捜索犬普段の訓練 091025 その2
ハンドラーの先入観を・・・ 覆す
BOX群を使った基礎的な訓練の中で、ハンドラーと犬を騙すような設定をしてみました。
最初、4つのBOXの一つにヘルパーを隠し、その中から見つけ出す簡単な捜索を行わせました。
そして次・・・ ハンドラーには「4つのうちのどれか」と思わせておき、ヘルパーを別の場所に潜ませました。
風の流れ(気流)は→のように流れています。
そしてヘルパーは↓に潜んでいます。
上の若いMダックスは、最初に行った4BOX群を意識し(ハンドラーも)、先ほどヘルパーが潜んだBOXの残留臭にかなりの執着を見せました。
そこで、いくら咆哮しても「何の反応も示さないBOXの臭い(残留臭)≠生体臭」であることを理解(?)あるいは学習させることによって、
探すべき対象をあらたに求めさせました。
ハンドラーから犬への指示は、捜索エリアから大きく外れたときのみの「方向性」指示だけです。
犬がヘルパーの風上にいるため、なかなかその臭いを感知できませんが、探そうと動き回る過程で発臭源にある程度近づくと、
風上であっても渦を巻いて逆流する「断片的な臭い」がとれることがあります。
犬はそんなわずかな臭いも敏感に感じ取り、より強く感じる風下へと移動しました。
そして、結果的にはヘルパーの潜む風下から迂回するようにして特定、発見咆哮に至りました。
こんな簡易な設定でも、この犬には大きな学習になったハズ・・・ です。
簡易な設定でも・・・ 学習できる
若い犬の場合、臭い溜まりや残留臭であっても「そこに人がいる」と思い込む傾向があります。
前記のように、最初の捜索を4BOXだけで行ったあとに、それ以外の場所にヘルパーを潜ませて捜索させることを行いました。
ただし、前記の場合と逆に、4BOXの風上側にヘルパーが潜んでいます。
案の定、先ほど隠れていたBOXの残留臭いに反応しました。
さらにこのとき、ヘルパーの隠れている↓から風下にあたるため、このBOX周辺にその臭いが断続的に降りかかったり、
箱の一部に臭い溜まりを形成していたかもしれません。
写真一番上のスタンプーは、黄色いBOXだと信じ込んで咆哮し続けましたが、ハンドラーは何の指示も出さずにじっと我慢。
そのうち、「???」と思ったのか、BOX群の風上に移動して「元の臭い」を感じましたが、「↓BOX」を通り過ぎその風上側の
パレット周辺を探りました(写真中)。しかし今度は臭いが薄くなって見失うことになります。
その後再び、臭いを追うために右へ向かいますが、その過程で「新しいヘルパーの臭い」を明確に感じ取り、探り、
つかむことができました。
そして、「ここだ!」と思ったかのように告知咆哮してくれました(写真下)。
こんな簡単な設定でも、「思い込み臭」→「???」→「探り直し」→「明確な臭い」→「確信咆哮」といった学習ができるようです。
ご褒美をもらえる「本当の居場所」を、犬に自ら考えさせ、経験させ、学習させていくのは私たちハンドラーの仕事です。
僕の出番は? …まだです
他の犬の捜索訓練を行っている間、チャンスには離れた傍らで見ていてもらうようにしています。
他の犬が捜索しているときに、ヒーヒー、ワンワン興奮する犬が多いのですが、私はそういうのが好きではありません。
イギリス国内の狩猟競技やその訓練をしている何頭ものゴールデンが、他の犬が作業している間じっと座って見ている映像を以前見て、
「これこそ理想の姿!」と思ったことがありました。
出番がくれば「ヤル!」けど、自分の出番以外は「お先にどうぞ~」、というのが捜索犬に求められる姿だと、私は考えています。
ということで・・・ チャンスは・・・ 出番までもう少しの我慢です。
捜索犬普段の訓練 091025 その1
基礎訓練の表情再び
基礎・基本的な訓練は、「さわり」だけでも毎回行うようにしています。
臭いを確かめるために、鼻をつけて「嗅ぎ取る」「吸い込む」ような動作をしたあと、自信をもって「咆哮」してくれれば Good!です。
若い犬の場合、勢いは良いのですが「勢い過ぎて」感じる臭いを逃がしてしまうこともあります。
それでも、探し求める意欲さえあれば、多少時間がかかっても「その元」を見出してくれます。
が・・・ 経験の浅い犬は、ちょっとした「何か」で思わぬ不安を抱き意欲が萎える・・・ということも。
そういう場合は「自信をつけさせる手立て」が必要になることもあります。
たかがタイヤ、されどタイヤ
タイヤが苦手な犬は、四肢の使い方が下手なこと・・・が 一番の原因です。
タイヤを抱きしめてどうするんだ~! そんなんじゃ動けないだろ~ にぃ
不安や怖さの主因はタイヤそのものではなく、四肢を支えるスタンスの狭さ、傾き、そして揺れ動く不安定さからきています。
不安定なものに対する強さと要領よい四肢の使い方ができれば・・・
あるいは、こんなところが「おもしろい」「楽しい」という意識につながれば・・・
どうということはないハズです。
たかがタイヤ なのですから・・・。
日本の秋でも、八重山諸島の秋は趣が異なります。
冬至に向かう太陽の傾き、北東寄りの風…
確かに秋めいてはきますが、亜熱帯の秋は秋とは言えないかもしれません。
そんな中、亜熱帯らしい自然の営みが続いています。
オレンジ色の蝶

