ばらが咲いた
庭… というより、フェンスのバラが今年も開きはじめました。
他のバラよりも少し早めに開花し始める「CLコンフィダンス」。
あまり手入れもしていませんが、咲き始めのバラはとても新鮮で美しい姿をしています。
雨後のバラ
25日はかなりの雨が降りました。それでも、咲き始めのバラには大きな影響もなく、雨に打たれたあとの花は水滴がみずみずしく際立った美しさを演出してくれました。
晴天のバラ
26日から晴天が続きました。寒気の影響で気温はあまり上がりませんが、その分花もちがよく、新しい蕾も次々と開いてきました。
残念なことは…
これから出かけることが多くなり、せっかくの美の競演を見てあげれないことでしょうか…。
解体建物を利用した瓦礫捜索訓練 090419 その5
チャンス再び
瓦礫の一角で待機させていたチャンスの捜索開始。
チャンスを待たせながら、どこから出すか… 探ります。
ガレの山に向けて捜索開始。登って行ったはよいけれど・・・ しばらく視界から消えて、どこを探しているのか見えず、聞こえず。 犬の自主性に委ねるしかありません。
向かって右側の建物下部(柱と壁の脇)に潜むヘルパーの「怪しい臭い」をとらえて、接近、咆哮を始めました。
呼び戻したあと、再びあちこち探らせました。
探る様子を見ながら、反対側のエリアを意識させ、「怪しい臭い」を捜索させます。
発見告知。
これからの犬たちも
これからの犬たちにも、瓦礫現場に「慣れ&親しんで」もらうために、初歩的な訓練を行いました。
犬が不安なく吠えられるように、ハンドラーが近くに「付き添う」場合もあります。
瓦礫の中でも、呼び込み動作は初級犬基本訓練の一つです。
意欲のある犬の場合は、能動的な行動を自然に強化していきます。
訓練終了、全員集合!
瓦礫の中でこれだけの犬たち…。
なかなか… 撮れそうで撮れない、珍しい写真かもしれません。
解体建物を利用した瓦礫捜索訓練 090419 END
午後の訓練(2)
2人目が潜んでいる捜索エリアは、ガラ山を隔てた反対側の建物下部です。

現場は、「ガレの中庭」を囲んで解体中の建物が建ち、下部は残された柱と壁でいくつかの仕切りができているため、複雑な気流の流れがあり、行方不明者役(ヘルパー)の臭いは見た目以上にとりにくい状態です。

ヘルパーの臭いよりも盛んに流れてくるのは、待機、見学している他の人の臭い。
探すべき「怪しい臭い」を見失うと、より「強い臭い」を犬が気にすることがあります。


再び「探すべき怪しい臭い」を感じ取り、探り出し、ヘルパーのいる発臭源に到達。
そして… 告知!

やる気ある若い犬たちも経験を積み重ねています。
解体建物を利用した瓦礫捜索訓練 090419 その3
午後の訓練(1)
午後の訓練は、瓦礫模様の2箇所に行方不明者役を潜ませた捜索訓練を行いました。
オブジェのような解体中建造物
その下のガラ場と残された室内の間で
若いゴールデンRの捜索。まだ経験も少ないですが、新しい環境と足場の悪さにもだいぶ慣れてきました。
経験豊かなMダックス。大型犬にくらべ、足場の悪い中の移動や浮遊臭をとらえるのが不利ですが、真面目に探し求め続けてくれます。
不利な条件を克服しながら見つけ出し、告知するMシュナウザー。
行動力抜群のラブラドールR。落ち着きと執念深さが深まればよい作業をしてくれます。
やや年齢を感じさせはじめたラブラドールRですが、まだまだやってくれます。
午前の訓練 Ⅱ
捜索基礎訓練の次は、瓦礫エリアから段差を下って室内に至る場所に行方不明者役(ヘルパー)を潜ませて、複雑な臭いの移動から発臭源を見出させる設定を組みました。
ハンドラー(犬の指導手)からの距離は長くないですが、必要最小限の指示のみで探させる、犬の自主性に委ねた捜索基本訓練です。
とはいえ、半地下状態の室内に潜む行方不明者役の臭いは、広い瓦礫状態の中を複雑に移動、分散、拡散するため、犬がそれをどのように感じ辿って行くのかをハンドラー自身が見て理解しなければなりません。
一見、「そっちの方じゃない!」と感じても、犬に対して安易に指示を出せば「臭いを探し求める」犬に混乱を与えるかも知れません。臭いの移動は風向きの変化、場所による温度の違い、瓦礫障害物の状態などによって、複雑に変化している可能性があるからです。
捜索エリアから明らかに逸脱したり、捜索作業とは異なる行動をした場合を除いては、犬の嗅覚行動とその反応をしっかり見抜く「観察眼」が求められます。

瓦礫エリアを探し回りながら、半地下から流れてくる「潜んだ人の臭い」を感じ取り、中へ入り込むGレトリバー。

瓦礫エリアを移動しながら、潜んだ行方不明者役から流れてくる「怪しい」臭いを探し求めるMプードル。
経験を重ねた犬たちは、あちこち移動するうちに、漂う幾つかの浮遊臭の中から「潜んだ行方不明者役」の「怪しい」臭いを見い出し、半地下室へと入って行きます。
この「怪しい臭い」の選別や区別がどのようにして行われるのか…
犬にとって「当たり前の選別」がどのようにしてなされるのか…
犬に聞けるのなら、一番聞いてみたいところです。

