
ハタザオの小さな白い花にとまり吸蜜してはまた別の花を求めて飛んでいきます。
河原付近のハタザオの花に吸蜜。このような環境の中に姿を現します。
新緑の谷
ちょうど今頃、深い山の谷間では芽吹いた新緑が日々萌え広がっているところです。
眩しいくらいの新緑の森はまさに、生命の息吹そのもののようです。
遠くから見る萌える新緑も素晴らしいですが、近くで見る個々の新葉はまた違った魅力を見せてくれます。
新緑が谷間を飾る頃、高い山にはまだ雪が残っていて、また別の美しさを生み出してくれます。
北アルプスや南アルプスの奥深い谷間の渓流沿いの河原には、ハタザオと呼ばれる白い可憐な花がたくさん見られます。アブラナ科の植物でナズナに近い種類です。
かなり近くでないと風景の中に溶け込んでしまい、意外と目立たない存在ですが、その気になって探すといたるところに生えています。
黄色い花は「ミヤマガラシ」、ハタザオとは違いますが近縁の花です。
今から10数年ほど昔、この花のある場所に現れる「妖精」を写真に収めようと、一日中歩き回っていたことがありました。
その妖精の姿とは… このあとで。
残雪の山々 Ⅱ 消えゆく雪と残り続ける雪
GWから早くも2週間、残雪の山々は纏った雪を脱ぎ捨てるかのように日々白から緑へと装いを変えていきます。
しかし、谷間の雪の量は半端ではなく、真夏まで雪渓となって残りつづけているところもあります。
少し遅くなりましたが、GW頃の谷間の雪がどのくらいあるか… そんなことも思い出しながら、10年以上前のビンゴ山行の写真を紹介します。
足場の悪い上部尾根道から急峻な雪渓上部を下降して、広大な雪渓を下っていきます。雪は安定して雪崩の恐れはありませんが、上部からの部分的な崩落(ブロック雪崩)や落石には注意が必要です。
広大な雪の谷を下り終えると、そこは氷河の末端を思わせるような、デブリ跡が解けつつある雪渓の末端、0℃近い水が流れ出る出合となっていました。
湾曲の原因
先日、川上村での湾曲した異様な白樺を紹介しましたが、その原因は「雪」でした。
雪の多い地域では時々見る現象ですが、川上村は雪の多い地域ではありませんので、かなり特異に起こった「何か」があったわけです。

「いつ起こったのだろう・・・」という疑問から、帰ったあとに川上村役場に電話をして聞いてみました。村の中で直接的な被害はなかったようですが、やはり4月に入ってからの遅雪で、雨から「重たい雪」に変わったあとの出来事だったらしいことがわかりました。
残念なことに、川上村近辺の気象データはありません。そこで、川上村の西に位置し、比較的近く、標高も同じくらいの野辺山のデータを調べてみました。3月から4月までの間で、「雨量の多かった日」、そして「雪になりそうな日」を見てみます。これで、ある程度「怪しい」日がつかめます。

