北ア抜戸岳雪崩遭難者捜索再び Ⅱ
消失点から吹き飛ばされた対岸エリアの再捜索
捜索関係者と「どこを捜索するか」を相談し、消失点から吹き飛ばされ対岸で2月に発見されたKさんの位置を中心としたエリアを捜索することにしました。
天気は快晴に近く、気温も上がり、強烈な陽射しが襲い掛かります。
前回と同様に、融雪が進む川縁近くを中心に「臭い反応(臭いの出)」がないか探ることにしました。
川縁周辺を何度も探らせましたが、はっきりした反応は見られません。
大きな岩を中心として、積雪と川との縁付近を丁寧に探らせました。ときどき、川近くを気にする仕草がみられたので、川床にも降ろして臭いを探らせました。
「どこが気になるのか」「どこから感じるのか」読み取れません。
岩の周辺から川に向かって「何かを感じている」様子は、もしかしたら… 対岸(消失点から続く積雪)の融雪水に含まれる「臭い」を感じているのでは… という考えを起こさせました。
対岸の崖から融雪に伴う水流が見えていたからです。しかし、これはあとから考えれば「余計な推理」でもありました。
消失点から「どうなったか」を考えるとき、発見された1人と「同様(吹き飛ばされた)」と考える確率と、「もしかしたら(吹き飛ばされていない)」と考える確率を比較したとき、確率の大きい方をより重視(徹底)すべきである・・・。
それは、後で反省することになります。
気にする大岩周辺の沢床に降ろして、「よりはっきりした反応」を期待しましたが… 読めるほどの反応はありません。
嗅覚捜索の開始からさほど経たないうちに、雪中に赤いものを視認。
掘り出すと、それは手袋でした。
捜索関係者に「手袋発見」を伝え、捜索に関わった人のものか、それとも遭難者のものか確認してもらったところ、「遭難者のものらしい」遺留品であることがわかりました。
軽い手袋は、遭難者から離れていてもおかしくはありません。発見位置から上流に向かってプロービングが行われました。
その間、引き続きチャンスに上流側エリアの捜索を続けてもらいました。
しかし・・・ 反応は得られませんでした。
川縁周辺の捜索を一段落し、しばらく休みました。
休憩中、雪中の臭いをどのようにして感じ取らせるか・・・ 捜索エリアを眺めながらいろいろと考えました。
プローブによる穴もその一つですが(雪中の臭いを出す試み)気流が川床に吸い寄せられれば臭いは出てきません。
深く掘れば、その場の臭いは出やすくなります。しかし、どこを掘るか・・・ 人力と時間に限りがあって、「ここ」という目星がなければ頼りは「運」だけになります。
いろいろ考えた末に、20~30cmの深さの「溝を掘って臭いを探る」ということを提案、捜索関係者に協力をお願いすることにしました。
「雪面よりは臭いを感じやすい」であろう、という程度のものですが、何もやらないよりは・・・。
とにかく、試すしかない・・・ という思いからでした。