2月13日 空の様子
講習会2日目の13日、宝剣千畳敷は未明から晴天で昼過ぎまでよい天気になりました。
しかし、伊那谷は雲海(低い層積雲)にべったり覆われ、その後も雲は消えることなく、午後はムクムクと盛り上がってきていました。
そして午後2時頃から雲に覆わ、東風に乗って吹雪くような雪が降るようになり、寒い中での野外講習になりました。
この日の地上天気図は

午前9時は北高型ですが、ゆるく高気圧に覆われている感じで、多分中央アルプス以北の標高の高い山は晴れていたのではないでしょうか(確認はできてませんが)。
そして午前中、伊那谷を覆う雲海は北高型のときに現れる「上層好天の雲海型」だったようです。
午後3時の地上天気図を見ても、午前中とあまり変ってはいません。
しかし、実際の天気は大違いでした。
地上天気図だけを見ても「違い」はわかりません。
違いは・・・ やはり高層(上層)の寒気です。

午前9時の高層天気図(700hp:約3000m上空)の寒気の様子をみると、中部山岳地帯は -12℃前後ですが、午後9時では -15℃前後になっています。
午後のビーコン講習で、午前中の好天とは打って変わって寒風と雪に見舞われた頃、上空の寒気の谷間が通過し始めていたようです。
ホテルで観測された午後3時(15時)の気温は -12.6℃ですが、翌日(14日)朝9時の観測時(-11.1℃)の最高最低温度計が示していた最低気温は -16.3℃です。
高層天気図の示す寒気の谷が、午後9時から夜半にかけて通過したことと一致します。
そして、千畳敷では、北高型由来の東~北東(伊那谷方向)からの風が吹いていました(13日~14日)。
しかし、宝剣山頂、稜線付近では高層の風、すなわち西方向からの風が卓越しているはずです。
寒気の接近で大気の状態が不安定になり、伊那谷から登り上げてきた湿った空気が雪雲をつくり・・・
2月13日の午後、宝剣千畳敷の悪天はその結果だったようです。
野外講習からホテルに戻り、午後の各クラス合同のビーコン講習に備えます。
昼過ぎからガスが湧き出すようになっていましたが、午後2時を過ぎてからの野外は完全に曇り空&ガスに覆われました。
そして雪が舞い始めました。

ホテル北側の斜面を下った雪原に全員集合。


ごく初歩の人を除き、全員に基本捜索訓練を試行。
その後、初歩グループ、シングルアンテナグループ、デュアルアンテナグループ、トリプルアンテナグループに分かれて
深さ1mほどに埋めた発信ビーコンの捜索訓練を行ないました。
2~3箇所の複数捜索では、最新のトリプルが威力を発揮しますが、その的確な操作方法を知っていなければ「宝の持ち腐れ」だけでなく、
探せる遭難者も探せなくなります。
まずは、自分の持っているビーコンで速やかで確実な捜索ができること・・・
それが一番です。
午後の4時近くまで訓練を行ないましたが、東寄りの風に吹雪くような厳しい状況。予定より少し早めに切り上げました。
この日、15時の気温(ホテル記録)は -12.6℃でした。
2日目の夜
2日目の夜の机上講習は「過去の雪崩事故と雪崩が発生するまでの気象」についてです。
全ての雪崩は、気象(降雪、気温変化等々)によるお膳立てが揃ってはじめて発生するものです。
その一部であっても、入山するまでにつかんで(危険予測して)いれば、そして現場で積雪の安定・不安定具合を確認し、
地勢、植生を把握しながら的確なルート判断、行動判断を行なえば・・・
雪崩事故に遭わずに済むはずです。
自分たちが 今どんな場所にいるのか・・・
事前の気象データから得られる積雪のイメージを重ね合わせながら・・・
「ヤバイ」「危険!」という意識を、早め早めに!

机上講習の前後、今日の野外講習の結果をレポートにまとめてもらいます。
担当講師とのやりとりで・・・ 悩み(?)も解決!
やっとこ・・・ レポートを提出したら・・・。
もちろん! 今宵も懇親会。

しかし・・・ 明日の朝も早いのに・・・ タフな人が多い!
講習会2日目終了!
講習会を行なっていた午前中、宝剣岳千畳敷周辺には雲ひとつありませんでした。

太陽が次第に高度を上げ、宝剣岳を中心とする山稜や山肌の表情は時間と共に変化していきます。

積雪断面観察を行なったところよりも、新雪層(ほとんど風成雪です)の厚いところに移動して再度円柱テストを行ないました。
とは言っても、新雪層の下は硬い「雨後の雪」。 掘り出し作業が大変なことには変わりがありません。