村役場の話と、降水量と気温の関係を考えると、4月7~8日に「起こった」らしいことがわかりました。
あくまでも、野辺山での状況ですが、7日の最高気温は8℃くらいですが、8日は4℃以下で「雪が降れる」気温になっています。さらに、8日は降水量も多く、雪になっていれば「重いベタ雪」が降ったと思われる状況です。
この日の日本はどんな様子だったかは天気図を見るとよくわかります。
台風のような低気圧が日本の南を東進していて、関東~中部は冷たい東寄りの風が流れて、平地では雨、標高の高いところでは雪となるような気圧配置でした。上空にも冷たい空気が流れ込んでいる状況でした。
重たい雪が4月8日に降った
野辺山の記録を見る限り、4月8日に重たい雪が降ったらしいことが推察されます。
そこで、さらに、7~8日の時間ごとの様子を調べてみました。
これを見て… 8日に雪が降ったことがほぼ確信できました。
上空が冷えていれば、あとは地上の気温で雨になるか雪になるかだいたい決まります。8日の朝7時~8時の気温は0℃以下。そのときの雨量が一番多くなっています。
7日の夜までは気温3~4℃なので、雨~みぞれ、8日に入るとさらに気温が下がって、みぞれ~雪となっていっただろう… と想像できます。
問題は、野辺山と川上村の位置の違い、山の影響や風の違いがどれほどあるか…。
川上村の東側は秩父の山々があります。しかし、気象データはかなり離れた秩父市までありません。そこで、秩父市の気温、雨量を調べて、気温を標高換算で直したものと、野辺山のものを「足して2で割る」たいへん大雑把な平均データをつくってみました。
すると・…
気温は野辺山よりも少し高くなりますが、8日の朝5時~10時の間にかなりの降水量があって、気温は 2.5℃以下で、みぞれ~湿雪状態として考えられます。
標高や風向きなどで、湾曲白樺のあるところの実際の状況は変わりますが、前日の雨が雪に変わり、その雪は湿って重たい、そして短時間に強く降った…。
着雪という雪の被害の一種
湾曲した白樺をつくったのは、4月8日に降った湿って重たい雪のせいであることはほぼ間違いないと思います。現地の人の「雨から重たい雪に変わった」という話とも合います。
湿った雪は樹木の枝に付着しやすく、それが短時間に多量に付着すると、その重さに耐えられず、あのような湾曲もしくは折れ、倒れたりと被害につながります。
川上村の着雪は、南岸低気圧(と呼べる)の強風下で、短時間に多量の湿雪が降ることで起こる着雪で、「強風型」「低気圧型」「湿雪型」と呼ばれ、気温が0~2℃、風速4~5m以上で起こる顕著な着雪であったことが、ほぼ裏付けられました。
着雪した白樺はきっと、こんな感じだったのでしょうか(本当はもっと多量についているハズですね)…。
いつも「僅かな情報」の中から発表される「大規模地震」の報道。今回の中国四川省の大地震も、最初のニュースは「アメリカ地質調査所によると…」という流れから始まった。
そのニュースでは、地震の規模のマグニチュード(M) 7.6、震源の深さ 30kmくらいと聞いた覚えがある。
規模の大きさと震源が浅いことから相当な被害が出ているはず…と直感した。
果して、時間とともに、甚大な被害と犠牲者の数が急激に増大していった。
国内の出来事であれば、初めの情報を聞いたときから、救援活動に備えた準備を始めたに違いない。しかし、隣国とはいえ、アプローチに困難が伴う内陸部であることと中国独特の国情から、捜索等の救援活動は無理と同時に思った。
ニュースの映像は、基本的に「被害の大きい」「インパクトの強い」場面が優先的に流れてくる事実を知っているが、崩れたコンクリート建造物の瓦礫や、たくさんの人が埋まっていて手の施しようの無い様は感じ取れる。
あの映像を見て「何が必要か」を考えたとき、「犬」以上に「重機」が必要であることが実感させられた。木造であっても、多大な人力とジャッキアップ等の手段が欠かせない。
コンクリート瓦礫など、どんな手動器具があったって人の手で除去できる塊などたかが知れている。瓦礫訓練場で、コンクリートの塊を手で持ってみれば、その困難性が痛いほど実感できる。
小さな重機でもよい。ヘリでもなんでも、可能な手段を使って、倒壊建物の多い被災地に重機を大量に投入しなければ、救える命も救えない。
日本を含め、各国から救援を申し出ているのに、中国政府は受入れを拒んでいる。人的救援が無理ならば、せめて「重機類」の大量投入に道を開いてほしいものと願っている。
「台湾地震」を思い起こして
9年前(1999年9月)、台湾で地震があった。
ここでは、現中国より自由な活動が可能で、いち早く各国からの救援チームが駆けつけている。日本からも多くの捜索救助犬が参加し、私もビンゴを連れて震源地近に赴いた。
このときは現地のサポーターが同行してくれたため、海外でありながら災害現場への移動や捜索活動がとてもスムースに行なえた。しかし、信頼できるサポーターや公的機関がバックにつかない場合、知らない土地での活動はなかなか難しいと思う。
テレビや新聞の報道で多かった台北でのビル倒壊地区とは異なる震央近くの山間部に入ったが、そこは瓦礫現場ではなく、山の一部が崩れて村全体が埋まってしまった「岩屑雪崩」地帯であった。
分厚く埋まった岩屑と土砂を重機で掘下げる作業の途中で、捜索犬を使って臭い反応を見る、という活動が続けられた。しかし、これも村への道が開通し、重機を運び入れることができてから、ようやく始めることのできた活動であった。
災害の場所だけでなく、その時期も、犬の活動には困難が伴う場合がある。9月の台湾は真夏状態。活動の合間合間で水と休息が欠かせない。
多くの地震災害現場で、捜索救助犬が「発見」してもその後救出できずに亡くなってしまうケースのあることを聞く。
木造家屋の多い日本では、重機がなくても、バール、ジャッキ、のこぎり等の人力手段で救出する術はありそうなので、犬の活躍を十分期待できる。
しかし… 耐震偽装や手抜き工事の鉄筋構造物が多ければ、ニュースに映し出されるような「コンクリート瓦礫の山」が人を生め尽くしてしまうかもしれない。
他国の出来事とは決して言えない現実が町の中に眠っている… かもしれない。
山中捜索訓練
連休中にもかかわらず閑散としたキャンプ地で、また、山中捜索の訓練に適した場所がいたるところにあるという、捜索犬キャンプとしてはまさに「別天地」。
そして、天気も良くなり、犬と人共に「楽しく」「充実した」訓練をすることができました。
初日の訓練では、急な山斜面を登らせ、斜面横の風上から流れてくる遭難者役(ヘルパー)の臭いを捉えさせて発見に至らせるもので、「設定は難しくないが発見までに労力が必要」という山の捜索基礎訓練を行ないました。
2日目の訓練では、実際の山中捜索をイメージして、かなり遠方にヘルパーを配し、捜索犬は臭いの流れてこない山中をハンドラーとともに登り、捜索ルート(仮定)を進行しながら犬を上下(ジグザグ)に行動させ、チェックさせるようなイメージで移動させるようにしました。
そして、臭いのとれるエリアに入り、犬が自然に臭いを感知し、自主的に行動し発見に至る… という流れで行ないました。
これらの流れと行動の中で、ハンドラーとしての判断、犬への指示などを実体験しながら学んでいきます。また、ハンドラー自身も実際的な山斜面を犬と共に登り、歩き、より現実的な感覚を身に付けていきます。