吸蜜中のスジグロカバマダラ。秋の日差しに映えるオレンジ色の蝶です。

八重山諸島の花あるところ、あちらこちらに姿を現します。
太陽の光に透けるオレンジ色は・・・ まるで紅葉のようです。
Photo. 1992年11月1日 竹富島
メスだけオレンジ

吸蜜中のメスアカムラサキ♀ スジグロカバマダラに似た柄をしていますが、こちらはマダラチョウではないタテハチョウの仲間です。

なぜ似ているのか・・・ 蝶の天敵鳥にとって「不味い」スジグロカバマダラに似る(擬態する)ことで、鳥から身を守っている
というのが一般的な説ですが、生物の多様性の中の「物まね」能力には脱帽するしかありません。

花の奥にストローを挿しこんで・・・ 蜜を吸うのに夢中です。
メスアカムラサキ♀ Photo. 1992年11月2日 西表島南風見

メスアカムラサキの♂。 オスは白斑の周辺に紫色のの幻光を放つ「ムラサキ」の蝶。
同じ蝶には見えません。
故に・・・ メス赤・ムラサキ(♂)という名がついています。
メスアカムラサキ♂ Photo. 1992年11月2日 西表島大原
捜索犬普段の訓練 091018 その2
試験的な捜索訓練のあとは、犬と人との良い関係づくり&いろいろな足場慣れ訓練を行いました。
いい関係づくりは… 続く
不安定な足場慣らしも… 続く
タイヤが苦手な犬は、人が思っている以上に、不思議なほど「できない」ことが一般的です。
このような訓練は、ごく若いうちに「何のことはない!」ように慣らしておけば苦労しませんが、固まってきた犬たちにとっては「完全に慣らす」ことは難しいかもしれません。
探し求める「意欲」が苦手意識に勝てれば解決も可能ですが、やはり苦手意識の無い方が有利です。
うまく「吹っ切り」が生まれるように・・・ がんばろう!
水平梯子の移動も、慣れ親しんだ犬にとっては「不安」「怖さ」の対象ではありませんが、慣れていない犬にとっては
その不安、怖さを乗り切るための「欲」と「励み」が必要になります。
ペットボトルルームでは…
今回初めてペットボトルの足場を経験する3頭の犬たちの様子を観察しました。
臭いを求めて、ペットボトルの存在を全然気にせず奥に入ってアラートした1頭、臭いを感じて近づきたいが… 不安な足場に躊躇する2頭とに分かれました。
しかし、素直に奥に入れなかった2頭も、最終的にはペットボトルの海を渡って奥に潜むヘルパーに近づき「欲しいもの」をゲットすることができました。
もちろん、可能な限り自主的に!
捜索犬普段の訓練 091018 その1
10月18日の訓練は、近々基礎的な捜索犬の試験を受ける犬を対象にした訓練を行いました。そして訓練に訪れた皆さんにも同じ設定で試してみました。
では、その模様とアラートの様子を写真にて。
4つのBOXの中のどれかに潜んだヘルパーを特定する設定です。
臭いを感じ、出処を探り、鼻をつけて「特定」し、確信をもって咆哮告知(バークアラート)してくれればOKです。
Mダックスの反応と告知
告知動作にそれぞれ個性がありますが、明確に特定し、執着してくれれば問題ありません。
コーギーの反応と告知
捜索意識の途切れることのあったコーギー、この設定では無駄な動きを見せずに反応、告知してくれました。
ゴールデンの反応と告知
写真上のゴールデンは、初めての経験(設定)で少し躊躇がありました。しかし、慣れてくれば… できて当たり前のはず。
自信をつけるための積み重ねが大切です。
反応性が高いので、嗅ぎ取る慎重さで自信をつけていけば安定感が増します。
黄ラブの反応と告知
上の黄ラブ、足場に問題なければ安定感ある作業をしてくれます。
どんな足場環境でも不安感のない捜索&告知してくれるようになれば… Good!です。
捜索犬普段の訓練 091012 その5
チャンスのタイヤ Ⅰ
チャンスはタイヤに対する不安はもっていないので、タイヤ山の中のヘルパー捜索はすぐに終わるだろうと思っていました。
ところが・・・
タイヤ付近の臭いを感じて探ります。
風下のタイヤ付近を探り、このまま入っていくのだろう・・・ と見ていたら、視界から消えて右奥へ。
しばし、何をしているのかわからず、移動して見ると・・・ 奥の角材でつくられた壁様のところを登りはじめていました。
風の向きから臭いの風下になっていることは確かですが、予想外の近づき方に・・・ 「何もそこから」という思いです。
攀じ登る感じの垂壁に難儀していました。
臭いに素直なのか、思慮がなさすぎるのか・・・ いやいや「へんな犬」と思うのは人間サイドだけなのか・・・。
まぁ、ヘルパーの位置と構造の3次元的な理解をして観察する人間と、臭いを中心に行動を考える犬との間にはかなりの違いがあってもおかしくはありませんが・・・。
上に上がったは良いが、今度は、感じる臭いの元に近づけません。移動に必要な足場が「ない」のです。
感じる臭いの方に「いきたい!」気持ちは伝わってきますが・・・ こちらは、黙って見守るだけです。
行けそうで・・・ 行けない・・・ 何とかしたい・・・ 気持ちは分かります。 イラ鼻声も時々出して。
おいおい、そんなところから飛び降りるなよ・・・。
さあ、どうする!
自分で考えなさい。
捜索犬普段の訓練 091012 その4
タイヤの奥の臭い Ⅱ
次は、タイヤ経験のあるGシェパード。
タイヤの山は隙間だらけなので、どの犬もヘルパーの臭いを風下からすぐに感じ取ります。
が、近づかなければ、臭いの感じ方も「あいまい」なままです。
「怪しい」と感じてから、どのような行動をして、どのように近づき、特定するか・・・。
この犬の場合、タイヤの経験はありますが、まだ「苦手意識」をもっているようです。
自ら進んで登ることが求められますが、たじろいでいるときは何らかの刺激やフォローを要することもあります。
タイヤを移動することが苦手であっても、臭いの元に達すれば「欲しくて欲しくて」「我慢できない」ほどに反応してくれればしめたもの。
さらなる「苦手克服」「吹っ切り」訓練を行って、「当たり前」にできるようにすれば良いのです。
このゴールデンは現在「伸び盛り」。臭いを感じて「近づきたい!」意思はあるのですが・・・。
タイヤは初めて。誘い込んでみますが・・・ 後ろ脚の使い方がまだ下手なため「攀じ登る」「渡り歩く」という行動に移れません。
なんとか、かんとか・・・ とりあえずは、だまし、だまし・・・ 移動させて「少しの自信」を与えます。
濃い臭いの出処で、いいものをもらえて、褒められるのに・・・ まだ少し「不安感」が残っている様子。
しかしこの犬、なかなかの図太さを持っているので、「いい印象の方」で次につなげてくれそうです。
タイヤの奥の臭い Ⅰ
古タイヤの山の中に潜んだヘルパーを特定させることを試みました。

