深山訓練キャンプ in 三峰川 Ⅹ
巫女淵の滝のモデル犬
朝見た滝(美しい滝)も滝下から見ると
なかなかのものです。
例年、この滝をバックに、あるいは見上げながら、先代ビンゴ、そしてビンゴとチャンスをモデルに撮り続けてきました。
なかなか思うようには撮れない場所ですが…
うまく撮れたときは、とても素敵な舞台になっていることは確かです。
今回は、未体験犬2頭を滝下へ連れて行きました。
まずは、チャンスと若きGR、そしてMプードルと若きGR。
定位置に「座れ」「待て」させるものの・・・ 犬にカメラ目線させて「マテ、マテ・・・」と言い続け、構図とビントと犬の表情を収めることの難しさ・・・。
たくさん狙うしかありません。
とりあえず・・・ 収まりました。
この現場、実は下の写真のような場所なのです(AY氏撮影)。
犬にポーズさせるのも一苦労ですが、複数犬の扱いが… とっても大変。
なんとか撮影を終え… 本日最後の橋へ。
キャンプを撤収、荷物をまとめて出発。
昨日、大雨の中、林道を塞いでいた倒木を除去しましたが、そのなごりの木が残っていたので記念に一枚。あの雨の中の模様(写真下)がウソのようです。
このあとは、長い長い林道を抜けた先の一瀬村の温泉で汗を流し、長谷村~高遠を通り、伊那市経由で帰路につきました。
深山訓練キャンプ in 三峰川 END
訓練エリアから林道へ
捜索訓練を行ったエリアから再び林道へ戻ります。
しかし、道があるわけではありません。
山の捜索を考えれば当たり前のことですが、戻るべき道は自分たちで探します。

広い河原から林道に上がるためには、比較的登りやすいルートを見出してそこを辿ります。
植生や傾斜、足場の脆さや周辺の危険度を判断して、犬と共にクリアできるルートを選ぶことが基本です。
しかし、「下から見る傾斜は実際より緩く見える」ことを念頭に置かなければ、途中で身動きが取れなくなる… ということも起こり得ます。
ルートファインディング能力は捜索において磨いておきたい技術の一つです。
網の掛かった石垣ルートも、ある意味登りやすいのですが、犬の足にはやや危険が伴います。また高所感に弱い人にとっては高度感を感じやすいかもしれません。
比較的登りやすいルートとして、斜面どうしが交わる溝状の場所を選び、登ってもらうことにしました。
岩場を模して言えば、凹角(ジェードル)、凹状地といった感じですが、傾斜は緩く足場は土と岩のミックスです。 しかし、浮石や落石には十分な注意が必要です。
犬が興奮すると「危険な場合」もあります。あるいは、ハンドラーを心配する犬が不安になって、必要のない登降を繰り返すことも起こります。
犬にこのような場所、場面を慣らさせることも必要ですが、危険箇所での犬の行動に振り回されてはなりません。まずは、ハンドラーが落着いて、冷静に犬を指示することが肝要です。
無事林道に戻り、帰路につきました。
再び、朝も通った石垣の上に犬を登らせ、林道と併行に歩ませました。
三峰川の中でも、巫女淵と呼ばれる狭谷はとても美しいところです。
昨日の雨の影響もほとんどなくなり大分澄んできました。しかし、数日以上雨のない状態が続けば、この写真よりもさらに澄んだ紺碧の流れがつくりだされる場所(その昔、ビンゴが気持ちよさそうに泳いだところ:暑中お見舞い申し上げます)なのです。
巫女淵の流れを見たあとは… 巫女淵の滝が現れます。
このあと、何年かぶりで滝下からの写真を試みました(はいポース!)。
チャンスは?
チャンスは6歳9ヶ月、もうそんなに若いとはいえなくなってきました。
でもまぁ、このくらいの運動量なら「好きこそものの」で大丈夫でしょう…。

「どこだ~」「どこだ~」…
チャンスには、わざとヘルパーの臭いがとりにくい風上や側面のエリアを捜索させてから、徐々に臭いの断片をとらえられるエリアに移動させました。