ようやく! 円柱テストらしい結果が・・・
硬い下部積雪層の上の、固まり(スラブ化)始めた新雪層・・・ ヤバイじゃん!
ただ・・・ 新雪層の厚さは数cm~ とくに厚く吹き溜まっているところで10~15cm止まり。
剥がれ具合も・・・ 安定傾向でした。
もちろんこの条件でも多量の降雪があれば危険です。

水分とエネルギーを補給。
この頃から時折、稜線付近に雲が湧くようになってきました。(12時25分)
雪形!?
千畳敷の中に雪形を発見。

宝剣稜線の途中からのびる岩稜の一部ですが・・・ 日影も含んで何かの顔に見えませんか?
人の顔にも、熊の顔にも・・・ 犬の顔にも・・・ 見えてしまいます。
太陽による光と影の悪戯がないと、ここまでイメージできないかも知れません。 ラッキー!
午後の予定が迫ってきたので、そろそろ帰り支度。
先ほど掘ったピットを利用して、スクラムジャンプテストを行なうことにしました。
しかし・・・

積雪全体が丈夫すぎて・・・ イメージ通りにできません。
薄い新雪層の下は滑りやすく硬い氷のような雪面。
通常よりも切り込む幅を狭めて、やり方と崩れ方を見せようとしますが・・・。

こんな感じで、思いっきり荷重をかけても崩れませんでした。
何度か試して、最後は一部崩れましたが・・・。

12時40分、和合山基部での野外講習を終えて千畳敷ホテルに向いました。
伊那谷の低層雲はボリュームを増し、雲頂も上がってきていました。
千畳敷周辺にも雲が発生しはじめていました。
全国雪崩講習会 11
日差しの影響を受けない斜面に沿った断面を観察しました。 伊那谷方面は雲が多い状態が続いています(9時28分)。
顕著な氷板(厚さ10mmを超える中に空気の泡が閉じ込められたものも)が何層か見られました。
大きな山斜面の下部ということもあり、上部から伝わり供給される雨水が多いせいでしょうか。
同じエリアであっても、ちょっとした窪みや植生で積雪層内部の様子(氷板のつくられ方や雨水の濁りによる着色など)も違っていました。
積雪の様子は、昨日観察したもの(場所、状況ともに異なりますが)と同様のパターンで・・・
しまり雪やこしまり雪、あられなどといった通常観察しうる雪は雨によってことごとく消されてしまった感じです。
ということは、気象と雪の履歴も消されてしまったわけで・・・ 残念!
上は雪温の様子です。 (注)簡易な温度計のため誤差を含んでします。
深さ20~160cmくらいまで雨による影響が残っていました。 表層部は昨日からの気温低下と放射冷却の影響で温度が下がってきています。
表層部は、30cmで約7℃の温度差。 なんと! 約 23℃/mです。
こんな状態ならば・・・
表層部(風成雪の新雪層が 5~10cm)に霜ざらめ雪がどんどん成長していってもおかしくはないと思うのですが、
雨の影響を受けた下層があちこち氷化していて、通気性は悪そうで・・・。
どうなんでしょうか・・・
継続的に観察をしてみないとわかりませんが・・・ 叶いません。
さて次は
円柱テストをしっかりできるように・・・ という訓練なのですが・・・。
なにしろ硬くて、丈夫で! ピッケルを使ってもなかなか円柱が掘り出せません。
安全監視員が見守る中で、講習は続きます。
ここでまたシュミレーション訓練を・・・。
50mの巻尺を使って・・・
50m幅の雪崩とはどれだけのものか・・・ そしてそれが上から襲ってきたら・・・
そんなイメージを抱きながら・・・ ダッシュ!
雪上の50mは・・・ かなりのものです。
雪崩れる可能性のある広い斜面の雪面にいるときは・・・
常に逃げ道を意識して、危険を速やかに察知し、万一に備えられるよう・・・
出来るにこしたことはありません。
全国雪崩講習会 9
晴天に恵まれた二日目の講習会。
今日の午前中は千畳敷内、和合山基部での野外講習です。
出発の前は準備体操。しっかりストレッチ。
ホテル北側の斜面から和合山斜面の基部に向います。
雨のあとの低温で表層部が固化した雪の上にうっすら新雪(風成雪を含む)が覆っているような雪面は、滑りやすく歩きにくい状態です。
途中、風が強く積雪深が浅く潅木が顔を出しているエリアに立ち寄り、豊富な水蒸気と大きな温度差で大きく成長している霜ざらめ雪を観察。
伊那谷の雲海はなかなか消えず、上層好天の雲海型のようです。(8時13分)
千畳敷の一部を横切るに当たっては、雪崩の危険性がない状態であっても回避できるルートを考えます。
和合山基部に向います。
正面は、和合山(左方上)から伊那前山に続く尾根斜面です。
千畳敷の中から見る千畳敷ホテル。正面のピークはサギダルの頭。
例年雪庇の観察を行なっている場所は、サギダルの頭からホテルに向って延びている稜線下部、潅木が集まっているところの右上です。
宝剣岳を左正面に仰ぎながら、目的地に近づきます。
天気が良いときは・・・
やっぱり・・・
気持ちいい!
晴天の早朝観察
講習会2日目の13日の朝は晴天に恵まれました。
ということは・・・
朝5時過ぎに起きて・・・ 野外に出る服装、装備を身につけ・・・
まだ暗い星空の中、6時前に外に出ました。
気温は-12℃ほどで、風がややあって雪面は気温より 2℃ほど低い状態した。