かなり広い瓦礫エリアの中を移動しながら、「怪しい僅かな浮遊臭」を探し求めます。

広い瓦礫エリアの先で、僅かに「臭う!」、「怪しい!」と感じているような… 捜索行動。

「どこだどこだ」と言いながら歩き回っている… ような… チャンス。
解体建物を利用した瓦礫捜索訓練 090419 その1
去る3月29日に行った解体中建物を使った捜索犬訓練(解体建物捜索訓練)を行いましたが、4月19日にも同じ物件を使った訓練をさせて頂く機会を得ました。
解体がかなり進み、鉄筋&コンクリート瓦礫の様相も大きく変わっていました。
午前の訓練 Ⅰ
今回は参加頭数も多く、また瓦礫初心犬もいるため難易設定をいくつか変えながら一部併行して行うようにしました。
経験豊かな犬についても「現場基礎訓練」から進めます。
瓦礫の中に鉄板で囲われたBOX状のものがあったため、そこに潜んだ行方不明者役(ヘルパー)を見つけ出させることを行いました。
Mシュナウザー(↑)は「瓦礫色」で注意しないと見失います!?
目には易しく見える設定でも、「嗅覚」のみで探す犬にとっては、我々に見えない瓦礫の中を複雑に移動する臭いの断片的流れを探しているので、意外と「すぐに見つけられない」こともあります。
しかし、探している限り… 犬の自主性に任せなければなりません。
臭いの出場所を特定しアラート(告知)するMシュナウザーとWPコーギー。
臭いの出場所はどこだ?と探し回るチャンス。
見つけたときの顔
安定して、多少の刺激にも躊躇せず、懸命に吠え続ける顔は「いい顔」です。
咆哮の表情を一瞬でとらえてみると… 「なかなかの顔」です。
雪国の春 再び…
3月後半から4月の上旬にかけて、サクラの情報がいっぱいですが、標高の高い所や北日本では今頃から5月の連休にかけて開花するところが多くなります。
雪国と呼ばれる多雪地帯も、雪解けしたところから春が始まり訪れます。
中でも、新潟などの低標高山間地で雪解けとともに顔を出すのが「カタクリ」。
関東や東京近郊では貴重に思われがちなカタクリも、ここでは咲き乱れる群落があちこちに出現します。
その様子は… 足の踏み場もない… じゅうたんのごとし。
そして、山間地に咲くカタクリの花にやってくるのが「春の女神」と呼ばれるギフチョウです。
雪解け後のつぶれた枯れススキ原に顔を出すカタクリの花と、その花に訪れるギフチョウの姿。
枯れススキのコントラスの中にまぎれてしまう黄色と黒のだんだら模様もアップして見れば… 自然美の傑作。
ときには、地面から高く飛翔して、桜の花を訪れます。
雪解けとともに訪れ、新緑とともに去っていく… 短くも美しき命の芸術です。
心肺蘇生講習再び
4月12日、Hart Saver Japan主催の心肺蘇生講習会が行われ、1月23日に行った救急救命講習(救命講習)の復習も兼ねて受講してきました。
ビジュアル化で現実感アップ
この講習会は、国士舘大学体育学部スポーツ医科学の医学博士田中秀治医師と講習会プログラム所属の救急救命士及び学生スタッフによって進められました。
前半のプロジェクター講習は、心肺蘇生に関する医学的な内容と救命措置に関する事柄をわかりやすく視覚化し、インパクトあるイメージで参加者に訴えかけてくれました。
後半の実技トレーニングも、学生スタッフによるよくできた現場イメージシュミレーションを織り交ぜてのもので、「現実のイメージを植えつける」ものとしてなかなかのものでした。
以下に、その模様の一部をお伝えします。
モバイルAEDは、東京マラソンの松村氏救命に貢献。
AEDの処置にもタイムリミットがあります。心室細動がなくなれば…蘇生の可能性もなくなってしまいます。
心肺蘇生(胸骨圧迫)がいかに重要か… 「やる」か「やらない」か、それは生死をわけ、そして脳死を救うという… 可能性ある限られた時間です。
バイスタンダーだから「しなければならない!」 迷って手を下さなければ… それは「死への道を傍観」するのと同じ。
救急車よりも、医師よりも、命を救うのは「時間」と「バイスタンダー」のチカラ。
「余計なことを考える」悪い癖の日本人。しかし、善意の救命措置に「それが蘇生につながらなかったとしても」責任をかぶせることはありません。
今までの心肺蘇生で使ってきた人形に比較して、とてもシンプルで簡易なものが用意されましたが、訓練用としてとてもよくできていました。
AED使用上のポイントが示されましたが、これも使う訓練あってのものです。
演劇風救命シュミレーション
目の前に倒れた人が心肺停止状態という設定で、学生スタッフによる演劇風救命シュミレーションが行われました。
意識の確認→救急車&AEDの応援要請→呼吸の確認→呼吸なし→胸骨圧迫(心臓マッサージ)
注意) デモ写真の胸骨圧迫(心臓マッサージ)は、形だけのもので実際には行っていません。正常に鼓動している人に胸骨圧迫を行ってはいけません。
AED到着→胸骨圧迫交代→AED処置
心肺復活→回復体位
シュミレーション演技デモのあと、現場条件を示された中で、「心肺停止」した人を目の前にしたときの対応とその処置について、受講生実習を行いました。
心肺蘇生実習の他、典型的な骨折や止血について「イメージ豊かに」解説がなされました。
受講してよかった!
応急処置を含む救急救命の講習会は、各種団体が主催しており、「その気」になれば「学ぶ」機会はたくさんあります。
私は、東京消防庁関連の講習会を定期的に受けていましたが、「そのときは思い出しても、いざというときに迷う」ことを実感して、山岳会や雪崩レスキューなどの救急セミナーも含めてできるだけ多く「身体と頭」で覚える機会をつくるようにしてきました。
「いざというとき」いかに「冷静沈着」に処置できるか、それはやはり、数多くのシュミレーション体験と「繰り返しの動作」しかない、と思っています。
今回の講習会も、1月に上級救命講習を受けたばかりだったため、「今さら」という考えよりも「もっと確かに」という発想転換で受けることにしました。
果たして、それは満足いく、充実したものとなりました。
初めての人は「救命措置意識の入り口」でしかないかも知れませんが、何度も受けている中では「とても良い訓練」として納得できるものでした。
受けてよかった… 本当にそう思えるものでした。
捜索を終えて