まだヘルパーの風上ですが、岩付近に臭いを感じて登りました。
この岩、先ほどまで他の犬の撮影をするためにハンドラーである私が居た場所です。その臭いを感じて確認したと思いますが、もしかしたら、地形的にヘルパーの臭いの一部が漂ってきたのかも知れません。
ところで、この写真… 背景の倒木が串のようで… 「串刺しチャンス」に見えませんか?
さて

ヘルパーの風下~側面エリアで臭いを感じ、流木の堆積したエリアに向かって行きました。
やはり、ヘルパーの潜む位置(↓)の風下側の堆積流木帯を気にし始めました。
風の流れは、写真右奥から左手前にゆるく流れています。

臭いが漂い、溜まっていると思われる流木の山を探ります。なかなか「掴み所」のない臭いを感じていることと思います。

臭いを確認するために「上に登ってみる」という行動は、今までにもたくさん見てきました。
実はこの動作、解体瓦礫捜索訓練(捜索行動と臭いの流れ や瓦礫突破(上での行動))で見られた臭いに対する反応や行動とよく似ています。

上に登って、臭いの断片が右から流れてくることを感じ取ったのか、上では不明瞭になった臭いを下る過程で流れてくる臭いとして感じ取ったのか…
流木山を降りて、そのまま右の流木帯(ヘルパーの潜む)へス~と移動していきました。
そして… 発見、咆哮。

発見のご褒美は「人(犬)のボール」でしたが、「人のものの方が好き」というチャンスは満足、満足。
探すの大好き、探すの楽しい、探すの面白い、探さずにはいられない・・・ そんな気力と体力がある限り、捜索犬の仕事はまだまだ続けられそうです。
三峰川支流の荒川出合でたっぷりのレトリーブ遊びを行い、一休みしてから下流に向かって歩きだしました。

塩見岳登山口のある大黒沢で、林道は三峰川の左岸に戻ります。
疲れたあとの捜索訓練
大黒沢前の橋を渡り、三峰川の河原に下りる道がついています。
この河原付近はバリエーションに富み、捜索訓練にもってこいの自然環境がいっぱいです。
片道3kmほど歩き、さらに山の斜面を歩かせたり川で遊ばせたりした犬たちに捜索を行わせます。
一般的に言えば「疲れた状態」ですが、実際の山の捜索ではこの程度のアプローチや体力消耗はよくあることなので、疲れたあとの訓練でも「問題ない」ようであれば、それは実践でも活動できるだろう… ということになります。

今回の訓練参加犬はチャンスを含めて5頭です。
この日、谷間には白い雪のようなものがフワフワ舞っていました。白い虫が飛んでいるようにも見えますが、その動きはゆっくりと上から下へ、風の流れに従って動いていることがわかります。
実はこれ、ドロノキなどヤナギ科の高木から落ちてくる綿毛で覆われた種子なのです。
この綿毛の浮遊物・・・ 捜索訓練にはとても役立ちます。
エリア全体に浮遊しているので、風の流れ、動きがとてもよくわかります。隠れ役から漂う臭いの流れがそれで見えてきます。
ただ・・・ 限られたこの季節の間だけしか役立ちません。

小さな体のミニチュア・シュナウザー、広いエリア、河原の石、流木の障害、ものともせず、臭いを感知して軽業師のごとく、潜んだヘルパーを探し出してくれました。
この犬、泳ぎ疲れはしていない模様。水は好きでない故に…。

「まじめな仕事人」のミニチュア・プードル。
臭いをとらえやすい位置に移動し、その臭いを感知すれば、まじめに… 臭いの元へ向かいます。
この犬も、水疲れはない模様。