まだ薄暗く・・・ ライトをつけて、雪面にできた霜(表面霜)や積雪内部にできている「霜ざらめ雪」を観察します。
風があり、湿度も高くないようで・・・
観察できる表面霜はわずかでしたが、雪面直下の固い層の下に小さな霜ざらめ雪ができていました。

東の空はまだ多くの雲に覆われていましたが、6時47分頃南アルプス方向の中層雲から太陽が顔を出しました。
ここ千畳敷は晴れわたっていますが、伊那谷は雲海に覆われています。 下界では「曇り」のままです。
7時前に観察を終えて、暖かいホテルに戻って朝食。
8時から再び野外に出ます。
晴天絶景の中での野外講習・・・ つづきはまた。
講習会初日(12日)の天気
雨の夜を過ぎて、曇り&ガス、そして雪になった12日の天気はどのような空模様だったのでしょう・・・

南岸低気圧が東に去っても12日の気圧配置は北高型のままで、関東~中部は北~北東風が入りすっきりしません。
低気圧が去って冬型になれば、日本海側の山は日本海からの雪雲の影響を受けますが、私たちのいる宝剣周辺ではあまり影響を受けずに
晴れ間が期待できます。もちろん、上空寒気がさほどでない限り・・・。

宝剣頂上付近の 700hP(約3000m付近)の天気図をみても、あまり強い寒気はきていません。
初日野外講習時に降っていた雪は、日本海生まれの雲直撃でなく、北東から流れてきた(そのもとは日本海?)気流によるもののようです。
千畳敷ホテル外の記録は、午前9時(東の風・弱、-6.0℃、曇り)、午後3時(北東の風・弱、-8.7℃、小雪)でした。
12日午後の積雪の様子
講習会初日の野12日午後、千畳敷ホテルからすぐ近くの雪の断面を観察(前頁写真)しましたが、雪の内部の温度分布は下図のようになっていました。

雪面から 10cm~150cmまでは 0℃近くの「非常に温かい氷点下」で濡れ雪に近い状態です。 (注)雪温値は簡易な条件での測定のため誤差を含んでいます)
昨夜までの雨と滲みこんだ雨水の影響を受けた部分と考えられます。
表層は外気温(-8.4℃)の影響を受けて冷えつつあることがわかります。
180cmよりも深いところでは雨の影響を受けていない、雨が降る前の雪温を保っている様子がうかがえます。
積雪断面を観察することで、気温の変化や雨の影響で、積雪内部の状態が変化していくことが分かります。
そしてまた大雨の影響がなければ、過去の「気象と雪の履歴」を知ることができます。
不安定な雪、安定な雪、不安定な層、安定な層などを目で見、肌で感じ、その成り立ちを推理し、切っても切り離せない
気象との関係を考え、知る場になります。
ビーコン基本のキ
講習会初日の野外講習最後は、ビーコンの使用法、基本的な電波(磁気)特性を知ってもらう場がつくられました。

発信ビーコンを置いて、アンテナの方向と磁力線の方向、そして受信ビーコンの反応などを体験します。
夜も・・・

初日の夜は、事前学習課題の答え合わせ、雪と氷の世界とその変化・・・ いろいろ考え、理解するための机上講習。
そして・・・ 野外講習で観察した記録や弱層テストの結果などをレポートにまとめて も ら い ま す。

ショベルコンプレッションテストで「どのくらいの力」で叩いているのか・・・
叩く力を数値(g)で確認できる「秘密兵器」が昨年の講習会から登場。
やっと書き上げたレポートのあとは・・・
もちろん! 飲んで歓談、懇親会です。
2月12日 講習会初日
講習会初日の朝は 憎っくき雨は止みましたが、曇り空。 ガスも薄くなったり濃くなったり・・・。
朝一番のロープウェイで上がってきた受講生の皆さんが揃う9時半から開校式が行なわれ、その後は各クラスにわかれて講習会が始まります。
私たち中級クラスの受講生は7人。 午前中は室内でミーティング。
身支度を整え、早めの昼食をとってから野外講習へ向います。