このスパンプーはタイヤ山捜索は初めてでしたが、臭いを感じて探り始めました。

しかし、素直に近づけず、どう「攻めて」よいのかわかりません。
「あれ?」「どうしよう?」といった感じです。

気になる臭いに・・・ なんとか近づきたいという気持ちはもっていますが・・・
タイヤ慣れしていない犬は、「その弱さ」で移動することができません。

今回は手助けをして、ヘルパーのいる場所に近づけさせてやりました。
まずは・・・ 褒めて、励まして、褒めて。
この設定では、こんなところ(タイヤ山)にも、臭いを求めて入れば「いいことがある」を教えてあげることですが、やってみて「タイヤに弱い」ことがはっきりしました。
タイヤ山歩行、移動・・・ できて当たり前を目指してもらいます。
捜索犬普段の訓練 091012 その2
私の出番はまだですか~。
指示に従って台と台の間を移動させます。手と腕の「大きな視符」を使いながら。
コマンドは・・・ いまのところ・・・ コイ、マエヘ、ノボレ、マテの組み合わせです。
アジリティなどをやっている場合は「テーブル」というコマンドで台の意識をもたせることもできます。
最終的には、手と腕で示した視符だけで「犬が指示を読み取る」ことが理想です。
姉さん犬を見ていた弟犬が・・・ 我慢できずにパレットを引きずってきてしまいました。 もしかして・・・ 橇犬かぃ?
では、やってみなさい。
華麗なる飛び込み! さて、この先、もう一つの台に移動できたのか・・・ 残念ながら写真がありません。
まずは、落着かせて・・・
それでも、楽しく、嬉しそうにやってくれる犬は、将来有望です。
相犬との別れ
訓練競技やドッグスポーツ、あるいは一緒に「何か」をやる犬の場合、私は愛犬とは呼ばずに「相犬(あいけん)」と呼んでいます。
私にとっての最初の相犬はビンゴでした。
それは、生活を共にし、「何かを一緒にやる」犬と人との関係が「相棒」そのものだからです。
捜索犬の場合は、犬と人のチームとしてとらえられますからまさに「相犬」と呼ぶにふさわしい存在です。
数日前、捜索犬関係者の相犬が急逝しました。
アメリカン・コッカスパニエルの雄、S君です。
死因は、ちょっとした・・・ しかし憎むべき 事故でした。
まだ若く、飼い主にとってはかけがえのない相棒だったはずです。
高齢で寿命をまっとうするようにして亡くなることも、辛く悲しいことですが、病気や事故で急逝するときは大きなショックと
自責の念にさいなまれます。
そんな居たたまれない心を癒してくれるものは時間しかないかも知れません。
しかし、新しい命や後輩犬との関係を深めることも病んだ心を癒してくれる「生」との絆です。
そしてそれは、亡くなった犬への恩返しや供養にもなる気がします。
S君の死の報をきき、それまでの写真を掘り出してみました。
それまでに過ごしたたくさんの時間、懐かしい過去が甦ってきます。
川崎にあった訓練場で(2005年3月)
三峰川で(2005年7月)
三峰川の流木帯で(2005年7月)
防災訓練にて(2007年9月)
しつけ教室のデモ(2009年1月)
S君のご冥福を祈ります。
捜索犬関係者と訓練などの付き合いが長くなれば当然のことに、その相犬たちとの別れにも出会うことになります。
そんな相犬たち・・・ ときには偲び、思い出の扉を開く機会をこれからもつくっていきたいと思います。
捜索犬普段の訓練 091012 その1
台風一過の訓練場で
10月12日に訪れた訓練場には台風18号の爪痕が・・・
ただ、BOXが転がったり、L字に組んだパレットや立てかけた木材が倒れていたくらいで、訓練用に作ったホッタテ小屋などは無事でした。
倒れた散った設備を元に戻し、少し伸びた草を刈り、簡易な捜索から・・・
Mシュナウザーの鳥のような吠え(鳴き)声に、「は~い、えらいゾ~、ご褒美だ」
次は、パレットの隙間に潜んで見つけられるのを待ちました。
黄ラブは一度足元から近づきましたが、その後裏に回ってやってきました。
ちょっと高い位置から不自然な格好をしての撮影です。
犬と人とのいい関係
捜索ばかりやっていては、犬と人との関係が緩みます。
より良い関係を目指して。
もちろん、日々の中でも機会をつくることが大切です。
つくり笑い、じゃないぞ~。
競技の場合は、形とカッコよさを競い合いますが、それは人間が考えた「理想の姿」。
本来「競い合いの世界ではない」捜索犬の場合は、「言うことをきく」「言うことに従う」ことが基本です。
とはいえ、カッコよく決めることを目指すのは・・・ 悪くはありません。
障害を越えて探る意識の強化
以前やったことのある「入りにくい建物」の捜索をまた行いました。