かなりの水疲れ犬ですが、若さも手伝って「疲れ知らず」の捜索モード。
ヘルパーの臭いとは異なる「誘惑臭」に途中惑わされることもありました無事ヘルパー発見へ、咆哮。

レトリーブ欲満々の若きゴールデンですが、水疲れか・・・ 捜索欲が少し萎えました。
もちろん、こんなときはたっぷり「満足」させてあげます。
同時に、このような場所で出た「課題」は、普段の訓練の中で「因数強化」的なことを行い解決していくことが大切です。
深山訓練キャンプ in 三峰川 Ⅳ
20日 その2
林道の途中には「捜索犬の訓練」として強化できるいろいろな「地の利」が存在しています。
「可能な体験はできる限り沢山」を意識しながら、興味津々の犬たちを「楽しく」誘導することが可能です。
林道から急な崖を隔てて三峰川の清流が見渡せる場所に着きました。
何故か犬たちは「そわそわ」して、川の流れを意識し始めました。水を好きになったレトリバー犬が示す動作ですが、崖を降りなければその「楽しさ」に触れることはできません。
しかし、見かけは「危なっかしい」崖でも、意外と降りることができてしまうものです。
野生動物的運動神経が目覚めれば… 「どうってことない」のですが、ほとんどのハンドラーは、その行動を促す術を知らないだけのようです。
ちょっとしたキッカケと度胸と… そして足腰バランスで、その「価値ある行動」を促すことが可能です。
ハンドラーが犬たちとうまく行動できれば… 持てる能力を次々と目覚めさせることができる… かもしれません。
石垣や急な斜面をも、登らせたり、併行して歩かせたり… 行動力アップにつなげることもできます。
この場合、臭いを求めた捜索行動とは違うので、「勝手に」ではなく、「指示に従って」が基本です。
いろいろと楽しい体験を積みながら、林道を奥へ奥へと進みます。
林道脇に、沢水でできた大きな水溜りがありました。
水大好きな犬は泳がずにはいられません。
まだあまり泳ぎ慣れしていない犬も、気持ち良さそうに泳ぐ犬を見てじっとしていられません。
この林道には、500m置きに基点からの距離が記されています。
地形図読本が基本ですが、林道をどれだけ歩いたか知るのに便利です。
塩見岳登山ルートのある大黒橋を過ぎ、ようやく荒川出合の河原に到着しました。
今日の予定はここまで。
このあとは清流の中でしばし遊び、そして往路を戻ります。
深山訓練キャンプ in 三峰川 Ⅲ
20日 その1
20日は朝から晴れ、気分も晴れやかに三峰川上流へ向かうことにしました。
川の流れも、濁流から清流に変わりつつありました。
(写真上)昨日19日午後3時20分の川の様子(泥色の濁流)と、(写真下)20日朝7時28分の川の様子。
犬わくわく 三峰川上流へ
一般車通行止のゲートを越えて、犬と人との歩行開始。
自然の空気の中で犬たちは興奮ぎみ。
でも、最初のうちは仕方がありません。こういう自然に慣れさせるのも訓練のうち。
「巫女淵」と呼ばれる谷全体が狭まるあたりに美しい滝が出現します。
帰りにここ(滝の下)で撮った写真が(三峰川Ⅰ)です。
巫女淵が終わる辺りに「延命水」と呼ばれる湧き水がありますが、その少し手前の沢と湧き出す水は延命水よりも甘みを感じるものでした(上写真)。
水はあちこちにあるにもかかわらず、犬たちが美味しそうに飲んでいた理由も「そのへん」にあったのかもしれません。
巫女淵「延命水」で一休み(写真上)。
そして再び上流に向かって歩きます。
犬たちは基本的にフリーですが、適宜呼び寄せしたり、斜面を登らせたり、自然の中で必要な指示とコントロール性を身につけさせていきます。
それでも、犬同士興奮して… 調子にのって… たしなめられることも(犬に)。
調子にのる犬(中央)、それに怒る犬(左)、たしなめる犬(右)・・・・ うそ!本当?
深山訓練キャンプ in 三峰川 Ⅱ
7月14日の「梅雨明けしたとみられる」のあとの数日はかなりの猛暑でしたが…