外へ出る前にビーコンのチェック法を確認します。

行動前に・・・ まずは準備体操。 雪が舞い始めていました。

雪の状態を知るために、積雪内部の様子を知るために・・ 掘ります!
雪をしっかり「掘り出す」技、それはとても大事なことです。
なぜならば、埋没者の位置を見つけることができても、スピーディーなショベリングができなければ・・・
助けられる命も・・・ 助けられません。
掘りながら、深さによって異なる雪の感触、硬さも感じてもらいます。
だがしかし・・・ 昨日までの雨の影響と今日になってからの気温低下で雪面近くはどんどん固くなり始めていました。
深部には幾層もの氷の層が形成され、掘り出す時間も体力も普段の倍以上かかってしまいました。

最深部2mのピットを目指して・・・ 掘り出しが続きます。

ようやく掘り出したピットで、現在の積雪がどのような状態になっているかを調べます。
表面近くは冷えてきた外気で温度も下がっていましたが、その下から深さ 1.5mくらいまで 0℃に近いマイナス(高温)になっていました。
昨夜までの雨の影響を受けていると思われる部分です。
さらにその下は低い雪温が保てれていました。

積雪層内の細かい様子は、色水を吹きかけるとよくわかります。
途中には幾筋もの氷層(一部氷板)がつくられていました。 その様子は「硬さ」からもわかります。
積雪内部の様子を観察したあと、積雪の安定・不安定をみる弱層テストに移りました。

