15~16日、長野県山岳レスキュー研究会の要請を受けて雪崩レスキュー訓練に行ってきました。
2月に行なわれた中央登山学校雪崩講習会と同じ中央アルプス宝剣岳千畳敷で行なわれましたが、今回はチャンスを連れて「捜索救助シュミレーション」訓練の一員としての参加です。
駒ヶ根高原からバスでゴンドラ駅のしらび平へ。チャンスのバス乗車は初めての体験です。
千畳敷は雪崩講習会で何度も訪れていますが、チャンスは初めてです。15日はド快晴でほとんど風もなく、空気も澄んで南アルプスの山並が綺麗に眺められました。
南アルプスの山並の向うに富士山の頭が見えます。右の山は塩見岳、左の山は農鳥岳。
新聞記者が雪中埋没体験
午後、取材に訪れた女性記者がカメラを抱えて雪中埋没体験をしました。
深さは1m以上です。雪洞様の空間に上半身だけ入り、下半身は直接雪に埋められます。安全を期してレスキュー関係者も無線機を持って入ります。
雪がかけられ、埋没者は身動きできなくなり、暗く狭い空間に閉じ込められていきます。
完全に埋められた状態になってから、ビーコンもプローブ(ゾンデ棒)もないような状況で埋没者を探す手法「スカッフ&コール」の訓練と体験が行なわれました。
捜索者が雪面を掻いて、雪中に向って一斉に「お~い」と大声で叫びます。その直後、雪面に耳を当て埋没者が反応して(声を出して)くれているかを確認します。埋没者からは無線機で様子を伝えてもらいます。どの位置で、どのくらいの距離(深さ)で聞こえたか、また埋没者の声が捜索者に聞こえたかなどを体験しました。
雪崩捜索犬による捜索と救出
次ぎは、チャンスによる埋没者捜索が行なわれました。
たくさんの人の臭いが付着した雪面の中、さらに厚さ1m以上の雪の奥から上がってくる埋没者のわずかな臭いを捉えられるか… チャンスにとっても、これほど「多臭」の中の「微臭」という条件での雪中捜索は初めてです。
捜索エリアは限られていますが、探し出すべき埋没者の臭いをすぐには捉えられず、幅広く探しまわりました。埋没付近で臭いを感じ、反応するも、今までの雪中訓練ほど簡単に特定するわけにはいきません。
ほぼ特定し、スクラッチ動作を繰り返します。しかし「微臭」のためか咆哮するまでには至りません。この動作は、以前北岳大樺沢雪渓での捜索で見られたものに似ています。臭いを感じとっていることは確かで、薄い臭いに対する反応の一つと見られます。
反応している雪面の雪をスコップで少し掘り起し、再度チェックさせるとさらに力強く掘り出す動作をし、咆哮するようになりました。感じる臭いが強くなり、「人(埋没者)がいる」と確信がもてるようになったようです。
15日に行なわれた雪崩レスキュー訓練と埋没体験の記事が翌日の朝刊に載りました。
埋没体験記事抜粋 :
訓練中に記者も、雪崩の中から助けてもらう体験をした。斜面を約2m掘ってから作った高さ約70cmの横穴に上半身を差し込んで寝転び、足に雪をかけてもらった。約2mの雪の重さがかかる足はまったく動かせない。
救助者のザッザッという足音は、体の真上に感じる。しかし真上から呼ぶ「おーい」の声は小さく、足先よりさらに遠くから聞こえる。一緒に埋まってくれた講師の大村道雄さんは、雪が音を吸収するからだと教えてくれた。
15分後、チャンスの鳴き声とスコップで掘る音。光が差し込み、チャンスの顔と青空が見えた。横穴で上半身の余裕はあり、訓練と分かっているので怖さは和らいだが、本当に埋まった時の息苦しさ、暗さ、重さを思うとぞっとする。