梅雨明け十日なんてことはなく… あれよあれよと戻り梅雨模様。
14日の時点では「夏らしい天気」を期待していましたが、出発した19日は下り坂。
19日の天気はあきらめ、前線南下後の20日の晴れ間を期待することに。
7月19日 入山
三峰川に向かうに従い、雲も増え、山あいはガスが増え、小雨も混じる空模様。
ここ数年、入山日に林道奥へ入って訓練していましたが、期待できない天気なので「ゼロ磁場」の分杭峠に立ち寄り「水汲み」をすることにしました。
ところが…
連休とあってたくさんの人が水汲みをしていて、長い順番待ちを強いられました。
結局、水汲みとゼロ磁場立ち寄りで2時間以上費やしたのち、三峰川上流に向かいました。
途中からかなりの大雨となり、小規模な土砂崩れや落石などに注意を払いながら進みました。
そして、林道を塞ぐ倒木を取り除いたり…。
雨の上がるのを待ち続け・・・
ようやく着いた目的地は土砂降り状態… しばし閉口。
しかし、車を止めている間に雨があがり、その雨間をぬって野営地を決め設営。
先ほどまでの豪雨のせいで対岸の堰堤には土砂混じりの水が流れ落ちて来ていました。
強い雨が降ってから、沢の出合まで濁流が達するまでに時差のあることがよく分かります。
いつもは青く澄んだ三峰川本流も、魅力のない濁流となっていました。
雨はまだ降ったり止んだり。なかなかすっきりとは上がってくれません。
野営の基本は安全地帯
野営地は、豪雨等があっても「増水」「土砂崩れ」「落石」の恐れのない場所を選びます。
この辺りは、台風や集中豪雨等で時々景観が一変してしまうことがありますが、そんな後でも「変化のない場所」があります。
そういうところが基本的に安全地帯と言えますが、地勢全体が分からないときは地図の情報も必要です。
本日唯一の訓練(?)
雨がようやく「ほぼ」上がったのは薄暗くなり始める頃。
訓練らしいことが何もできなかったので、リフトハーネスを使って吊り下げならぬ、肩かけ移動を少しやってみました。
ハーネスを装着した経験のない犬の場合、少々手こずりますが…
ぶら下げ状態になると「観念」したかのようにおとなしくなります。
暗くなると、空の雲もとれてきて、V字谷の合間の狭い空にきれいな☆が出現。
天の川らしき(雲のようなガスが時々かかるため紛らわしい)ものも確認。
久々に美しい星々を眺めたあと、眠りにつきました。
捜索犬普段の訓練いろいろ 090704 その2
7月4日の+1(チャンス)
以前捜索訓練用の擬似家屋の臭いをとって、その臭いを探る行動をアップ(普段の訓練090426(2))しましたが、再びヘルパーの隠れる家屋の中の臭いをとる様子を追ってみました。
登る、登る、登る…
チャンスは登るのが「好き」なので、臭いを探って「上に感じる」と得意になって登って行こうとします。
ただこのとき、ハシゴが傾いたままで…。
登ってから、やはり臭いがはっきりしなくなるようです。その出処を突き止めるまで動き回りました。
そして「ここだ~!」という感じで発見!
「ここだ!ここだ!」「ちょうだい!ちょうだい!」「はやく、くれよ~」
…ってな気持ちでしょうか。
降りる…降りる…
降ろすときは、降りるように指示しますが…
登るときよりもずっと慎重にならざるを得ません。それにしても… こんな不安定なハシゴを・・・。
ご褒美をもらって、満足、満足。
捜索犬普段の訓練いろいろ 090704 その1
7月初めの土曜日、訓練に参加した犬は3+1でした。
川上村のキャンプ(in 川上村 2009)以来久しぶりのGシェパード。
水があまり好きでないGシェパードが多いのですが・・・ このGSは水に浸るのがとっても好きです。
板壁はまだまだ、と思っていた若いGレトリバーも・・・ おだててやらせてみれば「できるじゃん」。
さらに、幅跳びをやらせてみれば、簡単にクリア。