講習中、上部からの雪崩やブロック等の危険を監視するため、安全対策員が見張りをしてくれました。

雪面から下 1.5mくらいまで、雨の影響で高い雪温と高い密度で「重く硬く」、通常行なう弱層テストがままなりません。
スノーソウとシャベルを使う、シャベルコンプレッションテストの四角柱を掘り出すのも一苦労。
ごく表面の新雪を除いて、全体「丈夫」「安定」した雪質で・・・ 弱層判断の訓練は・・・ できません。
まずは、きちんと、正確に四角柱をつくり・・・ そしてやり方を練習します。
せっかくなので・・・
「雪崩だ~!」「逃げろ~~!」
という訓練も行いました。
もちろん! その場その場における「逃げるべき方向」を意識しておいてもらいます。
全国雪崩講習会 4
講習会の準備で、11日に雪庇の掘り出しとロープのフィックスどを行ないましたが、ベトベトの雪~ミゾレぎみの天気に悩まされました。
頭の中には北高型気圧配置の中、低気圧が東進してくるイメージがあったので、少しは寒気を引き寄せて雪になってくれるのでは・・・ と
多少の期待はしていましたが・・・ 裏切られました。
2月11日9時の空の様子
昨日に引き続き、上空に寒気は入っていませんでした。
山で雪を降らすような寒気が上空にありません。 3000m近い宝剣岳付近の気温はかろうじて氷点下、せいぜい -3℃まで。
標高1500m付近は、プラスの気温。 地上でも雪になるような場所は北陸東部以北です。 地上天気図だけを見れば・・・ 山は雪になりそうに思えますが・・・。
そして、夕方から夜にかけて、千畳敷では完全な雨となり、風もけっこう強く吹きました。
この日の千畳敷ホテル周辺の気温は、最高気温 1.9℃、最低気温 -0.3℃、 午前9時:+0.3℃、午後3時:+1.4℃という記録です。
2月11日夜9時の空の様子
低気圧が通過して東へ去るまで、強い風と雨が続きました。
低気圧の中心が中央アルプスの南方を通過する午後9時頃でも、上空は暖かいまま。 雨が降り続きます。
暖かいまま! 南岸低気圧が東進していきました。
現地で 0℃前後、上空も暖気(3000m付近で 0℃~-3℃、5500m付近でも -14℃前後)では・・・
雪になりません。
講習会を前に・・・ 雪質観察に恨めしい! 雨 です。
全国雪崩講習会 3
講習会準備
10日朝、雨はやんでいました。
駐車場からバスでしらび平へ上がり、駒ケ岳ロープウェイで千畳敷へ。
標高 2,640mの9時の気温は、+0.3℃。 昨日も 0℃前後で 雨!
千畳敷ホテルで一休みしたあと、明日からの講習会に備えて「雪庇掘り」に向いました。
天気は曇りでガスの多い状態ですが、そこそこの視界です。
サギダルの頭東稜下部の雪庇観察地点まで登り上げます。
雪庇掘りや観察時の安全確保のためにフィックスロープを設置します。
風が強くなり、時折アラレ混じりのベタ雪が顔面を叩きます。
雪庇掘り開始。
千畳敷における今年の降雪量(多い)から、その発達具合に興味がありましたが、見た目の大きさはさほどのものではありませんでした。
しかし、吹き溜まり部位の厚さは斜面下方まで・・・ かなりあるようです。
例年と同様に、2箇所を切り込むように掘り出しました。
雪庇掘りで風下の雪の中に入ると風が遮られて楽ですが・・・ 稜線上は・・・ キツイです。
フィックスロープ等点検し、宿に戻りました。
濡れ雪(たとえ氷点下であっても、氷の融点に近い雪はまるで水を含んでいるかのようにベタッとして
濡れているように感じる場合もあります)で、ウエアも手袋もスパッツも・・・ べちょべちょ状態。
そして、午後から夜にかけて風雨が強まり・・・
そう、またも! 雪でなくミゾレでもなく「 ほとんど雨 」状態。
明日からの講習に 「ふさわしくない積雪」に どんどん変化しているとを思うと・・・ 腹立たしい限りです。
いったい、この日の空は・・・ 「どうなっていたの?」でしょうか・・・。
その具合は 次に・・・。
全国雪崩講習会 2
講習会場の雪の様子
講習会場である宝剣岳千畳敷の気温や積雪の状態は、中央アルプス千畳敷ホテル前の観測データからその様子を知ることができます。
その結果、例年よりも積雪の多いことがわかり、雪崩講習の会場として期待していました。
日本海からの雪雲の影響を直接的に受けにくい場所のため、冬型による降雪は以前お伝えした今シーズンの雪模様とは少し違いますが、
強い寒気を伴った冬型に対応した積雪の増加も見られました。
ところが・・・
講習会前々日の10日夜、中央道から現地へ向ったのですが、甲府でも、塩尻でも、雨は途中から雪に変わることもなく・・・
ザーザー降り。
「雪になるような気圧配置」なのに 何故?
10日の地上天気図は北に高気圧、南に全線上を東進する低気圧という「北高型」とよばれる気圧配置になっていました。
こんなときの関東地方は冷たい北東流が入り雨から雪になりやすい・・・ 北に行けば行くほど雨よりも雪になりやすい・・・ ハズ。
しかし・・・ 中央道の標高の高いところでも雨、そして12日の未明着いた麓の駒ヶ根でも雨!。
またも!上空まで暖かい
中央アルプス山麓の駒ヶ根でも雪でなく雨でしたが、上の方(会場)では雪になっていて欲しい・・・
と願ってはみたものの・・・。
その後、標高 2,600m以上もある千畳敷でもず~と 雨! ということをあとで知ることになりました。
その結果を 当日の天気図資料で調べてみました。
なんと・・・
中央アルプス(▲)上空 3,000mあたりまで 0℃の暖かさ!
地上で雪になる目安の上空 1,500m付近で-6℃という気温は北陸よりも北です。
上空に「寒気」がない限り、「寒気」がやってこない限り・・・
雪になってはくれません。
全国雪崩講習会 1
2月11日から14日まで、例年行なわれている雪崩講習会のため中央アルプス宝剣岳千畳敷に滞在してきました。
講習会場千畳敷の一角から見るサギダルの頭。
講習会場は雲上、雪の世界。
積雪の様子を知るために、雪面を掘り起こす作業開始・・・。
行動中行う 弱層テストへ・・・。
雪崩による埋没者捜索の基礎トレーニング。
詳しくはこの後に。
冬の沖縄でコノハチョウの姿を写真に収めましたが、もともとは沖縄に特化したカラスアゲハの変種である
オキナワカラスアゲハを撮るために冬の名護にやってきました。
しかし、なかなか出会えず、しかも写真に収めるとなると吸蜜に訪れるときしかチャンスはありません。
あちこち歩き回り、ホウセンカの仲間の花のあるところで待ち伏せたり・・・
そしてようやく・・・

Photo. 1993年2月13日 名護市真喜屋林道
しかし、それはモンキアゲハでした。
さらに頑張って・・・
ようやくオキナワカラスアゲハの姿を写真に収めることができました。

