前に 二人だけの捜索とその記憶の様子をビデオ記録でお伝えしましたが、今日1月31日はその捜索からちょうど4年目になるという日なので・・・。
その続きを再びアップします。
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撮影(捜索)の場所は

C地点からD地点付近です。
ここから780mピークのある尾根に向かって行きますが、その取り付き前での様子です。
先般 いつもとは別の訓練場を拝借して、BOX捜索の基礎的な訓練を行いました。

同じようなBOXであっても、環境が違えば新鮮な訓練になります。

実は、これだけたくさんのBOXがあると、鼻だけで探す犬にとっては意外と迷わされます(鼻を使っている犬にとって我々のように目で見て探す感覚は
ほとんど無いかのようです)。
とくに風が強いと、臭いの断片があちこちにぶつかり、密集BOX地帯は室内の中のような状態。
BOXに鼻をつけて探し出そうとする意識が犬にないと、特定しにくい場面がよく見られます。

臭いの出どころがわかっても、足場が悪いと吠え始めるまで時間のかかることがよくあります。
不安定な足場でも吠えられるような強化も必要です。

ガシャガシャ、ふわふわしたところでも・・・。
若い犬、これからの犬たちの訓練も時間を見ては続けています。
「探すこと」が「楽しく、面白く」を基本としながら、犬本来の動物としての捜索本能を目覚めさせる場は・・・
やはり草地などの平地で「鼻を使わせる」ことが一番です。
今回は多摩川の河川敷の一角、枯れススキならぬ枯れアシを使って、浮遊する臭いから「出どころ」を見つけ出させました。

見~つけた!

見つけて告知(咆哮)がしっかりできる犬にとって、私の撮る写真など気にもなりません。
しかし・・・
犬のことが苦手な遭難者はもちろん、そうでない場合も、このように吠え立てられたら・・・
多分、きっと
襲われる感覚になって・・・
かなり怖い思いをしてしまうのではないでしょうか。
「私はあなたを探しに来て吠えているのです!」と わからせる工夫も必要ですね。
1月16日の天気は強い冬型。

※ 気象庁天気図より
本州部分だけでも6本の縦縞模様(等圧線)です。
雲の様子を気象庁HPの衛星画像から調べてみました。
9時のものと12時のものとの様子はほとんど変わりがないので、可視画像でも見やすい12時のものをチェックしてみます。

16日12時の赤外画像。 西高東低の冬型の気圧配置と上空寒気の流入で発達する典型的な筋状の雲にあふれています。
本州の山間部で雲がやたらに白くなっていますが・・・

可視画像では顕著になっていません。
赤外画像の白さは、上空の薄い雲(低温)によるもののようです。
日本海から次第に発達し、ボリュームを増しながら本州(日本海側)にぶつかってきている様子がよくわかります。
上空の寒気の様子
筋状の雲は上空の寒気の強さにともなって発達します。
上空の様子は高層天気図に示されています。
「地上でも降れば雪になる」とテレビの気象情報で解説される上空の寒気「マイナス6℃」とは、約1500m上空のの気温のことを指していますが・・・。

16日午前9時の850hPa(上空約1500m付近)の天気図を見ると、日本列島はその-6℃以下の寒気にすっぽりと覆われていました。
こんなときは、雪の降らない太平洋側を含め、冷蔵庫の中のように冷え込みます。
15日に登った田尻尾根と天神尾根の分岐あたり(雪庇観察)がちょうど標高1500mほどのところです。
16日は -12℃近い気温になっていました。
さらにその上、上空約3000mの様子は

本州全体 -18℃以下の寒気に覆われ、近畿~中部にかけては-24℃以下にまで下がっています。
中部山岳の3000m級の山々で雲のかかっているところは大荒れになっていると思われます。
衛星画像からも、中央、南アルプスまでも、そして八ヶ岳あたりも強い寒気による雪雲がかかっているように見えます。
さらに上空、約5500m付近の寒気の様子を伺えば・・・

大雪を降らせる目安といわれる「-36℃以下の寒気」が本州中部付近まで下がっています。

地上天気図(西高東低の冬型)に上空の寒気の様子を記入してみると、筋状の雲が発達する具合との関係がよりわかるかと思います。
それにしても、この1月は、西高東低の気圧配置、上空の寒気、日本海付近に現れる小さな低気圧(クセモノ)など、
今までになく教科書に書かれたような「典型的な冬」が続いています。
積もった雪が旧雪となじみ、安定化するまで時間(日数)がかかります。
これだけ冬型、低温が続き、降雪量が増え続けていることを考えると、これから先に起こり得る「面発生表層雪崩」の危険性は高まるばかり・・・。
雪山に入る方は、要所要所での弱層テスト判断とより安全なルートを選びながら、雪崩を引き起こさないよう、他者の起こした雪崩に
巻き込まれないよう・・・
願っています。
2011 関東ブロック雪崩講習会 END
雪崩講習会2日目の初めは、捜索救助のデモンストレーションからです。
この5年間、捜索デモにチャンスがいたのですが、今回はビーコン捜索のみになりました。