犬の本来持っている能力を引き出してあげることができれば、 犬もその能力を「喜んで発揮」してくれるようになります。
それはまた、捜索作業などで立ち向かう「いろいろな障害」を乗り越えていく自信にもつながっていきます。
先のGシェパードの先輩格のアイリシュ・セター。高齢になって足腰が弱ってきましたが、身体にたっぷり染み付いた「捜索」という楽しい作業は忘れません。
簡易な設定で「その気」にさせてあげると、喜んでそれに「答えて」くれました。
3+1の「1」のチャンスは、またこのあとに…。
捜索犬普段の訓練いろいろ 090620 その2
パレット搬入
この日は捜索犬関係者の便宜でパレットが大量に搬入されました。
訓練施設拡充に「なくてはならない」パーツです。
とりあえず、山積みしますが… かなりの量です。
新しいパレット上で足慣らし
新しく積まれたパレットを使ってチャンスのガスを抜きました。
パレットエリアに入る前に、他のエリアを一通り探させて… 最後に満足!
草刈り
6月からこの時期、草刈りが欠かせません。
草を刈ったあとにたくさんの鳥が降りてきて何やら啄ばんでいます。
最初は草の種子が目的かと思っていたのですが・・・ 草を刈っていてわかりました。
普段草場に隠れている小さな生き物たちが露出してくるからです。
ミミズはもちろん、昆虫類、アマガエル、そして気味の悪い色々な生物…。見かけによらず、鳥にとってはご馳走の様子。
捜索犬普段の訓練いろいろ 090620 その1
この日の導入基礎訓練
初級犬にも上達犬にも、訓練の初めには基礎的導入を行うのが普通です。
鼻を使って探している犬にとって、これだけ見えている場所でも、犬は意外と「ヘルパーの姿や目」を感じていないことが多いようです。
しかし、初級犬の場合はまだ「目による確認」が多く、咆哮させるためにその目に「ご褒美」を意識させることもあります。
初級犬にとって、ヘルパーの役割はとくに重要ですが、その犬に合わせて的確なやりとりをタイミングよくできるようになるためには観察力とセンスが欠かせません。ヘルパーが不足しているときに役立つのが「仕掛けBOX」です。
犬の動きを見ながら操作することができるので、タイミングを逃さず「反応」へと導くことができます。
意欲的な犬は、ご褒美欲しさにヘルパーの居る隠れ場所にもぐりこんでこようとします。しかし、入り込めないことが分かると、結果的にしっかりとした咆哮へと移行してくれます。
遭難者に直接出合う可能性のある広域捜索では「もぐりこんだり」「引っかく」動作をさせないように訓練しますが、瓦礫等の捜索の場合は「臭いの元」にできるだけ近付いて咆哮させることが基本です。
伏せて吠える、というのも「一つの良い形」かも知れません。基本的には、臭いの一番強く出ているポイントに向かってしっかり吠え続けてくれることが理想です。
上の写真(左)は、扉の開口部分でないところで反応して咆哮始めたところですが、「正解」です。左奥から右手前に風が流れているため、箱から漏れ出す臭いの一番強いところで反応しているところです。
このようなBOXを使うときは、開口部を風下側に向けるのが原則ですが、この扉では左右で距離ができてしまいます。「反応したポイントからご褒美」というのが理想なのですが …。
仕掛けBOXやヘルパーによって、反応性や咆哮強化をすることができますが、個々の犬それぞれに基本的な「欲付け」が行われていることが必要です。
何に一番夢中になれるか、何を一番欲しがるか・・・等々、子犬の頃からそれらを使ってその意識を「目覚めさせる」ておくことがとても大切です。
欲に目覚めていれさえすれば… 捜索作業の基本はさして難しいものではありません… が。
初級犬の基礎導入訓練
普段行っている初級犬の捜索基礎導入訓練のいくつかは、「臭いを感じやすいスケスケの場所」に隠れたヘルパーを探り当てさせたり、「臭いの出やすい状態にしたBOX」、刺激的な「BOX」などを使って行います。