Photo. 1993年2月13日 名護市真喜屋林道
何枚も撮影して、ピンが合って「さまになる」写真はこの1枚のみ。
この当時、吸蜜を狙っての撮影はまだ始めたばかり。
懐かしい、沖縄の冬の自然の中の出来事でした。
ただ・・・
コノハチョウやオキナワカラスアゲハを撮影した名護市の真喜屋林道沿いの現場には現在ダムができ、周辺の樹林は崩され、
自然は追いやられ、人工的な公園ができ当時の面影はありません。
冬の沖縄 コノハチョウ その2
枝先の葉の上に止まっているコノハチョウはときどきタテハチョウらしく翅を広げることがあります。
そんなときがシャッターチャンスなのですが、翅の表を写真に収めるためには「上から目線」でないとうまくいきません。
撮影現場に都合のよい脚立などはありようがなく、少しでも高くといろいろ探して、気休め程度の足場を築き、不安定な状態でひたすらカメラを
向けてチャンスを狙います。
そして、なんとか・・・
撮れたのが上の写真です。
オレンジと黒の地に青い光を放つ美しいデザインなのですが、その全体像をとらえることができません。
やはり高さが足りません。
もっと下に降りてきてくれれば・・・
自然の営みの中の出来事に「注文」や「やらせ」は通じません。
とはいえ、自然に溶け込む「擬態」名人に会え、その一部を写真に収められたのは幸運でした。
最後は、周辺の葉っぱと一緒になったコノハチョウの姿を
順光の中の「枯葉」も、逆光では区別のしようがありません。
とにかく「見事」なまでに、葉っぱになりきっています。
お見事!
昨日から雪崩講習会の準備を兼ねて中央アルプス宝剣千畳敷に入っています。
その様子はまた後日アップしますが、しばし予約投稿にてアーカイブフォトを・・・。
今からもう 17年も前になりますが、沖縄名護市まで蝶の写真を撮りに行きました。
それも、本州では冬たけなわのちょうど今頃。
沖縄も冬ですが亜熱帯の冬。動植物が眠り込むような厳しさはありません。
春~秋に比べれば少ないですが、おとなしく活動している生き物たちもたくさんいます。
このときは初めてコノハチョウに出会い、その姿を写真に収めることができました。

見てのとおり!
木の葉そのものに、身体と脚が生えたような・・・ 蝶です。
懸命に接近しようとしますが「足場」がどうにもならず、100mmの望遠マクロで必死に撮影を繰り返すだけでした。
順光では「木の葉」そのものですが、逆光になると・・・

カラフルな色が透けて見えます。 Photo. 1993年2月14日 名護市真喜屋林道
この表の柄を写真に収めたい・・・ と思うのですが、こちらの高さが足りません。
さて・・・ 困った。
(つづく)
谷川岳の北西に位置する湯沢(E地点)と南東に位置する水上(F地点)での気温と雪の様子は・・・

湯沢も基本的には、強い寒気の伴った冬型のときに雪がたくさん降り積雪を増しています。
そして気温が高めになれば、積雪は減ります。
一般的には「解けて減る」と思われがちですが、雨や暖気に長くさらされて融雪しているとき以外は「圧密」「焼結」という
雪質の変化で「しまって」嵩が減っていきます。

今シーズンの水上の積雪はかなり多いことがわかります。
谷川山系を越えて群馬県の月夜野~沼田まで雪を降らす雲がやってくるのは、かなり強い寒気が覆っているときです。
こんなときの谷川岳周辺では・・・ 相当量の雪に見舞われているはずです。
周辺のスキー場の積雪を調べてみるのも山の雪の様子を知るために役立ちます。
さて、長野県のさらに南部、御嶽山いに近い開田高原(G地点)ではどんな様子でしょうか。