残念ながら、行方不明者発見に至りませんでしたが… お疲れ様でした。

捜索現場から再びデブリを乗り越えて… BCに向かいます。

雲がどんどん切れ、強い陽射しが降り注ぐようになってきました。

ワサビ小屋の母屋の雪は降ろされていましたが、それ以外の屋根にはまだ1m以上の雪が…。

ベースキャンプ撤収。

再び重い荷物を背負って… アプローチ復路を行きます。

ワサビ小屋下流のデブリ越え。

林道脇まで押し寄せるデブリ。

帰路の道はいつも長く感じられます。

アプローチも終盤。強い陽射しは雪面からもやってきて、初夏の様。

最後の小休止。もう一息です。

ようやく駐車場に到着。
2日間にわたる捜索は、深く圧密された積雪と嗅覚捜索を阻む雨などで、期待に答えられなかったことが残念でしたが、今後も発見に向けたお手伝いをしたいと思っています。
北アルプス抜戸岳雪崩遭難者捜索 END
北アルプス抜戸岳雪崩遭難者捜索 Ⅹ
雪中に留まる臭いを出す試み
雨などの影響で、雨水と積雪の一部が融解して流れ落ちる融水は、臭い物質を積雪下部から沢床に落としてしまうため、雪中の臭いを雪上でとらえることが難しいということがわかっています。
同時に、地面付近や沢床を流れる流水や気流とともに臭いが下流域でとらえられることも原理的に考えられます。
積雪層内に存在する氷板層(臭い移動の遮蔽作用)の多重構造、そして雪面付近の雨水による臭い消作用という悪条件の中から、深部の臭いを感じ取らせる方法はないか…。
チャンスの作業を見ながら、中の臭いを取り出すために「穴を開ける」そして「中から気流が上がってくる」条件を考えてみました。
その原理をイメージすると下図のとおりです。
目の前の積雪は3m未満。プローブ(ゾンデ)で沢床まで突き通すことができる。
結論として、捜索エリア内にたくさんの穴を開ければ、沢床との間に「通気」が生まれ、臭いが出てくるかもしれない… と期待し、試みを行うことにしました。
しかし… 通気孔から上向きに気流が上がるとは限りません。沢床に向かって雪面付近の空気が下方に流れるかもしれません。そうなると、雪中からの臭いを感じ取ることはできなくなります。
チャンスを捜索エリア外に待たせ、捜索したいエリアに何箇所ものプローブを沢床まで挿し、通気孔をつくるべく歩き回りました。
穴を開けたエリアにチャンスを出して探らせます。
しかし… 残念ながら、これといった反応は見られません。
やはり、臭いは上がってきていないのか、あるいは「臭い」そのものが存在していないのか… 結論は見出せませんでした。
その後しばらく休ませました。
その間、プロービングによる捜索は上部に移動、チャンスによる嗅覚作業エリアと交代する形になりました。
限られたエリアだが… 難しい
雪崩遭難現場は山の捜索から考えればかなり狭く限られたエリアです。
しかし、埋没から日数が経ち、あらたな積雪で埋められた雪面は、深い瓦礫や土砂埋没と同様に「臭いがとれない」難しい捜索の一つかも知れません。
左俣谷左岸の斜面を少し登ると、遭難を起こした雪崩谷全体が見渡せます。
V字谷から扇状地が生まれる地形に似ていました。
行方不明のTさんは、この写真の下半分以下のどこかに… 埋まったままです。
なんとか… 早く見つけてあげたい… と思うばかりです。
まだ穴を開けていないエリアで、再びランダムなプロービングを行い、チャンスの鼻に委ねました。
やはり、はっきりした反応はありませんでした。しかし、わずかに気にするポイントがあったため、試しに少し掘り起こし、再び臭いを探ってもらうことにしました。
積雪層上部には、やはり顕著な氷板層が存在していました。
残念ながら、ここでも「臭いを気にする」反応はありませんでした。
捜索活動を終了し、融雪を促すための木炭末散布が行われました。
荷物をまとめ帰路に向かいます。
臭いの出にくい積雪状態の中の捜索は難しい… ということはわかってはいても、良い条件(機会)が生まれることも十分あり得ます。
「冷たい雪の中から、早く見つけ出して、助け出してあげたい… 」
そんな、ご家族や捜索関係者の気持ちに答えられたら… そう願いながら「犬の力」「チャンスの鼻」に期待しての捜索でしたが、残念ながら今回はその「導く条件のカギ」は開きませんでした。
北アルプス抜戸岳雪崩遭難者捜索 Ⅸ
2日目(4月5日)の捜索
朝4時に起床。一晩中続いたみぞれ~雨の音も消え、天気が復に向かっていることが感じ取れました。
しかし、外はガスが広がっていました。
朝食をつくり、食べて出発の準備。BC発 5時45分。
再び、現場へのアプローチにデブリが現れます。デブリ周辺の樹木は、雪崩の爆風によると思われる影響で折れたり曲げられたりしていました。
ガス間に姿を現したデブリも遠くから見るとそのスケールの大きさがわかります。
昨日の消失点へのルートとは反対の対岸へ橋を渡って行きます。
チャンスは昨日の疲れや夜中の震えなど… 「なかった」かの様子。
消失点から続く崖の対岸、遭難者の一人が飛ばされてきたエリアに向かいました。
最初は捜索関係者を立ち入らせずに、2月に発見されたWさんの地点までの下流域、沢に近いエリアを中心に探ってみました。
雪面の臭いを探らせますが… 反応らしいものはありません。
時々沢縁を気にする様子を感じたため、もしかして雪床からの臭いを何か感じているのでは…と思い様子をみました。
沢に降ろしてみたところ、雪床と沢の間を気にしはじめたため、もしかしたらこの積雪上流域にその臭いの源があるかもしれない… と考え、捜索リーダーに伝えました。
沢縁の積雪は2mほどあり、足場を切り崩さない登降できません。
チャンスが気にした縁から上流側に向けてプロービングを始めました。
気にした地点から沢縁に沿ってプロービングを行います。何も存在しなければプローブは沢の石に当たります。
繰り返し続けるプロービングは労力を要し辛い作業です。
プロービングを進めている間、併行して上流側エリアの捜索を行いました。
何度も行き来させてチェックさせましたが、気にするようなポイントが見つかりません。
一晩中降り注いだ雨水は、雪面近くや雪中にある臭い物質を下に落とし、雪面付近での嗅覚作業を難しくしていることは確かです。
その分、雪床~沢に臭いが移動してくることが考えられ、先ほどの反応もその一部かも知れません。しかし、イメージ図(深く埋もれた遺体)で示したように、臭いを感じたとしてもその位置を知ることはできません。
先ほどの気になるエリアではプロービングが続けられています。
反応のない状態を見ながら、また昨日確認した雪中の臭い移動を妨げる氷板層の存在を考えながら「何か方法はないだろうか・・・」と思案していました。
北アルプス抜戸岳雪崩遭難者捜索 Ⅷ
4月4日の捜索終了
残念ながら、消失点下部エリアでの明確な嗅覚反応は得られず、また注意深く確認したプローブ捜索でも発見にはつながりませんでした。
雪の降り方も小降りから本降りに近い状態になっていました。
明日の天気によっては「捜索不能」という場合も考え、できれば「本日中に対岸エリアの捜索をしておきたい」と考えていました。しかし、降り続けそして積もりつつある雪の状態から、新たな表層雪崩発生の危険を考え、早めに終了しベースキャンプへ戻ることにしました。
スコップや竹ポールなどをデポして本日の作業を終了。雪が降りしきります。
ベースキャンプへの帰路途中、川縁を観察する隊と分かれます。川筋の調査は、万一融雪によって川に遺体が流れる場合のあることを想定し、時々行っています。
今日の宿泊地のベースキャンプ(BC)。
10人用テントに7人で余裕ですが、雪山は装備も多いのでうまく整理しないと快適な空間がつくれません。
みぞれ~雨の中の一夜
ベースキャンプに着いてから、雪はみぞれに変わり、雪山テント生活で一番煩わしい「濡れ」の洗礼を受けることになりました。
濡れた「物」を乾かしながら、夕食を準備。
皆さん現役の山屋さんということもあって、「力強い献立」と+αの嗜好品など… 悪天の中で「厚遇」頂きました。
チャンスには、就寝態勢ができるまでは、テントの外脇で我慢してもらいました。
就寝時、シュラフ(カバー)脇にチャンスの寝場所をつくって休ませました。
湿雪、みぞれで濡れたチャンスをある程度拭き取りましたが、濡れ状態はかわりません。
寝ている足元で、時々震えるチャンスがちょっと不憫でしたが… 我慢してもらうしかありません。
こういった雪山での経験は、過去にビンゴ(チャンスの先輩)でもやっていたことがあり、「この程度なら問題ない」という判断をする上で役立っていることは確かです。
みぞれは夜間「雨」となり、明け方までテントを叩き続けました・・・。
消失点から下方の捜索(2)
消失点付近に戻り、もう一度このエリアの臭いを探ることにしました。
捜索関係者も上に登ってきてもらい、その間に再度シグマによる意識付けを行いました。