小屋の中からの臭いはすぐとらえますが、その行く手をさえぎる障害に対して苦手か得意かによって行動力に大きな差が出てしまいます。
今回の障害は以下のとおり。

障害をものともせず探し当てれば・・・ 嬉しい、楽しいご褒美が待っています。

たとえ障害物に対する苦手意識があっても、「行きたい」「近づきたい」という意識の方が強ければ・・・ なんとかなるでしょう。

「みつけた!」「はやく!、はやく!」
この程度の障害がクリアできなければ、犬の自主的な捜索は不可能になってしまいます。
常日頃から、立ちはだかる障害物を乗り越える意識、行動力を養っておく必要があります。
捜索犬普段の訓練 091004 その1
10月3日、久々の訓練場での訓練を行いました。
以前からもやっていましたが、まだまだ不十分な方向性を意識させるための基礎から・・・。
台(テーブル)等を利用した指示による移動は、視符(この場合手と腕による合図)と方向性の意味について犬に理解させるのに役立ちます。
方向性を意識させた捜索
瓦礫山をほぼ直線的に登らせて、その先に潜んだヘルパーを探させる簡易な設定の捜索を行いました。
犬を出すのは、チャンスのいる位置よりもずっと後ろからです。
待機させた2頭の犬たちを先に行ったあと、そのハンドラーの1人に隠れてもらいました。
指示した方向(瓦礫山)に向かってチャンスが行きます。
慣れている場、ということもあり、また先ほど見ていて意識がついているので・・・
できて当たり前かも知れませんが、余計な動作はありませんでした。
潜んだヘルパーの臭いを特定して・・・ 吠え続けます。
もう一度、近くの別の場所に隠れてもらい、同様のことを行いました。
自分の頭で考えさせる「ちょっと凝った」設定も大切ですが、基本的な動作を強化するための訓練も忘れてはなりません。
瓦礫現場訓練再び その3
初級犬の瓦礫慣れ
初級犬といっても、簡易な捜索ができる犬もいれば、物心付きはじめたばかりの犬もいます。
しかし、どの犬にとっても「本格的な瓦礫」環境の中で初歩的な呼び込みやランナウエイ的な訓練を行うことができれば、
将来的に瓦礫慣れした、場慣れした作業(足場や環境に躊躇しない)につなげることができるはずです。
「まだまだ初歩だから」「まだ何もできないから」と避ける必要はありません。
山でも、藪でも、岩場でも、そして瓦礫的なものであっても、あらゆる場に慣れ親しんでおくことは、捜索犬としての作業の負担を結果的に軽減することになります。
ということで・・・
まずは探す意識のついた初級犬から
基本的な捜索のできるトイプードル。ここでは普段接していないヘルパーと新しい瓦礫の中での初歩的な作業を行いました。
悪い足場も気にすることなく、ハンドラーが思っている以上の捜索作業をこなしてくれるように見えます。
捜索欲、行動力ともに、初歩犬の域を脱していました。心配するハンドラーを横目に捜索中の高い穴から顔を出しました。
さすがに・・・ ちょっと危険。
危険回避のために、室内(内側)から呼び寄せて、まずは事なきを・・・。
生後4ヵ月の幼犬も
まだ「何をしているの理解できない」4ヶ月の黒ラブも、楽しい遊びの延長から「捜索ための一歩」が始まります。
階段の入り口付近にいるヘルパーの呼び寄せで元気よく突進。
さらに上の段に移動したヘルパーをめがけて・・・ とは行きそうでいけませんでした。
まだ直線的な記憶しかないようです。臭いで探すことや、臭いのとらえ方などは、まだまだこれから先です。
それでも成長期の子犬の学習は早く、ちょっとしたキッカケで捜索のイロハをどんどん吸収していきそうです。
逃げるヘルパーを追います。
追いついて「あ~見つけられちゃった!」 そして最後はたっぷりほめて、ほめて、そしてまた、ほめて・・・。
瓦礫の足場をもろともせず、行けば良いことがある、ご褒美もらえてほめられる・・・
「なにがなんだかわからない」けれど、とりあえずはそれでよいのです。
実は、こんな単純な作業でも、その中にはより賢い脚使い、危険回避など多くの身体的学習が含まれています。
この子(犬)はきっと、「現場に強い」捜索犬にごくごく自然に育って行くことでしょう。
瓦礫現場訓練再び END
瓦礫現場訓練再び その2
下の写真は、別の位置から見た今回の現場模様です。
作業の模様
今回の訓練は、個々の犬の作業状態を見ることもありましたが、全体的には普段の訓練で行わない複数犬チームによる捜索内容の吟味でした。
したがって、個々の犬の状態をじっくり見ることができませんでしたが、その様子のごく一部を・・・。
微妙な臭いの分散、移動のあるエリアでは、なかなか思ったようにいかない場面は必ず出てきます。
より良い作業に向けての訓練に終わりはありません。