少し前まで、ヘルパーを選んで「気持ち」と「腰」が引けていた若いゴールデンでしたが、徐々に「鼻」を使った探り出しと咆哮ができるようになってきました。

このゴールデンにとって、仕掛けBOXを用いたトレーニングはこの日が初めてでしたが、「仕掛け刺激」の甲斐あって、吠える衝動を掻き立てることができました。
最後はヘルパーのいる箱の中でご褒美(ボール)をゲット。
これらの蓄積を経て、安定した意欲と反応性を育てていきます。
上達犬もベテラン犬も
この基本的「強化」訓練は、捜索意識の安定してきた犬やベテラン犬に対しても普段の訓練の中で施しています。
簡易な設定でも、基礎を基礎としてきちんとやってくれるのが犬たちです。

基礎トレーニングの中には…

手押し車 再び…。
解体建物瓦礫使用訓練 090607 その5
午後の訓練Ⅳ 瓦礫の突破
足場の悪い瓦礫の中を無理やり登らせたり(犬が嫌がっている場合)、明らかに危険な箇所を強引に通過させることは避けなければなりません。
しかし、犬に「追及しようとする意欲」がある場合、あるいは見た目ほどに危険性が高くなく、ルート判断や行動イメージがある程度つかめるときは、犬の自主性に委ねたり、必要なフォローをして、感じている臭いの元(発臭源)へ行かせてやることも必要です。
それは犬に達成感や自信を与えることになり、そしてまた現場で遭遇するかも知れない悪い足場をクリアする作業の向上にもつながります。
これらは、我々人間が行う一般的なクライミング技術やルートファインディング技術の向上と共通していると、私は考えています。
今回、そのような作業を意識しながら、チャンスに作業させてみました。
上の写真は、チャンスが瓦礫奥のヘルパーの臭いを感じてから、その臭いを探り、辿る動作の流れの一部(①→②→③→④→⑤)を写真に収め、瓦礫全体の様子を関連付けたものです。
ゆるい流れの風が、全体的に右奥から左手前に向かって流れていましたが、瓦礫堆積物の影響で、瓦礫周辺では小さな乱流や逆流も発生していると思われる状況でした。
風の流れ具合と犬の行動を照らし合わせることで、ある程度「臭いの移動や分散」を視覚的に感じ取ることが可能です。
以下は、捜索作業の断片と臭いの特定(発見)~告知までの写真アップです。
堆積瓦礫の壁を通り抜けてくるヘルパーの臭いを感じ、その臭のもとを探ろうとしていますが、壁を突き抜ける手立てはありません。
臭いを求めていろいろと探り歩きますがなかなか元をとらえることができません。
そのうち、登りやすい右の堆積ガラの方へ移動しました。しかし、ここは風の流れの風上側、側面といったところで、今まで感じていた「臭いを見失い」ます。
周辺を移動しながら、ハンドラーである私の方にくることがありましたが、この場合、「臭いを感じ取ったガラ」に向けて方向指示するだけに留めました。
臭いを感じ取れるガラ周辺でいろいろ迷っていましたが、堆積ガラの側面の中で移動できそうな部分を選びながら斜め右に向かって登って行きました。
登り上げた地点で、その奥から流れてくるヘルパーの臭いをとれるだろうと思っていましたが、堆積ガラの頂上付近を気にするような動作に移りました。
瓦礫の構造から、その臭いは突き出した堆積ガラの辺りにぶつかって一部逆流しているようでした。
しかし、上に登ってみて「臭いの元」が下から流れてきていることを知り(今までの多くの経験がそうさせているものと思います)、ヘルパーから流れてくる臭いの地点に近付いていきました。
ようやく、ヘルパーの潜む地点に辿りつき、臭いが発散されてくる穴に向かって咆哮、発見!
小型犬も挑戦
この一年、成長めざましいMプードルに、足場の悪い瓦礫の中で「臭いを感じとらせ」その「臭いを探らせる」る過程を、チャンスの反応を参考に試してみました。
もちろん、瓦礫下部で「臭いをしっかり感知」したかどうか… を確認した上でです。
堆積ガラ下部を探らせる過程で、臭いを感知し「非常に気にしている状態」が確認できました。
このMプードルはもともと足場の悪い瓦礫がそれほど得意ではありませんでしたが、最近は「不安を感じさせない」身のこなしができるようになってきました。
そこで、気になっている「臭いに近づけさせる」よう、ハンドラーが犬をフォローして瓦礫を登らせることにしました。
しかし、上に登ってから…
ヘルパーの潜む穴に向かって特定できそうな反応を示しましたが、「高い場所で吠えるのが苦手」意識が出てしまったようです(高い場所・不安定な場所での告知 )。
最後は側面の臭いを確認して「吠えやすい」位置に降ろして、「達成」させてあげました。
解体建物瓦礫使用訓練 090607 END
解体建物瓦礫使用訓練 090607 その4
午後の訓練Ⅲ 瓦礫奥から漂う臭いをとらえる
建物室内の捜索(~発見咆哮)を終えたあとは、瓦礫エリアを移動しながら瓦礫際をチェックさせ反応を見させることを行いました。
捜索させる瓦礫エリアには、解体途中の建物の一部(奥の残壁)と手前の堆積ガラが残されています。
行方不明者役(ヘルパー)は、右奥の残壁の下に潜んでいます。
ごく弱い風が右奥から左手前に向かって流れていて、ヘルパーの臭いは堆積ガラの隙間を通じて僅かですが通り抜ける状態です。
写真瓦礫の左側を手前に移動して行きますが、右の堆積ガラ付近に犬を近づけないとヘルパー(写真右中断下部)の弱い臭いは感知しにくいかもしれません。
上写真は、堆積ガラ奥から漏れ出してくるヘルパーの臭いを犬が感じ気にしている様子です。
臭いはまだ薄く、断片的で不明確だと思われますが、犬は「探り出したい」という行動に駆られています。しかし、現場の状態は「行動を阻止する」ようにガラが聳え立っています。
犬が、より強い臭いを求めて探し求めているようであれば、その行動や反応をよく観察し、ハンドラーとして「その原因」を探り、次にどうさせるか…考えなければなりません。
潜んだヘルパーの臭いを明確にとらえさせるためには、その地点に接近させなければなりません。
ここでは、堆積ガレを越える必要がありますが、越えられる場所を犬自身に見い出させるのが理想です。
しかし、より確実で安全なルートをハンドラーが見い出せるのであれば、犬を「探らせたい怪しい場所」へ導いてあげる方がより現実的で実践的です。
明確な臭いを特定できれば、犬はそれなりの反応を示してくれます。
「怪しいエリア」「探らせたいポイント」に犬を誘導しても、その時の風向きや地形で「臭いをすぐに見出せない」ことも多々あります。
瓦礫捜索では、丁寧に何度も探らせる必要があります。
実際の現場では、訓練のように「隙間だらけ」「ごく浅い」という方が「稀」と考えておいた方が無難です。
小型犬であっても、丁寧な作業をする訓練をしていれば、しっかり探し出してくれます。
ちょっと場所を変えての捜索… 発見咆哮!
午後の訓練Ⅱ 一部室内を含む瓦礫捜索
午後の解体中瓦礫現場は以下のような状況で、左建物1階の一部に行方不明者役を隠し、周辺部から犬を出して探り出させることから始めました。

