遭難者発見の報
チャンスを使った捜索の翌日夕刻、捜索責任者のOさんから電話が入りました。
「今日の午後、見つかりました!」
「それはよかった! 本当にお疲れ様でした!」 「発見場所は?」
「岩からすぐ近く川の反対側、深さは1~1.5mくらいのところでした」
「あまりお役に立てませんでしたが、見つかって本当によかったです」
「いやいや、こちらこそ大変お世話になりありがとうございました」
発見の報の後、昨年末から続いていた「悲劇」の終焉を実感するとともに、昨日まで捜索に関わった者として、「なぜ?反応しなかったのか・・・」「なぜ?あの仕草から絞り込めなかったのか・・・」
そして… 「なぜ?余計な(誤った)推論を考えたのか…」等々が頭を過ぎりました。
自分に腹が立つ
「なぜあの時」「なぜこう考えなかったのか」「なぜこうしてみなかったのか」といったことが心の中にこびりつき、気持ちが晴れません。
そして、チャンスの行動分析、現場状況分析に未熟な自分自身に腹が立ちました。
「川べりのエリアをもう1日探れば…」
「すでに掘りだしたトレンチを横切るような格子状のトレンチを新たに掘っていれば… 」
捜索の手法や反省から、「こうすればよかった」「ああすればよかった」という思いが再び生じてきました。
しかし… それは結果(発見位置)が出たからこそ言えることでもありました。
「明確な反応をイメージし過ぎていた自分」「客観的な視野・分析力を閉じていたかも知れない自分」
現場で繰り返される読みと判断の難しさ…。
反省ばかりが心に残る捜索でした。
とはいえ、結果を知った上での検証はとても貴重で重要なことです。
「見方」や「考え」に誤りがあるかも知れませんが、「多分」という思いも含めて… 自分なりに検証しておきたいと思います。
発見場所
捜索関係者から発見場所を記した資料が届きました。
実際の発見場所を知ると、「何故?」という不思議さと疑問、そして「やはり」という妙な理解が交錯します。

2月17日に大雨による積雪崩落で発見されたKさんから近い大岩の裏側からTさんは発見されました。
そこは、4月30日のトレンチづくりをしていた中の一つでもありました。
何度も繰り返されてきた捜索が「こんなに近く」という考え方を遠ざけてしまっていたかも知れません。

発見された場所周辺エリアは、プローブによる捜索が繰り返され、そして4月5日と30日にチャンスにも探らせました。
雪面やトレンチ付近から「もしや!」という嗅覚反応は見い出せませんでしたが、「読みとれない仕草」「何かを感じる仕草」、5月1日の谷に向かって「何かを気にする行動」があったことが、「臭い反応」の一つであったことは確かです。

実際の埋没遭難者の位置と、チャンスが行動しながら「?」を感じさせる場面を合わせると上の写真のようになります。
雪面から「臭いがとれない」状況下、岩と雪の間、沢床と雪底の間から「臭い」が流れ出しているはずです。しかし、その臭いは「微量」で、「感じるがはっきりしない・・・」というものだったのかも知れません。
特定できない「?」行動、「何かを感じている」仕草や行動、そんな「?」に通じる記録を次回もう一度整理してみたいと思います。