今回参加した黄ラブは3頭。犬の個性(人も)はそれぞれに異なりますが、長い山中移動で犬の作業の継続性を保ち、フォローしていくのはハンドラーの仕事です。
「長い行程と時間をかけた末の発見」をごく当たり前にしていけば、実際的な捜索の場における犬との作業もイメージでき、また犬自身も長い捜索に慣れ、捜索全般の質も高まっていくと考えています。



黒ラブは4頭参加。飼主でなければ、またかなりアップでないと、写真の黒ラブが「誰?」だかわかりませんが… 全般的に意欲と意識は高く、ハンドラーが犬の動かし方をイメージできてくると、犬もそれに応じて「結果」を出してくれるように感じました。
また、2日目の遭難者役(ヘルパー)発見時は、現実を想定して、発見咆哮している犬の元へハンドラーが駆け寄って褒める、という形をとりました。
現実… それは普通… もし、犬が反応し吠えたら… 「発見した!」と興奮気味になりながら、吠えている場所に「できるだけ早く」行こうとするでしょう。確認できないまま呼び戻すことはまずありません。
現場は、試験のように「特殊」ではなく、このような現実的対応が「一般」です。

よく訓練されたミニチュアシュナウザーは、強い藪などで行く手を阻まれたりしなければ、かなり意欲的に行動し、臭いを求めて探し回ります。



ミニチュアプードルは一見捜索犬「らしからぬ」容姿をしていますが、山中捜索訓練に参加したこの犬の行動力と捜索能力は大型犬に負けない強さをもっていました。その身の軽さは野生動物のごとし。遠くから臭いをとって、意欲的にヘルパーに辿りつき、しっかり吠えてくれました。
ただし、広い範囲での捜索では、声の届く範囲は限られ、藪や小枝、棘などに引っかかりやすい毛質を考えると、ミニチュアシュナウザーとともに、捜索行動中に身動きがとれなくなったり、あるいは迷い込み戻れなくなったりと、危険性や困難性が伴います。
しかし、これらの訓練を通じて、行動性、意欲、捜索力全体が高まり、他の捜索訓練(瓦礫他)に生きてくることは間違いありません。
今回、ゴールデンはチャンスと、生後半年の「熱くやわらかい」ゴールデンの2頭。「熱くやわらかい」ゴールデンはとっても活発、意欲的。まだ初歩の初歩ですが、探す楽しさを身に付けつつあります。
チャンスも大分いい歳になってきましたが、まだ「若者」のつもりか… 鼻と脚を活発に使って動いてくれます。