シグマの臭い意識ははっきりしていて「目的の臭い」を見つければ掘り出す動作を行います。
再び消失点下方エリアを探らせるにあたり、雪中の臭いを少しでも出しやすくする「何か」はないか考えてみました。
「雪面を少し崩せば雪中の臭いをより感じやすくなるのでは」と考え、エリア内をジグザグ切ながら、所々スコップで雪面を削ってみることにしました。
その間、チャンスは消失点上で待ってもらいました。

雪面加工したエリアに、チャンスを再び出しました。あちこち移動しながら臭いを嗅ぎ回ります。

最初のときよりも、鼻を窪みに潜り込ませて探しますが、これといった反応はありません。

捜索関係者の見守る中でしたが、エリア内を何度も移動しながら雪面付近の臭いを探り続けました。

ツボ足跡の部分の臭いが気になる(足跡臭)様子を示しました。
しかし、「求める臭いは別」の意識があるため、足跡臭を追ったりすることはありません。それ以外の臭い(シグマ様の臭い)を探ろうとしていることは確かです。

一箇所の窪みで他のところよりも気にする動作を示したので、注意深く様子を観察しました。

何度かスクラッチすることもあり、一部を舐める動作もあったため、その範囲から上方に向かって少し掘り、再度臭い反応を見てみようということにしました。

少し掘り出し、そのあとプロービングを開始しました。

ブロービングの様子。

プローブが一箇所引っかかったため、確認のため掘り出し作業に移りました。
残念ながら、それは硬い氷板か何かで他に何も見当たりませんでした。
やはり存在していた氷板層
掘り出しで、積雪層の様子がわかりました。数日前の新雪層の下に何層にも重なる「氷板」層が顕著に現れました。

個々の氷板の厚さは数ミリ以下ですが、雪面から 50~60cmくらいの間に幾重にも生成されていました。
この構造を考えると、その下の臭いはなかなか上がってこないだろうことが理解できます。
また、その上下の幅と氷板という遮蔽層の様子を見ると、実際の臭いが果たしてどのように移動できるのか・・・ 考えさせられます。
臭いの移動を助ける何か別のことを考える必要を感じました。