まずは穴を掘って・・・ 雪崩遭難者役に埋まってもらいます。

受講生に遭難から捜索に至る流れを見てもらいました。
いつもチャンスのハンドラーとして参加していた私は、今回説明役です。

正しいプロービングの練習も。
昨晩からの降雪と、強風の当たる具合の良い所が近くにあって、ちょっとした雪庇が出来上がっていました。

宿から直ぐのところとは・・・ 思えない雰囲気。

雪庇が崩れる様子を体現してもらいました。
雪庇の構造に沿って崩壊します。
2011 関東ブロック雪崩講習会(つづく)
15日の講習は現地(天神平)ロープウェイ駅に16時、という予定でしたが、天気の悪化具合と下山予定がピッタリと合いました。

天神平ロープウェイ駅前にて輪かんを外します(15:43)。
まだ吹雪くというほどのものではありませんでしたが、小雪が降る状態、山の上部は完全にガスって雲の中です。

下りのゴンドラにて。
犬のいないゴンドラは・・・ あまりにも静か・・・。
この夜は本格的な降雪があり・・・

土合周辺では新雪が 30cmほど積もりました。

雪降りしきる朝の雪かき。
車の後部に、ケージとチャンスの姿は・・・
ありません。
2011 関東ブロック雪崩講習会(つづく)
15日の天気の動き
1月15日から16日にかけてこの冬一番の寒気がやってきて大雪になる・・・ という情報は何日か前から伝えられていました。
冬山に入る人は当然その情報を知っていなければなりません。
15日の晴天は昔からよく言われている「擬似好天」の一つです。
もし、この情報を知らず、天気図も見ていない中で行動を起こせば(早くに下るという判断をせず)、確実に「足止め(行動不能)」を食らうか
雪崩に遭遇して遭難事故につながる、まさに荒天前の好天でした。
地上天気図だけでは、今後強まる冬型と吹雪はなかなか読み取れません。

15日の朝9時と午後3時の天気図。
午前中の本州付近は冬型が緩んで、日本海からの雪雲がやってこない状態でした。
しかし、午後には、日本海に小さな低気圧が生まれ、東に移動。これにともなって雪雲もやってくるような状態。
上空寒気の詳しい情報が簡単に得られない昔でも、「このような小さな低気圧が日本海付近に生まれたあとは冬型が一気に強まって、
山は大荒れになる」ということがよく言われていました。
なぜ、そうなるのか。
上空の気圧の谷と寒気の動きがその理由です。
今の天気予報(気象情報)では、「寒気が南下して冬型が強まる」ということを事前に提供してくれるので、そのことを頭に入れておけば
安全な行動につなげることが十分可能です。
西から近づく寒気に注意
15日朝9時の上空の様子は高層天気図を見ないとわかりません。

上空の様子と今後の動きを考えれば、15日夜~16日と日本付近は強い寒気に覆われ、冬型が強まり、日本海側で大雪になるであろうことがわかります。
地上天気図と上空寒気の状態を一緒にすると・・・

第一級の寒気(-42℃以下)の塊(範囲)が半端ではありません。
大雪をもたらす目安の上空(5500m付近)の-30℃の範囲も・・・。
地上天気図だけを見ても、こんなに強い寒気、こんなに顕著な気圧の谷(上空)が近づいてくることなど、分かりようがありません。
上空の気圧の谷の接近と付随する寒気とともにやってくる冬の荒天(山の場合は雪)の予想は、天気情報や週間予報などでも伝えられます。
「寒気」の動きやその程度を早くから知って、対応することが重要です。
2011 関東ブロック雪崩講習会(つづく)
※天気図資料は気象庁発表による
天気の具合と時間を考えて、天神尾根の雪庇観察を行うことにしました。

田尻尾根最後の急登を天神尾根に向かいます。

なかなかの眺め。

けっこう急です。
天神尾根と田尻尾根合流付近は広い尾根上なので、雪庇といっても「吹き溜まり」の一部としての状態です。

雪庇断面の様子を見るために、掘ります、掘ります。

観察、観察。

小出俣山~俎(マナイタグラ)~谷川岳(15日 13:22頃の様子)。
これから荒天になるなどとは思えぬような視界と展望ですが・・・
谷川岳稜線の向こう側(新潟側)から再び雲の一部が湧き上がってきていました。
2011 関東ブロック雪崩講習会(つづく)
積雪内部の様子を調べたあとにひと休み。