基本強化訓練模様
チーム的な訓練のあと、まだ瓦礫経験の浅い犬の強化訓練を行いました。
最初は簡易な意識付け後の単純捜索です。
見た目に単純でも、目より鼻を使うようになった犬は、逆に思ったような動きよりも、臭いの流線のような中で探し移動する場合があります。
このようなときは、見守るのが一番です。
階段下の臭いをなかなかつかめず、探し回り、ようやく下からの臭いを見出した様子。
いろいろな場を経験しながら、確実に成長を重ねていきます。
瓦礫現場訓練再び その1
去る9月27日、鉄筋コンクリート住宅の解体除去工事現場を使った訓練に参加する機会を得ました。
本日の瓦礫現場の様子。住居全体の長さは約50m、捜索訓練として使える前後の奥行きは15~20m弱でしょうか。
チャンスの作業
視界から消えてしばらく探す音しか聞こえない状態が続きます。
その後、咆哮(告知)が聞こえてきました。しかし、中の確認ができない設定のため、どのような状況で吠えているのかわかりません・・・。
右横の堆積瓦礫での作業(捜索~発見咆哮)のあと、まだ確認していないエリアに向かわせます。
右上の臭いを感じていたのを観察し、さらに右方向の周辺を確認させようとしましたが・・・。
構造的に身動きのとれない状況になってしまいます。
久しぶりに行った新鮮な現場での完全ブラインド捜索でしたが、良い点悪い点が浮き彫りにできたことを含め、とても良い体験的な訓練になりました。
雪崩事故を防ぐための講習会 募集開始!
「雪崩れる危険がある」との認識は持っていても、登山者やスキーヤー自身の考えの中に「自分は何年も雪山を経験しているのでよく知っている」、「ここは今まで起こったことがないから安全」等々の「過去の経験」にこだわったり、「××なので雪崩は起こらない」といった誤った知識や理由付けで判断したり、周囲の状況を見ずに「皆が通っているから」と同じトレースを歩んだり、「雪崩が怖くて登れるか」などの根拠のない心理的な判断で行動してしまう例が実はとても多いのです。
これらの問題を正面からとらえ、雪崩の危険を回避するために雪崩講習会を受けましょう。
雪崩事故という現実に直面し、悲惨な「死」を招かないよう…
多くの雪山愛好者に受講してほしいと願っています。
2008年及び2009年の講習会の様子 →「雪と雪崩と気象」関連当ブログ
主催は日本勤労者山岳連盟 中央登山学校ですが、所属の有無に関係なく、また山岳会に入っていなくても、さらに雪崩等の雪山捜索を考えている捜索犬関係者でも、あるいは一般のスキーヤーやスノーボーダーの方も、雪山に入ろうとする全ての方に基本クラスは解放されています。
本頁の案内とは別に、来年1~2月に「地方講習会」があります。「とりあえず」という方は、地方講習会を受けてみることもできます。
全国講習会、地方講習会など、以下宛お気軽にお問合せください。
日本勤労者山岳連盟事務局 フリーダイヤル 0120-44-2742 または、TEL 03-3260-6331 へ!
ラストチャンス !? 湘南近くの訓練場で その9
自分で考えなさい Ⅲ
円筒柱頂からの臭いと思いこみ、しつこくその出処を探っていたチャンスも、右の鉄棚の方からやってくる臭いを感じ、確認に行きました。
しかし、鉄棚周辺の臭いは「いまいちはっきりしない」様子。もうちょっとの移動、あるいは「ひらめき」があれば確信につながったのでしょうが、
「やっぱりあっちだ!」と思うかのように、円筒柱の元に戻りました。
ここまでの行動で、戻ったところの「円筒柱付近の臭い」は、かなりこもっていても全体薄かったり、飛来する臭いの濃さが薄いと考えられます。
距離があるほど分散、拡散していくことを考えれば・・・。
そして、今嗅いできた「鉄棚付近の臭い」の方が断片的でも、もう少し明確で濃い臭いだったでしょう。
「あれ?」 戻って嗅ぎなおしてみても・・・ いまいち不明確な・・・
そして・・・ まさに というようなヒラメキがチャンスに訪れた(かどうかはわかりませんが)かもしれません。
「やっぱり、さっきのところだ!」のような気持ち(あくまで推測!)で、鉄棚を再チェック。
もう、疑う余地なく「確かな臭い」「濃い臭い」「新しい臭い」を感じ取り、その出処を探り始めました。
や~、長い時間の探し物(者)でした。 このエリアに入って探し初めて、発見に至るまで18分を要しました。
この間、エリア全体に向けた方向指示以外は何もしませんでした。
自分で迷い、自分で確かめ、そして自分で考え、見つけ出すための捜索学習の訓練でしたが・・・。
もっと早く ヒラメいてくれよ~
最後はたっぷり遊んでもらい・・・ 「やった~」「やった~」と嬉しそうに戻ってきました。