気になった反応地点から、「もしかしたら」という希望を捨てず、上方に向かってプロービングが続けられました。
このあと、下の橋から対岸に向かって移動し、Wさんが見つかった周辺を調べる予定でしたが、雪が本降りになり薄っすらと積もり始めていました。
あらたな雪崩発生の危険を回避するため、予定より早めに切り上げることになりました。
北アルプス抜戸岳雪崩遭難者捜索 Ⅵ
消失点から下方の捜索(1)
最初の捜索では、消失点の上方に1人立っていてもらい、他の捜索関係者は下で待っていてもらいました。
捜索エリア内にいなければとくに問題はありませんが、初めのうちはチャンスの様子を見るために慎重を期しました。
消失点から流され、もしくは吹き飛ばされた方向の雪面を探らせました。
しばし、あちこち嗅ぎ回りましたが気になる行動、反応は見られませでした。
とくに反応がないことを確認して、捜索リーダーのW氏と無線連絡し、沢に向かって落ち込んでいる斜面を調べてみることにしました。
遭難現場付近から見下ろす下流域。
雪崩遭難現場付近の地形は下の地図のようになっています。
消失点×から遭難者1名(Kさん)が→方向に飛ばされ沢の対岸で発見されています。
果たして、Kさんと離れていない距離にいたTさん(現在捜索中)も、同様に飛ばされたのでしょうか。それとも消失点と沢の間のどこかに埋没させられてしまったのでしょうか…。
沢に落ち込む急斜面は壁のようになっています。まだ雪がツボ足でも潜る硬さだったために、下れそうなところを選んで沢近くまで降りてみました。
写真で見ると傾斜は感じませんが、左上のデブリ斜面まで崖のようになっています。
川縁の積雪も傾斜があり、あまり近くに寄ると崩れる恐れがありました。
雪崩遭難時、Kさんは上の斜面から赤点線のように対岸まで飛ばされていました。
足がかりのない雪の急斜面の下降をチャンスは少しためらいましたが、川縁近くまで降ろしました。
川縁近くの雪面も傾斜があります。座らせたチャンスの足先を見れば・・・ 爪を立てて力んでいることわかります。
残念ながら、この急斜面での「嗅覚捜索」が難しいことがすぐにわかり、再び戻ることにしました。
要するに、犬が雪面を嗅ぎ回るような動作ができないほど急な雪面状態だったのです。
北アルプス抜戸岳雪崩遭難者捜索 Ⅴ
深く埋もれた遺体の嗅覚捜索
厚い積雪層の深くに埋もれた遺体の臭いをとらえて、埋没位置を知ることは簡単ではありません。
それは、北岳大樺沢の捜索を経験を経て、すなわち、雪面での嗅覚反応とその後発見された遺体の位置、その付近の積雪構造を知ることから導かれた結果でもありました。
埋没直後であれば「臭いを遮蔽する層構造」はなく、デブリの隙間からの臭気移動を期待できますが、長期間経った積雪にはいろいろな遮蔽構造と天候等による移動経緯がからんできてしまうからです。
下図は北岳大樺沢での経験をもとに、時間の経った深雪からの遺体臭の移動について私の考えを模式化してみたものです。
積雪期から融雪期を迎えた積雪内には、いくつかの氷板が生じ、その氷板のために臭い物質(臭気)は滞留したり底面を移動したり(融水や雪温の上昇などにより)して、斜面下方に移動するものと考えられます。
ざらめ化し、徐々に密度が高まり、いくつかの氷板層が入り込んだ雪中に埋没している遺体の臭いは、その遺体が露出していたり水に浸っていたりしない限り、通常訓練しているような「新しい臭い」ではなく、「何日もかけて移行してきた臭い」である、と私は考えています。
その移行してきた臭いの一部が雪面近くに存在すれば、犬はそれに反応します。
逆に、深部に埋没していても、融水に溶解した臭い物質が積雪層底面の融雪とともに地面もしくは沢床の水流とともに流れ、沢に放出されてくれば、犬はそこで臭いを感知することが考えられます。
チャンスを使った捜索においては、このようなイメージを持ちながら、現場状況を観察しつつ進めることにしました。
雪崩遭難者消失点へ
消失点を知っている捜索隊員に案内してもらい、遭難者が雪崩遭遇時爆風を浴びたであろう現場に向かいました。
左上は雪崩てきたルンゼです。ルンゼから扇状に堆積しているデブリ部分は、デコボコした状態ではなく斜面の中の雪の丘といった感じです。
雪崩遭難から3ヶ月経っており、何度かの雪崩が襲い堆積していると思われますが、平坦な斜面の様子から、この辺りは煙型主体の雪崩跡という感じがしました。
捜索現場での意識強化
捜索前や捜索の間に時々「探すべき臭い」を意識させる目的で、Σシュードを用いた簡易捜索を行わせることを捜索関係者に説明し断っておきました。
チャンスにとっては、本物の臭いもΣシュードの臭いも区別ありません。同様の臭いがあれば「そこを気にし」掘り出そうとスクラッチしてくれればよいのです。
消失点から少し脇にずれたところ(これから捜索させるエリア外)に、水難用シグマを少し撒きシグマシュードチューブを埋め、間をおいてチャンスに探させます。
一見簡単なところに埋めても、雪の中では「見て分かる」ことはありません。鼻を使って探すしかありませんので、雪面に鼻をつけて探す意識を強化させることにつながります。
北アルプス抜戸岳雪崩遭難者捜索 Ⅳ
雪崩捜索現場へ
ベースキャンプから雪崩捜索現場までは 1.5km程度ですが… 大きなデブリが2箇所あります。
地形図と照らしてみると分かりますが、沢自体はさほど大きくありません。しかし、沢筋全体の傾斜は急で長く、その標高差は 800mを越えています。
沢に溜まった雪が上部からの雪崩で削られながら流れ落ちていけば… そのスピードと破壊力は相当なものになるであろう… そんな地形となっています。
ベースキャンプから現場への道の最初のデブリに近づきました。