冬山での暖かいお茶は・・・ 気持ちも身体もほんわりします。
次は・・・
先ほど掘った断面を利用して、プロービングでの「人当たり」の感触を知ってもらいます。

当たり具合やその他の感触も。

埋没体験もしてもらいました。
たいした雪の量ではありませんが、身体を動かせない「重さ」や「圧力」を実感します。
実体験を終えて稜線に戻ってみれば・・・

すっかり晴れ渡った谷川岳の姿。
荒天間近の束の間の晴天です。
写真を撮るもの今のうち。

はい、撮りま~す。

今日の講習会は・・・
まだ終わりではありません。
2011 関東ブロック雪崩講習会(つづく)
今年もまた「雪崩事故を防ぐための講習会」関東ブロック雪崩講習(15~16日)に行ってきました。
3年続けた入笠会場から、久々に谷川岳へ会場を移しました。
この5年間、いつも一緒だったチャンス(雪崩講習会とチャンス)がいないのが寂い限りです。
15日から16日にかけてこの冬一番という寒気が襲来、冬型の気圧配置が強まり大雪になるという予想の中でした。
が・・・ 講習会初日の15日、朝方少し降りましたが、その後は日も差し・・・
荒天前の チャンスはあるか・・・

1月に入って周辺の積雪量が一気に増え、登降には輪かんが必要です。

いつもチャンスたちを連れて練習する斜面(谷川岳雪中捜索訓練)の横を通り、田尻尾根に向かって登ります。

田尻尾根の上部に到着。
うっすら広がっていた雲も切れて、陽が差してきました!

積雪断面観察開始。

視界も開けて風もほとんどなく、観察日和!

新潟方面からの雪雲も引いて、谷川岳のベールも取れ始めました。
2011 関東ブロック雪崩講習会(つづく)
2006年のあとの 2007年1月の写真がありません。
どうしてだろう? と思って調べてみれば・・・ 前年11月に入った丹沢の戸沢内でカメラを水没(チャンス4歳のときの沢遡行)。
そしてその後修理に出したのですが、雪崩講習会に間に合わず・・・。
そのかわり、前々頁の雪崩講習会とチャンスⅠに書いたとおり、たくさんの方が記録していてくれました。
2008年1月の雪崩講習会はそれまでの谷川岳会場から入笠山に変更して実施されました。
ことのとき、ようやくブログを始めていたばかりだったのでできるだけたくさんの写真を撮るように心がけました。
その模様は雪崩講習会(入笠山)にありますが、そこに載せた写真と少し違うものを・・・


2009年1月の雪崩事故を防ぐための講習会ではだいぶん余裕も出てきて、チャンスを連れて歩きました。

埋没役に「チャンス~!」「ありがとね~!」
そして 2010年1月(昨年)はチャンスにとって最後の講習会となってしまいましたが、楽しい雪山でした。

いつも・・・
たくさんの人に・・・
たくさん、たくさん 可愛がってもらいました。
雪崩講習会とチャンス END
チャンス初めての雪崩捜索デモ
2006年の谷川岳講習会時、まだブログを始めていませんでした。
自分とチャンスが動くので写真は撮れません。 不慣れなこともあって、事前に頼んでもおかなかった・・・
ので、そのときの写真はほとんどありません。

この年の1月は、前年12月からの豪雪でかなりの積雪がありました。

撮った写真は こんなものでした。 まだ3歳3ヶ月、若きチャンスです。
このときの一場面が前頁のAYA'S JOURNALです。
写真はあまりありませんでしたが、前年の北岳大樺沢での活動もあって山岳連盟の機関紙の取材を受け、チャンスが紙面デビューすることになりました。

雪崩講習会とチャンス(つづく)
この10年あまり、1月から2月にかけて行われる雪崩講習会に毎年参加しています。
来週の週末(15~16日)は久々の谷川岳会場の講習会に行く予定です。
2005年までは私一人での参加でしたが・・・

2005年1月からは講師の一員として参加することになり、その中の関東ブロック講習会では2006年1月から毎年、雪崩捜索犬のデモを
行うためにチャンスを連れて行くようになりました。
チャンスを連れて行った講習会場は、2006~2007年の谷川岳(土合周辺)、2008~2010年の入笠山(2008年・2009年・2010年)でした。
そのとき参加された受講生のブログ等のいくつかに、講習会の模様とチャンスが載っていますので、以下に紹介します。
■2006年1月14~15日 AYA'S JOURNAL
■2007年1月13~14日 山なでしこ 好きだぜ~○○~っ ヤマレコ(山行記録) お天道様はみているよ
■2009年1月31~2月1日 やま++ブログ 入笠山(ヤマレコ)
雪崩講習会とチャンス(つづく)