臭いに迷ったとき、どう行動してよいか迷っているとき、ついつい余計な指示をしてしまうのがハンドラー。
先に記したように、ハンドラーの指示で動いて探し、見つけて「よかった!」と思っても、それが実は犬のためになっていない場合が多いのです。
実際の現場に必要なのは、「犬が考え」「犬が判断して」「犬が見つけ出す」ことに尽きるからです。
そのためにも、普段から犬に任せて、犬に考えさせて、本当の意味で「犬が学習できる」捜索訓練が必要です。
もちろん、犬の嗅覚作業を妨げず、現場で必要な指示を否定するものではありません。
ところで、発臭源から離れた場所の臭い溜まりで、チャンスが今回と似た動作のあったことがあります。→捜索行動と臭いの流れ、訓練キャンプ三峰川
これを見ると、チャンスの学習能力は・・・ 「ん~ン、やっぱ、まだちょっと・・・」でしょうか。
今回、犬に嬉しい捜索訓練場を提供頂き、さらにハンドラーの意識向上に貢献くださった救助犬KのOさん、Kさん、Tさんに感謝!
湘南近くの訓練場で END
ラストチャンス !? 湘南近くの訓練場で その8
自分で考えなさい Ⅱ
「臭う」臭いを探し続けますが・・・ どうもはっきりつかめません。
円筒柱周辺を気にし始めました。
たしかに・・・ 「臭う」臭いがこのあたりに・・・ 「たくさんあるように」感じている様子です。
チャンスにとっては「怪しい!」と感じて、元の臭いを探ろうとしています・・・ が。
怪しい円筒頂きから「新しい」「濃い」臭いは出てきません。
先ほど隠れていた人の残留臭や付着臭を感じてはいるでしょうが、新たに~「飛来」~「飛来」~「飛来」・・・するような臭いは出てきません。
「感じている臭い」とも違う・・・ といったことを思っているのでしょう・・・ か?
左鉄棚の上から → → → → 右円筒柱付近に流れ、集まった臭いを、チャンスは円筒柱からの臭いだと・・・ まだ思っています。
「おかしい!?」「なぜ?」「なぜ?」 といった感じが伝わってきます。
数回、苛立つ感じで吠えることがありましたが無視。
ハンドラーの私は相変わらず何の指示もせず、だまって写真を撮るだけ。
チャンス自身の頭で考えさせます。
ようやく・・・
流れてくる臭いの方向に気づいたのか、円筒柱の場所から降りて左の鉄棚付近を探りはじめました。
写真を見ると、このまま臭いの出処を見出しそうに見えますが・・・
まだ、「ここだ!」「この上だ!」という行動には至りませんでした。
「あれ?」「おかしいなぁ」・・・ 「いや、ちがう」、「あれ、やっぱり向こうかぁ?」・・・ そんなチャンスの気持ちが伝わってくるようです。
そして・・・ 再び、円筒柱に向かいました。
(つづく)
ラストチャンス !? 湘南近くの訓練場で その7
自分で考えなさい Ⅰ
目で探せば「簡単」な設定でも、鼻で探すには「頭を使わなければ」なかなか探せない状況が多くあります。
一見簡単そうにみえて、犬にはとても「勉強になる」設定のラストとしてチャンスにやらせてみました。
訓練その4(高い筒の上からの臭い)で、Gシェパードが資材棚の上に上がっていましたが、今度はそこにヘルパーが潜みました。
このときの風向きは、円筒柱からの臭いをシェパードが感じたときの流れ(右から左方向)とは逆で、左から右に流れていました。
イメージ的には写真上のような感じでしょうか。 (→風の流れ、 →臭いの移動)
捜索エリアのずっと手前からチャンスを出します・・・ が。
案の定、まだ前方意識が弱かったので、何度か出し直し、ようやく捜索してほしいエリアに。
鉄パイプ付近で左から流れ落ちてくる臭いを感じてるようですが・・・ どこからくるのか、探し回ります。
流れてくる鉄棚の方へ行き、一度その下で臭いをとらえましたが・・・。
すぐ上に意識が行くかと見えましたが、臭いの分散、移動は見た目ほど単純ではなかったようで、再び右側エリアに移動して探し始めました。
無風~微風ならすぐ下に落ちる臭いも多いのですが、風のあるときは右に向かって「流れ飛ぶ」臭いの方がより強かったと思われます。
写真上のチャンスはヘルパーを見い出しているかのように見えますが、実は全く見えていません。
この場合「鼻だけが生きていて」、チャンスの頭の中に視覚的思考や想像的思考は存在していないようです。
円筒柱周辺から流れてくるような臭い、あるいはその周辺に漂う臭いに翻弄されながら・・・
臭いの元を探し続けました
ハンドラーとしての私は一切指示を出さず(勘違いされる動きにも注意して)、ただじっと観察し続けるだけです。
(つづく)
高い筒の上からの臭い Ⅳ 小型犬でも
小型犬のイメージから、一見無理そうに見えてしまう今回のような高い円筒頂からの臭い。
しかし、訓練を積んだ小型犬は高い位置からの臭いを感知し特定することができます。