2つ目の巨大なデブリの中を移動するころ小雪がちらつき始めました。視界はまだ十分あります。
山の一部のように膨大な雪が堆積したデブリの中を行きます。
煙型雪崩の脅威
巨大デブリを乗り越えると、雪崩遭難のあった現場一帯が視界に入ります。
2008年12月27日に2名の登山者を襲った雪崩は、青の点線のように左上部のルンゼから下降し末端付近で扇状に広がったようです。
避難中の2名は消失点(×)で雪崩に巻き込まれ行方不明になり、直後とその後の捜索ではビーコン電波を感知せず、プロービング(ゾンディング)による捜索が丹念に行われましたが発見に至りませんでした。
遭難から1ヶ月半後の1月17日、雨による積雪の崩落により1名が露出し発見されましたが、その場所は消失点から 100mほど離れた左俣谷の対岸近くでした。
煙型雪崩末端付近の爆風で、→ のように吹き飛ばされたものと思われます。
遭難当時、ベースキャンプのあった平坦地に移動後、関係者と相談。
どこから捜索するか…。
まずは消失点に行き、そこから流されあるいは吹き飛ばされた方向に向けて探ってみることにしました。
発見された1名の周辺ももちろんですが、消失点を含め埋没が考えられるエリアのほとんどでプロービングが行われていたので、「基点に立つ」ということから始めることにしました。
北アルプス抜戸岳雪崩遭難者捜索 Ⅲ
アプローチ
3日の夜、東京を出発、中央道から松本を経て、国道158から安房トンネル~新穂高温泉へ。
新穂高温泉バス停下に登山者等に開放された無料駐車場があり、23時46分到着。
空にはまだ星が輝いていました。静岡の関係者の車がまだ来ていませんでしたが、明日に備えて早々にシュラフへもぐりこみました。
4日、5時過ぎに起きて身支度。しばらくして静岡山岳会関係者の車3台が到着、この下の道の駅で泊まったとのことでした。
雲が多くなっていましたが、笠ヶ岳方面の稜線に朝日があたり美しく輝いていました。
皆さんが支度をしている間、駐車場の一角に残っていた雪を使ってΣシュードを使ってチャンスの捜索準備運動を行いました(遺体臭シグマ)。
いよいよ、アプローチ開始。駐車場から左俣谷に続く林道へ向かいます。
林道はほどなく雪に覆われ、次第に積雪量も増して行きます。斜面の雪も多くなりビーコンを装着。
吹き溜まりや斜面からの小規模な雪崩で、林道も平坦でないところが出てきます。
久々の重い荷物で、アプローチとは言え結構こたえます。
ワサビ平に続く平坦地で小休止。ベースキャンプ地のワサビ平小屋までもう一息です。
ワサビ平小屋に続く林道上(岩小屋沢末端付近)、大きなデブリが道を塞いでいました。
デブリをつくった何度かの雪崩により、木立はへし折られ、多量の雪が積み上がっていました。
沢としては大きく感じませんが、デブリの雪の量は相当なもの。かなり上部から多量の雪を巻き込みながら雪崩れてきたものと思われます。
デブリの中を通過。雪は安定していますが、各自距離を置いて歩みます。
ようやくワサビ平小屋に到着(8時50分過ぎ)。
もちろん、小屋は営業していません。小屋脇がベースキャンプ地になります。
ベースキャンプ設営
小屋の北側の樹林内にテントサイトを確保。
本日のメンバーは私を含めて7人+1頭。設営テントは10人用で荷物を入れても余裕でした。
ベースキャンプ設営を終え、捜索に向けた装備以外をテントにしまい、雪崩遭難現場へ。
北アルプス抜戸岳雪崩遭難者捜索 Ⅱ
北アルプス抜戸岳は何処?
北アルプスでも「抜戸岳」と聞いて知っている人は少ないかも知れません。すぐ隣の笠ヶ岳は有名で、その独特の山容は遠くからでも見つけることができますが、抜戸岳はマイナーな存在です。
12月27日に起きた遭難をニュース等で知ったとき(抜戸岳で雪崩)、山の位置は確認しましたがどこで雪崩が起こったかはわかりませんでした。
ある報道では「稜線近く」とあり、冬型の気圧配置に移行しつつある中での捜索の困難性を感じていました。
その後、関係者から詳しい資料を頂き、雪崩の起こった詳しい場所がわかりました。
新穂高温泉から左俣谷沿いに上流へ向かい、小池新道と呼ばれる登山道(冬は雪の下)から少し登ったあたりとのことでした。
私は過去にこの谷に入った経験はありませんでしたが、地図で見る限り、アプローチは長いが、標高差はさほどなく、移動する上での困難性もなく、捜索犬による活動が十分できると思われました。
ただし、途中に大きなデブリがいくつかあって、捜索関係者から「デブリの登降は大丈夫か?」という質問を受けました。
が… チャンスの場合「問題なし」と自信をもって答えることができます。
それよりも… テント泊のための荷物を担いでアプローチする自分自身に… 「キツイだろうなぁ」と感じていたのは事実です。
丸い点線で囲った位置が、12月27日に雪崩(煙型)に襲われた場所(標高 1,520m付近)。青い矢印は雪崩の流路。
当時のヘリによる観察では、ルンゼ上部 2525m地点に破断面が見られたそうです。
捜索日の4月4~5日の天気は?
捜索の打合せで、4月4日と5日に現場に入ることになりましたが、天気はその周期や週間天気予報等の流れからみるとあまり期待できない具合でした。
降雪も捜索を拒みますが、それ以上にあらたな雪崩の危険が増加します。
雨であれば、上昇する臭いや滞留している臭いを沈下させ、嗅覚捜索はより難しくになります。
出発前の3日の予想では入山捜索日は下り坂。
大きな崩れにならないことを祈るばかりです。
4月4~5日、昨年12月27日北アルプス抜戸岳で起こった雪崩に巻き込まれ、その後発見されていない行方不明者(北ア・抜戸岳雪崩遭難)の捜索のお手伝いに行ってきました。