積雪のスケールを2倍(360cm→180cm)にしてあるため、他のグラフと比べるときは注意が必要ですが
傾向はつかめます。
開田高原の観測地は標高1130mあり、冬型の気圧配置による積雪もありますが、日本海からの雪雲の影響が弱められた位置にあるせいで
他にくらべると明確なピークが少ないようです。
スケールを他の地点と同じにするとよりなだらかになってしまいます。
開田高原より、より東に位置する中央アルプスや南アルプス周辺では冬型による積雪はぐっと減ってしまいます。
これらの山々では、冬型による降雪より低気圧性による降雪の方が勝ってくるようです。
今シーズンの雪模様 END
今シーズンの雪模様 その3
昨日今日と強い寒気と西高東低の冬型で日本海側で大雪に見舞われていますが、今シーズンの雪の様子の続きを
6日(土曜)までの気象庁発表資料をもとに、中部北陸の地図のA~G地点での気温と雪の様子をまとめました。
白山に近いA地点(白川)もこのところの雪で急激に積雪を増したので、あらためて以下に
3日から気温も下がり急激に積雪が増えています。
その東側、B地点(神岡)では
神岡でも同じ傾向ですが、白川と比較するとだいぶん少なめです。
C地点は、北アルプス北部白馬~唐松岳の東側(日本海からやってくる雪雲の山越え風下側)の白馬。
ドカ雪にはなりませんがそれなりに降り積もっています。
しかし、少し北東の妙高山近くの豪雪地帯D地点(関山)では・・・
日本海からやってくる雪雲が直接ぶつかる山域のせいもあって、強い冬型のときはかなりの雪が降り積もっています。
ここに示されている雪の様子は、あくまでも山の雪の状態ではありません。
しかし、山での雪の傾向はつかめます。 基本的には、観測地点に近い山で雪雲がぶつかるところでは、これ以上の雪が降り、積もっていることは確かでしょう。
さて、ニュースにもなっていた群馬県北部の山々はどんな様子でしょうか。
それはまた次回に。
今シーズンの雪模様 その2
今シーズン中部北陸の各地点(前頁)の雪模様をアップしようと思っていましたが、強い寒気と冬型で日本海側で大雪になっているのを
黙って見過ごすわけにはいかず・・・。
気になるその様子を見てみました。
今日の天気図(2月6日9時)は
誰が見ても西高東低の強い冬型になっています。 (気象庁資料より)
しかし、大陸の高気圧はいまいち「弱く」次の「気圧の谷」が見てとれます。
これだけ見ても・・・ ニュースの映像に出てくる雪の具合がつかめません。
やはり、上空寒気の様子をみないと、現在の豪雪模様を「なるほど」と納得することはできません。
では、その上空がどのようになっているか・・・ 低山と同じような高さの約1500m上空の様子、高山と同じような高さの約3000m上空の様子、
そして、富士山より1700mほど上空 5500m付近の様子を高層天気図(北海道放送提供資料より)から見てみましょう。
上空の天気図は見慣れないとなじめませんが、上空の気圧配置と気温の状態が記されています。
私たちが普段テレビの気象番組で伝えられる「上空の寒気」模様は、この高層の気温を示しています。
富士山よりずっと高いところには、-30℃近い寒気が南下していて、北にいくほど強い寒気が入っていることがわかります。
北海道上空は、-42℃以下の一級の寒気で覆われています。
標高 3000m級の中部山岳地帯付近は、-18~-24℃の寒気で覆われています。
そして、標高 1500m付近の気温は、日本全土 -6℃以下になっています。これは、降ればどこでも雪になる状態の気温です。
これだけ冷えた上空の気温・・・
西高東低がゆえに、シベリア高気圧生まれの空気が日本にやってくれば・・・
当然日本海でしっかり「雲が湧き」、陸地(特に山間部)にぶつかって・・・ さらに↑↑↑すれば・・・
大雪になって当たり前。
そんな様子は、テレビの気象情報で必ず映し出されますが
こんな見事な「筋状の雲」が気象衛星の画像(2月6日15時)に表れています。 (気象庁資料より)
この雲が発達している下はもちろんですが、陸地にぶつかる場所では多量の雪が降っています。
その様子は、気象庁のナウキャストという降雨(降雪)情報から見ることができます。
6日15時の東北から中部北陸周辺での降水(降雪)の様子です。
雲の様子と、実際の降雪の状態が裏づけされたような感じです。
白山、北アルプス北部、谷川岳周辺はかなりの降雪に見舞われていそうです。
谷川岳南東の水上を含め、群馬県北部平野部まで雪が降っている様子がみられます。
こうした視覚的な資料をイメージして、そのときの気圧配置や上空の気温変化、各地の気温と降雪や積雪の変化を見れば、山の雪の様子を
推測しイメージすることができるはず・・・ です。
ただ・・・
来週は、やたらに春めいて・・・ 気温は高めの予想。
昨年の講習会初日のような「季節外れの天気」にならないことを祈るばかりです。
(つづく)
今シーズンの雪模様 その1
新潟の大雪の模様がニュースで伝えられています。
今シーズンの雪はどんな感じで降り、積もっているのでしょう。
来週11日から入る中央登山学校全国雪崩講習会のために、各地の雪の情報を集めています。
しかし、残念ながら・・・
山の雪の観測情報は・・・ は無いに等しいのが現状です。
全国雪崩講習会会場の情報は別にあるのですが、北アルプスやその他の雪山で直接観測されているような恵まれた場所はありません。
そこで 1
山に比較的近い観測点(気象庁アメダス)での情報を調べることを行ないます。
しかし・・・ 山の中にあるアメダス観測点は冬季休止であったり、積雪情報のないところがいっぱい・・・。
そこで 2
積雪情報のある地点を探し、しかも「傾向」の読めそうな「比較的山に近い」地点を探ってみます。
中部地方の地図をつぎはぎして、そこに積雪情報のあるいくつかのアメダス観測点(○)重ねてみました。
Aは岐阜県白川、白山の近くです。 Bは、岐阜県神岡、北アルプス南部からみて西側にあたります。
Cは長野県白馬、北アルプス北部の東側です。 Dは新潟県関山、妙高山のすぐ東。
Eは新潟県湯沢、谷川岳のすぐ北西側。 Fは谷川岳南東に位置する水上。
Gは長野県開田高原、御嶽山の北東です。
さて、まずはAの白川の様子を見てみましょう。
昨年12月1日から今年2月4日までの気温、降水量、積雪をグラフにしてみました(数値データは気象庁アメダスより)。
かなりの雪の量ですが、その傾向の一部は以前アップした面発生雪崩に注意の白馬のグラフ(12月下旬~1月上旬)にも見られます。
各地点でそれぞれ雪の量(降水量)や積雪の違いはありますが、形としてのパターンは共通している点が多くあります。
他の地点の様子はまたこのあとに。
捜索犬普段の訓練 3週間ぶりに その4
連結ドラム缶からの臭い捜索続きです。
まだ経験の浅いトイプードル、臭いを感じて探していますが、気流のいたずらで右斜面上から臭いが来ていると思い込んで(写真上段)、何度も探る行動をしていました。
しかし、上に移動すると臭いは薄れ、途切れてしまいます。
探し続ける意欲がある限り・・・ 自分で動きながら「考えて」もらいます。
何度か動いているうちに、より強く感じる臭いをとらえ、その出どころを探り、到達しました。 この経験が次に生きてきます。
このMダックスは、非常に活発に動くので(多少のムダはありますが)、臭いの出どころを早くに見出すことができました。
意欲と行動力の高さは、早い発見に結びつきます。
写真上段は経験の浅いゴールデン。 探し出そうとする意欲は強いのですが、経験のないドラム缶に少し腰が引けています。
それでも、意欲さえ持続すれば「なんだ~」「ここか~」といった感じで新しい体験を自信の一つにしていきます。
写真下段は、別のゴールデン。
ドラム缶内ヘルパーを発見、咆哮してご褒美をもらって帰ってくる姿。 嬉しそうですね。
ベテラン黒ラブ。 ハンドラーを意識させずに、ヘルパー執着を強化させる基礎訓練として行ないました。
ヘルパー役の皆さんは・・・
どうしても・・・ 「汚れ役」になってしまいます。
しかし、隠れ役(ヘルパー)をやることで、各犬の行動がよくわかり、勉強になります。
もちろん、それを活かせるか・・・ は、ハンドラー自身の問題ですが・・・。
捜索犬普段の訓練 3週間ぶりに END
捜索犬普段の訓練 3週間ぶりに その3
この日は、チャンスを含めて5頭のゴールデンが参加しました。
以下にその様子を・・・
犬によって、反応の仕方、クセの違いなどがあります。
写真上2枚の犬は、それぞれ別の犬(姉妹)です。
チャンスです。 囲いが「甘い」と中に入り込んでしまうので・・・ この犬には「頑丈さ」が必要です。
あらたに構築した連結ドラム缶の隠れ場で・・・
経験の浅い犬は、「いつもと違う構造物」は、「いつもと違う人」と同じように警戒することがあります。
どんな場合でも・・・ 「やることは同じ」を知ってもらい、
そして「やればいいことあり」を実感、次への自信につなげてもらいます。
(つづく)
捜索訓練中の若い犬に多く見られる共通なことがあります。
その一つが、「慣れ親しんでいない人」「初めての人」「経験したことのない年齢の人」などに対して
素直に吠えられないということです。
そういう意味でも、できるだけ「多くの」「色々な」人に対して、吠えれば「いいことがある」ことを学習させることが大切です。