現場付近の風向きは、右奥から左手前に向かってゆるく流れている状態です。

建物周辺で、犬は中からの臭いを感じますが、その元に向かってどのようにして近付くか… 犬によっていろいろですが、一旦風上側の瓦礫に登らないと中には入れません。
ベランダの下部には通気用の穴が開いていて、そこから臭いをとる犬も多くいますが小型犬でないとそこから中へ通り抜けるのは難しく感じました。

瓦礫部分に登った犬は、中からの臭いの一部を感じてたどり着くことができました。
中に入ってからは室内捜索に近くなりますが、開放状態に近いために比較的簡単に特定してくれました。

チャンスはベランダ下の通風口で臭いをとり… その穴に潜り込んで通過してしまいました。
「小型犬でなければ通れない」と思っていた穴でも頭が入れば… 通ってしまう?
一瞬あっけに取られ、「うそだろう!」 そんな感じでした。
その穴とは、上の写真の左上写真に写っている大きさの穴(実際に通過したのはカメラ側手前の床下にある穴)です。2枚上の右上写真(黄ラブ)とその下の写真(ゴールデン)の左側にもその四角い穴が写っています。
今日から7月
今日から7月。
2009年も折り返し。梅雨から盛夏へ。
梅雨明け頃から盛夏に向かって、美しい蝶たちが羽ばたきはじめます。
夏の高山蝶
ミヤマモンキチョウは森林限界以上の高山に棲息する可憐で美しい蝶です。
北アルプス一帯で見られる「アルプスモンキ」と浅間山とその周辺で見られる「アサマモンキ」が亜種として知られ、7月を代表する高山蝶の一つ。
写真上は浅間山近石尊山に棲息するアサマモンキ。
里山の国蝶
夏の里山を代表する蝶で、その大きさと美しさで秀でているのは「国蝶」としても有名なオオムラサキ。
クヌギなどの樹液を吸いにやってくる姿(写真下)が有名ですが、「小鳥まで追う」と言われるほど気が強く、梢の先でテリトリーを張る姿(写真上)をよく目にします。
樹液を吸う姿は映像化される機会が多いですが、気まぐれのように翅を閉じたり開いたりしているために、衣装の「美柄」を写真に収めるには「運」と「根気」が必要です。