捜索2日目 29日(3)
昨年5月末の山形での行方不明者捜索について、6月27日以降3ヶ月以上もお休みしたままでしたが、引き続きそのときの出来事といくつかの知見などについて再びお伝えしたいと思います。
午後の捜索 そして・・・
捜索現場の様子をもう一度地図で思い起こしてみます。
地図でもわかるとおり、さほど急峻な山ではありませんが、大きな谷間に向かって大小の支沢が注ぎ、地形は複雑に入り組んでいます。
通常、道迷いが原因の遭難の場合、ほとんど沢に向かって歩いてしまうため、その後沢周辺で動けなくなることが一般的です。
しかし、出発点の駐車場からの行動、雨の中の登降などを考えると、可能性のある沢は限られ、さらにその可能性のある部分は全て捜索済みという現実から「どうしたものか・・・」と悩むことになります。
これはあとからわかったことですが、「雨の中、遡れる沢筋は限られる」「雨の中、小滝を超えたり高巻いたり、草付の急斜面を登るわけはない」「駐車場に戻る意識があるため、遠出はしないだろう」といった考えが、遭難に至ったルートの推察の仕方を狭めてしまっていました。
何でもそうですが、結果がわかれば「なるほど」といった理由がいとも簡単につけられてしまうものです。なぜそこを調べなかったのかと、どんなに悔しい思いをしても、それは見つかって初めてわかる「理屈」であり、未来を見ることのできない私たちにとって事前の推理はとても難しいことなのです。
だがしかし、こういった遭難と発見の例をたくさん経験し、その知見を積み重ねることができれば、早期発見に結びつく「ヒント」を得ることにつながることは確かです。
もう一度、遭難行方不明事件のあった山の地形、地勢を見てみましょう。

遭難者が出発した駐車場を中心に、歩いて、登って行けそうな場所はほとんど捜索しつくされています。例年通い慣れている沢筋から平場と呼ばれる周辺は特に念入りに調べられました。
それでも見つからない「不思議さ」を引きずりながら捜索最後の機会になるであろう29日午後について、どこを捜索するかご家族と何度も話し合いました。
とても小柄な遭難者について、娘さんが身を挺して「こんな感じよりももっと小さい」と説明くださり、草間や岩間に入り込んだら隠れてしまう様子も示してくれました。

昼食をしながら話し合った結果、午後は人海捜索はしたが捜索犬として入っていない例年通っている平場へのルートを探ることにしました。そして、遭難者の旦那さんと息子さんが少し離れて周辺を捜索することになりました。
沢沿いの道を辿り、途中から急峻な斜面を尾根に向かって這い上がり、そして平場と呼ばれる(らしい)一帯に到着。

平場とはいってもイメージとは異なり、尾根斜面一帯が潅木と草に覆われ意外と視界の利かないところでした。小柄な人ならどこに潜っても見えなくなってしまうので、「もしや」という気持ちでチャンスの反応を気にしながら歩ませます。

午後の尾根上は気温も高く、犬には厳しい場所。時々大きな樹木の影で休ませ、水を補給しました。
遭難者の旦那さんと息子さんの声が時々離れた樹林の合間から聞こえていましたが、いつのまにかその声は途絶えました。下山ルートに入ったのだろうと思い、チャンスと私は平場から北西に下る尾根を辿り、尾根から西側の沢に向かうルートをとることにしました。

チャンスの反応のないまま駐車場に戻る(15:18)と、車が1台のみ残されていて誰もいませんでした。「父と息子さん、まだ戻っていないな」と思い、「娘さんたちは先に帰ったのだろう・・・」と思いました。
残念な思いを残しながら、チャンスを車に乗せ、片付けをはじめました。

すると…
かすれ、震えた娘さんの声で 「 WKさん~ みつかり ましたぁ 」
一瞬… ウソ?ホント!
複雑な感覚が肌を襲いました。