発見!
ヘルパーさん、長い間遭難者役ありがとうございました。
桜の花と湾曲白樺
5月3~4日にかけて、捜索犬の訓練キャンプを企画し、長野県の川上村に行ってきました。ここは以前、写真を撮りに何度も訪れ、またビンゴもよく連れてきた場所ですが、捜索犬の訓練を兼ねたキャンプに来たのは初めてでした。
ゴールデンウィーク後半の4連休とあって、激しい渋滞が予想され中央道釈迦堂PAに朝6時集合としましたが… 4時半頃調布ICに入ったとき「小仏トンネル~〇BS 渋滞17km」と表示されていて… 結果、釈迦堂に着いたのは1時間遅れの7時。
しかし、調布~大月と雨模様だった空も、甲府盆地に差しかかって雲が途切れ、時々日差しも差すようになりました。
捜索犬関係者が揃い、釈迦堂を出発したのは午前9時。
韮崎ICを出て、ひまわりで有名な明野村を通り、山道をうねうね登って信州峠を越え、川上村に入りました。雲の多い空でしたが、日差しも増し、広大な村の畑ではレタスづくりの準備があちこちで行なわれていました。
そして… 豪華で大きな鯉のぼりや武者のぼりがいっぱい目につきました。今思えば、写真を撮っておくべきだった… と反省(その写真がないのです)。
しかし、標高 1,100~1,200mを越える川上村では、今が桜の季節。ソメイヨシノらいし桜は既に終わりかけていましたが、別の「桜」があちこちで満面の微笑で迎えてくれました。
村周辺部の山は、唐松を主体とし白樺や広葉樹林が混在している林が多いのですが、ようやく芽吹き始めた木々ばかりで、新緑の彩りにはまだ至っていません。
そんな中に、ときおり美しい花が混ざっていたりします。ヤマツツジの一種と思われますが、捜索訓練の合間に身近でみる機会がありました。太陽の透過光の下で見るとなかなかのものです。
林道を奥へ進み、犬たちを川で遊ばせる場所に移動したとき、異様な光景を目にしました。
理由はわかっているのですが、ここまで賢著だと、さすがに「異様」です。
白樺の樹だということは誰でもおわかりと思いますが… こんな白樺林、見たことありますか?
どうしたのでしょう…。
原因などについては、近いうちにまたあらためて。
5月6日、初夏の日差しがバラの花に降り注ぎ、爽やかな風が木々の間を吹きぬけ、まさに、風薫る五月となりました。

5月2日は雨まじりの曇り空で、やわらかい光の下でバラの写真を撮りましたが、今回は強い太陽の光の中で、マリアカラスの彩りと光と影が演じる表情の違いを撮影してみました。
12時過ぎ(左)と午後4時頃(右)の同じ花。3時間近く経ってさらに開いていますが、光の具合で表情がかなり変わっています。
同じマリアカラスでも、剣弁(尖った花弁)でない丸弁状の花もあります。
太陽高度が高いときは、光と影のコントラストが中心になっていますが、太陽の傾きが増すと、花弁を通過する透過光が増えて、彩りに独特の深味を感じさせてくれます。
彩り増す自然の風景
新緑が日に日に増して、褐色系だった自然風景が急激に緑系に姿を変えていきます。植物の変化に合わせるように、鳥や虫達も春から夏に向って、慌ただしく活動を開始します。
里付近では花々に蝶が舞う姿を多く目にしますが、まだ緑色に変わっていない中部山岳の山の中にもけっこう派手な姿を見い出すことあります。ここでは、まだ春が訪れたばかりの様相を呈していますが、直に青々とした新緑で覆われ始めます。

ツツジの花に吸蜜に訪れたカラスアゲハ。シックで美しい装いなのに、「カラス」という名前がイメージを悪くしているかもしれません。

ヒメギフチョウがまだ芽吹いていない木々の梢にとまりました。ギフチョウよりも少し控えめな衣装をまとって山の春を謳歌し始めます。

山ブドウの枝にとまり日光浴をしているようです。春の女神のギフチョウよりもやや小ぶりで、やや地味ですがなかなか美しい装いです。