分厚く堆積した雪と積雪層内に存在する氷板などで臭いの移動が妨げられている状態で、発見に至る反応はありませんでした。
遭難者は静岡の方
遭難者は本ブログのリンク先静岡の山と渓の知り合いだったこともあり、2月はじめに関係者と打合せ、雪解けを待って捜索に入る計画をしていました。
2月17日、雨による融雪作用で崩れた雪の中から遭難者1名発見の報(1人の遺体発見)が入り、運良く二人目も見つかるかもしれないと期待されましたが、その後発見の手掛かりはつかめていませんでした。
チャンスの遺体捜索
実は、チャンスの初めての捜索は遺体捜索でした。
4年前の1月、雪崩講習会の講師を始めたばかりのときに、「北岳大樺沢で雪崩に埋まったままの人がいるが犬で探せないか」という話を受けてのことでした。
チャンスの兄貴分 ビンゴのときに、Σシュードを使って遺体捜索訓練を行ったり、水難遺体捜索の訓練に携わったりしていたので、その話のあと遺体臭シグマを使った捜索意識をチャンスに施し、谷川岳での雪中遺体臭捜索訓練を経て「遺体臭も捜す」意識を高めていきました。
もちろん、人間にとっては遺体捜索ですが、犬(チャンス)にとっては「求める臭い=遺体」ではなく、「求める臭い=ご褒美・達成感」などといったすり替え、狩猟本能の代用活動に他なりません。
北岳大樺沢での捜索では、埋没地点から少し下流に離れた辺りで反応を得ることができ、そのときの経験が今回の捜索に役立つと考えていました。同時に、山中で捜索関係者と一緒にテント泊させる、ということもチャンスには大きな経験になりました。