このゴールデンにとって初めての人に隠れてもらい、吠えると「ご褒美」がもらえる体験を積んでもらいました。
ほんのちょっとした「こと」なのですが・・・ その「ほんのちょっと」が・・・
ごく当たり前にできるようにしてもらいます。

このトイプードルも、「ほんのちょっとした」ことで吠えられなくなることがあります。
どんな人でも、どんなときでも・・・
「ここにいる!」とわかったら、吠えずにはいられない・・・ そういう犬になってもらいます。

こちらのゴールデンは、まだ始めたばかり。 「吠えること」を自分で制御してしまって、吠えられません。
探そうとする意識は十分あるので、「な~んだ、吠えればいいんじゃん」と気づいてくれれば・・・
「らしく」なれるのですが・・・。
次は、今まであった隠れ場所を一工夫して、そこにヘルパーが潜みました。
臭いは十分に出ていて、経験ある犬には「いとも簡単」な設定ですが・・・。

遠くから臭いをとらえて、すんなり「発見!」咆哮してくれれば、何も言うことはありません。

しかし、訓練中に他に気が行ってしまったり、ヘルパーとは違う他の臭いに誘惑されたりする犬も中には出てきます。
余計なことに気を取られず、臭いを素直に追い、強い臭いポイントで反応、確信をもったら咆哮・・・
と、なるよう・・・
犬に合わせた訓練を繰り返し、「夢中」にさせること・・・
基本を忘れずに・・・。
(つづく)