かなり多くの場を経験している写真上のMダックスは、円筒頂から流れてくる臭いをまじめに追い続け、
周辺の臭いと上方からの臭いから、流れてくる臭いの方向を見出しました。
悪い足場の移動は大型犬に及びませんが、臭いを探し求める行動力はなかなかのものです。

円筒柱の頂から降り注ぐ臭いを特定して咆哮し続けます。
残念ながら、小型犬の場合はここまで表現するのやっとです。
ポイントを絞込み難い現場では、ハンドラーの読み取り技術に左右されてしまうかも知れません。

前頁の大型犬と同じように円筒頂からの臭いを見出し、咆哮を始めた別のMダックス。
上から注ぐ臭いを理解し、積極的に「発臭源(の方向)に近づきたい」という行動を強化できれば、
大型犬と同じように、反応してくれます。

臭いを感じても、その臭いが上から注いでいることをまだ十分理解できていない犬には、
臭いヘルパーが自ら近づいて「上からの臭いを意識させる」ことも必要です。
上からの臭いを理解させ、積極的にその臭いに向かって「近づきたい」という意識を育てます。
別のコンテナで

このGシェパードは、ハンドラーの指示を求めやすい「親離れ」不十分犬の一人(?)でした。
そこで、作業中にハンドラーを思い浮かべないよう、より魅力的なモイベーションに変えて「良い思い」を新たに体験させてやりました。

それが功を奏し、今まで以上にハンドラーを気にせず探り続け、発見後も強い執着性をもって咆哮しつづけてくれたようです。
この犬にとっては「これが一番」好き、「これを見たら目がない」といったモチベーションも、実は「それ以上」に好きで「持続的な好物」のある場合があります。
犬を訓練する上で、そのどちらを使うか、利用するかによって上達速度、学習速度が大きく変わる可能性があります。
うまく行かないとき、なかなか上達しないとき、その原因、その理由の一つとして考えてみる必要がありそうです。
高い筒の上からの臭い Ⅲ
犬が「かなりの作業」をすることを、なかなか信じられないハンドラーもいます。
傍から見ていて「よくやっている」と感じても、ハンドラーには「不安」「不十分」と自信を持てない場合があるようです。
先入観による「決め付け」や、どこからでてくるのか?不思議な「過信」は困りものですが・・・
逆に「不安感」や「不信感」を持っていると、犬の積極的な行動を抑えたり、学習の機会を妨げてしまう場合もあります。
いずれにしても「冷静な観察」をしながら、その行動が「良いのか」「悪いのか」を見抜き、その犬にとって一番良い指示を与えることができれば、
「良い行動」「良い学習」の強化につなげることができます。
いつの場合においても、より良い捜索行動につながるように、ハンドラー自身が学習し、身につけていくことが求められています。

この黄ラブは、まじめに探すタイプの犬で、ハンドラーの不安に関係なくかなりのこと(?)をやってくれます。
そのため・・・ 不安感をもつハンドラーとの間で「チグハグ」なやりとりをすることがあります。
それでも、捜索経験を積んできた犬は、ハンドラーのもつ弱さをもカバーしてくれることさえあります。

捜索意欲は強いのですが、足場に対する不安を乗り切るまでには及びません。
足場の不安を「気にしない」くらいの意欲にするか、不安を生じさせない自信を身につけさせるか・・・
いずれにしてもどちらかをクリアできないと、「特定」動作にあいまいさが残ります。