北岳大樺沢上部の埋没地付近で反応を示すチャンス(ビデオ映像より)。
このときのチャンスはまだ2歳9ヶ月。捜索関係者の見守る中でしっかり作業できるか… 不安もありましたが、なんとか結果につながる作業をやってくれて安堵した覚えがあります。

北岳大樺沢上部雪渓の様子。
遺体臭シグマ
通常の遺体臭捜索の訓練では、アメリカの製薬会社が販売している擬似遺体臭を滲みこませたチューブなどを探させることを行いますが、雪中遺体捜索の場合、私は水難遺体捜索の訓練で使用するカプセルを溶解させた水溶液も併用しています。とくに、融雪期以降で雪温が0℃となっている状態での捜索には原理的に役立つと考えられるからです。

今回の捜索に所持するため、新しい遺体臭シグマを準備しました。右は遺体臭(Ⅰ)シグマのアンプル、左は水難遺体臭シグマのカプセル、青い液体は着色水。

通常の遺体臭シグマの臭いの入ったチューブを雪に埋め、その周辺に水難遺体臭シグマ水溶液を含ませて双方の臭いを意識させて探させます。雪中に埋めるチューブは2重構造にして本体に雪が入らないように大きなものにしています。
午後の捜索は、瓦礫を越えてその奥(地下室)のヘルパーを探し出す訓練を行いました。
ハンドラーは瓦礫を越えて中に入れないため、足場の悪さを越えて自主的に臭いを捜し求める捜索欲が必要になってきます。

点線の手前付近から犬を出し、建物の中からの臭いを辿らせます。

臭いをとらえやすくし捜索意識を高めるために、一回目の捜索は浅い地下部分に隠れて、捜索による達成感を与えてあげました。

今回参加した大型犬にとってはさほど問題のない瓦礫障害で、臭いをとらえれば難なく乗り越えてくれました。

小型犬にとっては、足場に対する得意不得意、上手下手によって大きな障害になる場合がありますが、「通れない」「乗り越えられない」「降りれない」というほどのことがない状態では、「できるだけ犬に考えさせ、経験させ、自信をもたせるか」という普段の訓練が影響してきます。
ただし、がむしゃら・力任せの行動は危険です。逆に、危ないからとハンドラーがすぐに手助けしてしまうと自分で解決できず、臭いのもとに近づくことができない… ということにもなります。

二回目の捜索では、地下室奥に隠れたヘルパーの臭いを探させます。
中に、犬の行動を見て様子を伝えるサポーターが2名ほどいますが、経験を積んだ犬にとってはその人の臭いや行動には影響されません。しかし、犬の捜索行動を妨げないような配慮は必要です。
潜んだヘルパーの臭いを感知すると、その部屋に入るだけでなく、周辺サポーターの臭いとの違いを確認しようとする行動がみられます。
そのような行動をなんどか繰り返し、室内に潜んだヘルパーの臭いに確信を得て、見出しアラートする犬もいました。
室内深くなると、ヘルパーの臭いを捉えたり区別することが難しくなる場合があり、また気流の流れの影響も多くあらわれ、より積極的な移動と嗅覚作業意識が必要になってきます。

初歩初歩犬の初めての瓦礫は、ある適度強引に移動させますが、楽しく・おもしろくは基本です。
こんな「ヘンな」場所で「何故?呼ばれて、ご褒美もらえるの?」。
最初は「わけがわからなくても」仕方ありません。
ヘンな場所でも「出会えば!」いいことある、だけでいいのです。
3月29日、町田市内の解体中建物をお借りして室内を含む捜索訓練を行いました。
じっくり訓練できたのは昨年の瓦礫捜索訓練以来かもしれません。

解体のための大きな重機を入れるために、建物をくり貫いたトンネル。

トンネルを抜けると… そこは「瓦礫の世界」でした。

午前中の訓練は、瓦礫にされる前の建物内(内装を取り除いた)を使った捜索を行いました。
犬が「自主的に」「臭いを求め」「探し続ける」ことが求められます。
しかし、室内の空気の動き、隠れ役の臭いの分散や対流、滞留… 諸条件の中でその臭いの出処をつかむのは経験を積んだ犬でないと難しい場合が多くあります。

漠然とした臭を感知することから、より強い臭いのある場所へ辿りつき、その中の複雑な浮遊状態を見極めて… 発見告知(アラート)することになります。

ミニチュアダックスも、大型犬に引けをとらず隠れている場所を特定。

「まじめ」なミニチュアプードル、坦々と臭いを探し続け、各部屋を巡り、隠れている人のいる部屋へ入ることができました。もちろん、とくに指示されることなく、辿りつき、そしてアラートしてくれました。