この黄ラブは、円筒頂きを目指して明確に咆哮していますが、捜索中に探すべき臭いを「追い続け」「探り出す」行動よりも早く、
感じた嗅覚で漠然と反応してしまう場が多く見受けられます。
この犬はやや高齢のためあまり無理をさせることはできませんが、「知恵を働かせて近づけば達成できる」ことをわからせてあげます。
多くの場合、ちょっとした「踏ん切り」と「その気」が生まれば「できる」のですから・・・。
それぞれの犬の「持ち味」を生かしながら、基本的な嗅覚作業の強化を繰り返し「嗅ぎ取ろう」とする意欲と行動をを強化し、
それらが「自然に」「当たり前に」できるようになれば、捜索犬の作業の大部分はできあがります。
湘南近くの訓練場で その4
高い筒の上からの臭い Ⅱ
下の写真は何をしているところでしょうか?
このGシェパードは探す臭いを追って自らスチール棚の上に登りました。
しかし、そこには目的のより強い臭いの元がありません。臭いを断片的に感じてはいても「特定できる」ものは見出せません。
上の写真のように、「?」のあとハンドラーに指示を仰ぐ犬の姿はよく目にするものです。
このとき、ハンドラーが臭いの元の位置を知っていたり、怪しいと思い込んでいたりする位置があると「安易に」
それを犬に指示してしまう場合が一般的です。
今回、それを全く行いませんでした。犬はハンドラーからのシグナルを待ち続けますが無視し続けます。
この「根比べ」はかなり長く続きました。
犬は指示を待つ間、自分で探す、自分で考えるという思考が停止してしまっているようです。
そこにハンドラーが指示をして動き探したとしても、それは犬が自ら探し当てたことにはなりません。
というわけで、長~い時間のあと、指示ではない別の刺激(音の刺激、呼気の飛来など)で犬が動き出すようにし、探すべき臭いを追い続ける
ようにさせました。
上の写真はヘルパーとにらめっこしているわけではありません。
ヘルパーから出された臭いを強く感じ取っているところです。
濃い臭いの来る位置に向かって吠えますが、まだ少し遠く、このままでは「何ももらえません」。
そこで、何とかしようと(これが大事)・・・ 感じ取った臭いの元へ近づこうとします。
最終的には、それ以上近づけないところまで行って吠え続けてくれました。
犬が自ら考えて、行動し、目的の探し物をさせること。
犬自身による学習の積み重ねが欠かせません。
ところが、多くの場合、ハンドラーや指導する立場の人が「犬に指示を与え」て結果を出させてしまいます。
そして・・・ 「見つけてくれた!」「よかった!」と安心、勘違いしてしまうことが多いのです。
犬とハンドラーとの間の「親離れ」「子離れ」は、信頼される捜索犬の作業を目指す上で重要です。
湘南近くの訓練場で その2
チャンスの円筒柱捜索
野外でこれほど顕著な円筒柱(塔状)捜索は、チャンスも初めての体験です。
しかし、形状とは別に高い位置からの臭いをとらえる経験はしているので、問題は臭いが周囲の物体で
どのように分散したり、溜まったりして、チャンスがそれをどのように感じて行動するかに興味がありました。
しかし、その問題以前に別の問題がありました。
探したいと出した方向のその先で「漂う臭いをとらえてほしい」と出しましたが、その先に行く前の私の周辺から探す動作となり、
周囲の余計な臭い(見学者が発する臭い)に惑わされ、円筒柱からの臭いをとらることができません。
「探すべき臭い」と「関係のない臭い」がしばらくの間区別できずに、無駄な捜索行動で時間を費やしてしまいました。
何回目かの方向指示で、「探すべき臭い」のある方向に移動し、それを感じ、本来の捜索へと移行できたようです。
チャンスは「探すべき臭い」を感じとった後は、写真円筒柱とコンテナの間周辺を探り、最終的に円筒右下の側面からの臭いと
その上方からの臭いに反応、確信をもって咆哮し始めました。
最後はもちろん・・・ たっぷりの麻布引張りっこ。
続いて皆さんも
それぞれの犬がどのように反応し、特定していくか興味津々です。
まずは、経験豊富な黒ラブから。
この黒ラブは安定した意欲と行動性のすぐれた犬ですが、やはりチャンスと同じように周辺捜索から入ったために、
円筒柱からの臭いをとらえるまで時間を要してしまいました。
しかし臭いをとらえてからは特定までさほど時間を要しませんでした。
ところで・・・ 「一度発見咆哮したところを犬が捜索の対象と思わなくなる」という思いがハンドラーにありました。
そこで、もう一度同じ設定のまま捜索させてみることに。
ただし、「モチベーション」を変えて。
結果は、同じ繰り返しの作業でも、しっかりと特定し、しっかりと吠え続けてくれました。
もちろん! 嬉しそうに、意欲的に。
捜索中における犬の行動が「何によるものか」「何故そうなっているのか」を的確に理解しなければ
より良い捜索への改善は果たせません。
多くの場合、ハンドラーやアドバイスする立場の人が犬のマイナス行動を「仕方ない」と甘受していたり、
「誤った」理屈で変に納得してしまったり・・・。
あるいは、そのマイナス行動を強化してしまっていることさえあります。
犬の思考と行動に対する冷静で的確な読みと判断が我々ハンドラーに求められています。
湘南近くの訓練場で その2
高い筒の上からの臭い
訓練場の中にコンクリートの円筒を積んだ煙突状の筒があります。
その中にヘルパーが隠れたとき、犬はどのように臭いをとらえ、特定してくれるのか・・・。
ヘルパーの臭いの多くは、円筒の上から煙突の煙のように出て(しかし、熱い煙ではないので上に上昇するわけではなく)こぼれ落ち、
あるいは周辺の気流にのって分散、拡散しています。
その臭いがどのように流れたり、溜まったりするかをイメージしながら、同時に犬の行動からその臭いの動きを見出し、そして犬がどう「拾い」、
どう「辿り」、探し出そうとするかを観察します。
よく訓練されたスプリンガー・スパニエルは、黙々と臭いを探し、発臭源を円筒周辺に絞り込んで
周辺を探り、積み重ねてつくられた円筒の隙間からの臭いを特定し、円筒右下で上に向かってアラートしました。
円筒の隙間からの臭いは鼻を近づけることで特定されますが、同時に円筒頂から落ちてくるより多くの臭いも感じとっているはずです。
犬はその両方の臭いから「上方を確信して」反応しているように見えました。
その確信が間違いないことを、ヘルパーが最終的に教えことになります。
それが、褒め言葉のシャワーとご褒美の投下です。
上のジャーマン・シェパードは、円筒周辺で明確な臭いを感じ取り、気流の関係で右下に移動しました。
しかし、円筒右には扉の開いたコンテナがあり、臭いの一部はその中に入り込み、また円筒とコンテナの間に臭いの溜まりができているようです。
気になる臭いがどこからくるのか、新しく降り注ぐ、あるいは流れてくる臭いがどこからやってくるのか・・・
そんな行動をしたあと「気づいた」様子で、右に回り、たくさんの臭いがやってくる円筒頂に向かって上り始めました。
ある高さまで至れば、円筒頂からふんだんに出ている臭い近づくことができ、それはさらなる「確信」に変わります。
確信を得れば・・・ あとは、吠えるだけ!
この犬は、コンテナからの臭いなのか、そうでないのかを確認したあと、円筒頂から来る臭いを感じ取り、
円筒頂に近付くように登りました。
先ほどのシェパードと同じように確信を得て吠え続けます。
そして最後に・・・ 賞賛のシャワーとご褒美の麻袋で十分な達成感を与えてやりました。
これらの訓練は、臭いの流れと犬の行動を理解するとともに、
犬が体験しながら「頭も使う」ように学習させ、いろいろな状況下で犬が自ら判断し、気づき、行動し、特定していけるようにするのに役立ちます。